グローカル外交ネット
今いる場所から世界を感じる オンラインで広がるホストタウン交流の輪
(三重県伊勢市とラオス)
三重県伊勢市
1 はじめに
伊勢市は、「神宮ご鎮座のまち」として栄え、人々との交流を支えに時代とともに歩んできたまちです。
本市では、ユニバーサルデザインのまちづくりや心のバリアフリーに向けた取組を進めており、こうした取組を加速化させるため、パラリンピアンとの交流をきっかけに共生社会実現に向けた取組を推進する 「共生社会ホストタウン」となることを目指しました。
そこで、ラオスで障がい者支援を行う日本のNPO(アジアの障害者活動を支援する会【ADDP】)が深く関わり、障がい者と健常者が一緒に参加する「インクルーシブ陸上」が行われていることを知り、ラオスパラ陸上チームの事前合宿などを打診し、実施に関する協定を締結しました。
この結果、2019年6月に「ホストタウン」、同年8月に「共生社会ホストタウン」に登録、2021年2月には「先導的共生社会ホストタウン」に認定されました。
新型コロナウイルス感染症により、従来のような対面による交流が進まない状況ですが、オンラインを活用し、ラオスパラ陸上チームやラオスの方々と交流しました。
交流内容の一部をご紹介します。
2 ラオスパラ陸上チームとの交流


2019年7月、伊勢市は、ラオスパラ陸上チームの事前キャンプを受け入れました。その後、ホストタウン事業の一環で、市内3箇所の小学校で特別授業「ラオスを知ろう」を開催し、ラオスの成り立ち・歴史・文化等を学びました。学んだことや各自が調べた国の印象をもとに、児童たちがユニフォームのカラーデザインを行いました。
2020年2月、ラオスにて、ラオスパラリンピック委員、パラ陸上選手が参加して選考会議が行われ、デザイン案の中からラオスパラ陸上チーム公式ユニフォームが決定しました。
2020年12月には、ADDPやラオスパラ陸上チームの選手達が、デザインに関わった児童たちにオンラインによる特別授業を行いました。ラオスでは障がいの有無に関らず誰もが陸上を楽しめる環境づくりが行われていることや、ラオスの地形、ラオス語の挨拶をクイズ形式で学びました。また、選手が公式ユニフォームを着用して走る様子も披露され、その姿に児童たちは感銘を受けていました。パラリンピック本番でも、ユニフォームを纏った選手の活躍を楽しみにしています。
3 ホストタウンウェビナー会議

2021年6月、外務省が推進する国際交流事業である対日理解促進交流プログラム(JENESYS)の一環として、ラオスの専門学校生・大学生・大学院生を対象に日本国際協力センターが「ホストタウンウェビナー」を実施しました。伊勢市は、ラオスのホストタウンとなったことをきっかけに、職員が同ウェビナーにて講師を務めました。
伊勢市の紹介や伊勢市とラオスのホストタウン交流について紹介するとともに、市農林水産担当職員から「伊勢市の農業・漁業」をテーマに農水産物の紹介、農水産業の振興に向けた取組や課題などをお話しました。
伊勢市の紹介では、神宮ご鎮座のまちで観光都市であることや、ラオスでも麺料理やもち米が食されることから、食文化で親近感をもっていただこうと、伊勢ならではの麺料理である「伊勢うどん」やお餅文化が根付いていることを紹介しました。
また、農業・漁業については、市の天然記念物に指定されている「蓮台寺柿」や最先端の設備と高度な栽培管理により高品質なバラが生産されていること、黒のりや青のりの養殖が盛んであることなどを紹介しました。また、電車を販売スペースにして大阪の駅ホームで販売する「うまいもん列車」、三重県のアンテナショップを活用してPR・販売する「伊勢市フェア」など、特徴的な農水産物の地域PR活動についてもお話しました。
今まで、日本国内各所において市内の農業・水産業や農水産物をPRしてきましたが、海外の方に紹介する機会をいただき、貴重な体験となりました。また、多くのラオスの学生たちに強い関心を持っていただき、質問も多数もらうことができました。
終了後のアンケートでも、参加者から「伊勢市のことをもっと知りたくなった」「機会があれば伊勢市に行ってみたい」など、大変うれしい感想をいただきました。
4 これから
ホストタウンとなったことにより、お互いの国を学ぶ機会が生まれました。新型コロナウイルス感染症の影響により、人の往来に制約がある状況ですが、オンラインを活用した交流は、今いる場所からすぐに相手とつながり、世界を間近に感じることができます。
これからもホストタウンの取組をきっかけに、様々な分野で交流を育むことができればと思います。