グローカル外交ネット

令和3年5月24日

鹿児島県大崎町
企画調整課

1 はじめに

 大崎町は、鹿児島県の東南部、大隅半島の東側に位置する人口約1万3千人の町です。基幹産業は農業で生産額は全国的にも上位にあり、黒牛、黒豚、ブロイラーに代表される畜産物、大根やごぼうなどの露地野菜、マンゴーをはじめとする熱帯果樹の生産が盛んです。さらに、豊富な水を生かした養殖うなぎも全国有数の生産量を誇ります。
 また、近年は鹿児島県が大崎町に整備したトップアスリートのトレーニングにも対応可能な陸上競技トレーニング施設「ジャパンアスリートトレーニングセンター大隅」を活用したスポーツ合宿も盛んで、国内の有力選手の合宿はもとより、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会においては、トリニダード・トバゴ共和国と台湾の事前合宿地となっています。

2 大崎町におけるSDGsの取組 大崎システム確立の経緯

 大崎町がリサイクル活動を始めたのは2000年です。大崎町は焼却処分場を持たず、隣接する現在の志布志市と共同で運営する埋立処分場に全てのごみを埋め立てていました。
 当時の埋立処分場は1990年に整備され、2004年までの15年間使用するという計画でしたが、家庭ごみの増加により、1998年の時点で計画期間終了を待たずに埋立処分場が満杯になる見込みとなったことから、2000年より埋立処分場の延命化を目的とした徹底したごみ分別によるごみの減量化の取組をスタートしました。
 大崎町の取組は、住民の家庭における徹底した分別とごみ集積所の運営管理、ごみ収集を担う企業による回収と資源としての出荷に向けた検査、そして行政によるリサイクルシステムの構築と継続した住民に対する環境学習といった、住民・企業・行政がそれぞれの役割を果たす、焼却に頼らない低コストで持続可能なシステムを維持していこうというものです。
 この取組の結果、リサイクル率は80%を超え、2006年度から2017年度までの12年連続で資源リサイクル率日本一(環境省:一般廃棄物処理実態調査)を達成し、さらにSDGs達成に向けた貢献の観点から改めて評価され、2018ジャパンSDGsアワードにおいて内閣官房長官賞を受賞しました。

3 インドネシアとの取組事例

(写真1)説明を聞く現地住民たち インドネシア国デポック市における現地住民向けの説明会
(写真2)大崎町での海外研修生への分別指導の様子 インドネシア国バリ州から大崎町へ派遣された海外研修生への分別収集指導

(1)国際協力の経緯

 「ごみが山積している町をきれいにしたい。大崎システムを学びたい。」
 廃棄物問題に悩む遠く離れたインドネシアからラブコールを受け、インドネシア大学と連携する鹿児島大学がリサイクル率日本一の大崎町の活動モデルをデポック市に展開したことが国際協力のきっかけとなりました。以降、以下のような事業を展開しました。

  • 2012年~2014年:
    JICA草の根技術協力事業にてインドネシア国デポック市において一般廃棄物処理技術開発普及事業を実施
  • 2015年~2016年:
    JICA草の根技術協力事業にてインドネシア国バリ州において資源循環型まちづくり技術支援事業を実施

(2)連携の実績

 デポック市においては、生ゴミ堆肥化技術指導とインドネシア国特有の「ごみ銀行」というシステムを推進し、リサイクルが推進されています。
 この結果、以前は「最も汚い都市」と言われていた同市がインドネシア政府から衛生分野において最も革新的な自治体として表彰される「ごみ処理先進地」となり、国内外からの視察研修を受け入れるまでとなっています。
 またバリ州においては、デポック市と同様に堆肥化技術の指導を行うとともに、現地の農家組織「シンマントリ」に対し、有機農業の指導を行い、農業技術の向上にも寄与しています。

4 今後の展開

(写真3)集合写真(パネルを囲んで) 「大崎町SDGs推進協議会」設立記者会見の様子

 前述のとおり、2018年にジャパンSDGsアワード官房長官賞を受賞した大崎町ですが、翌年には内閣府よりSDGs未来都市に選定されました。
 このことを機会に、大崎町は、未来都市実現に向けて、新たにSDGsの達成に貢献するための視点を取り入れ、地方創生関連施策に取り組む「大崎町総合戦略」と「大崎町総合計画」を策定しました。
 また、さらなる「大崎システム」の展開に向け、国際協力を継続するとともに、海外における技術者育成に向け、国内の自治体で唯一の公立日本語学校を有する北海道東川町と連携し、日本語の習得に併せて大崎町のリサイクル技術を習得する「リサイクル留学生プログラム」をスタートしました。
 しかしながら、本町だけでSDGsの取組を進めていくことには限界があり、SDGsの取組をより具現化するためには、鹿児島県内においてSDGsを推進しようとする様々なステークホルダーと連携する必要があります。そこで、2021年3月、地域に根ざした報道機関である株式会社南日本放送、全国で初めてSDGs宣言を行なった信用金庫である鹿児島相互信用金庫、2019年にジャパンSDGsアワード特別賞を受賞した株式会社そらのまち、そして官民連携を推進する合作株式会社といった企業とともに、一般社団法人大崎町SDGs推進協議会を設立しました。一般社団法人大崎町SDGs推進協議会は、「リサイクルの町から世界の未来をつくる町へ」を掲げ、大崎町が目指すSDGs未来都市の実現、そして鹿児島県におけるSDGsの推進に、それぞれの強みを生かしながら取り組んでいます。

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