グローカル外交ネット

令和2年11月10日

広島県立五日市高等学校

 広島県立五日市高等学校は、校務運営組織として国際交流推進プロジェクトを置き、生徒会にも国際交流委員を配置し、全校的に継続的に国際交流を推進しています。
 平成26年度にマレーシア・SBPIゴンバック校と海外姉妹校提携をして以来、主には本校生徒が毎年夏期マレーシア研修として現地訪問する形で国際交流を進めてきました。第2回ILC2016(International Linkage Community)に参加した際、インドネシア・チカル高校と知り合ってからは、チカル校訪問団の本校への受入も行っており、令和元年8月、チカル校と正式に海外姉妹校提携締結をしました。本年度は12月に初訪問の予定でした。
 ところが、今年に入り新型コロナウイルス感染症が世界的に猛威をふるい、これまでのように相互に姉妹校訪問を通しての国際交流を行うことが困難となりました。広島県教育委員会が、オンライン学習を進めることができる体制を整えるため、県立学校の生徒全員にグーグルアカウントを付与していたことも大きく、「G-suiteを活用したオンライン交流を実施できないか」という両校のアイデアから、Meetを通した国際交流プログラム(CEP)を実施することにしました。関心を持った24名の生徒が両校から集まり、海を越えたオンライン交流がスタートしました。

 今回のオンライン交流の一番の特色は、文化紹介等によりコミュニケーションを図ることだけが目的ではなく、“How this pandemic changes our lives”(コロナによってどのように生活が変化したか)という共通テーマを軸にした「合同探究プロジェクト」を実施したことです。24名を4グループに分け、それぞれにチカル校生と五日市高校生が入るようにし、グループごとに分野を決めて探究していく形をとることにしました。分野は「経済」「医療」「教育」「観光」の4つとし、Meetを活用して、毎週金曜日(インドネシア時間の13時、日本時間の15時から)1時間程度定期的に会議を行いました。
 会議の流れとしては、前半は、グループ毎に指定されたMeetルームに集合し、「Googleスライド」を用いたミニプレゼンを主軸に意見交換を行います。後半は、全体のMeetルームへ移動し、各グループの話し合った内容を全体共有し、次回までに何を調べてくるのか報告をします。生徒たちは、次のオンライン会議までの間、自宅でそれぞれ「LINE」を使って、アイデアのやりとりを主体的に英語で行っていました。

 4分野における主な探究テーマは以下の通りです。

経済班:
「自粛生活による消費活動の委縮」
医療班:
「衛生面に関する両国のコロナ対策の違い」
教育班:
「『新しい生活様式』の下で求められる教育のあり方」
観光班:
「グローカルツーリズム~郷土料理をオンラインで味わう」

 特に、観光班の探究活動は深みのあるものとなりました。宮島へのフィールドワークや、ハラル料理専門店への聞き取り等、生徒たちは主体的に協働的に、ツーリズムについて考え、「相互の食文化体験をオンラインで実践してみよう」と、それぞれ現地調達できる食材を用いて、それぞれの伝統食を同時調理し味わうという試みをしました。インドネシアでつくる広島の「お好み焼き」と、日本でつくるインドネシアの伝統菓子「マルタバマニス」。「いつかは本物の味を確かめに現地へ旅行に来て欲しい」という思いを双方が持ちながら、お互いの伝統食を同時に調理し、生徒たちは交流を深めました。
 このオンライン国際交流を通じて、生徒は様々な力を身に付けました。
 まず、従来の国際交流でも言えることですが、異文化に触れて、自国との共通点や相違点を新たに発見することで、自らの視野を広げた点です。
 次に、今までとは少し違う意味での「英語コミュニケーション能力」を身に付けた点です。相互訪問による交流では、主に日常で使う生活英語や文化の紹介英語などを短期間集中型で学習するケースが多いのですが、この度のオンライン交流では、「課題を発見したり、解決に向けて話し合う場面」で使用する英語を習得しています。基礎的な質問力、説得力、交渉力も鍛えられました。
 また、これは副次的なものですが、オンラインにつきものの接続の不具合や音声・映像トラブルがあっても、それに動じない柔軟な対応力や冷静さを身に付けることが出来たようです。

 このようなオンラインを通じた新たなタイプの学習や交流は、今後も全国でも広まっていくと思われます。本校における今回の実践は、3年生による短期間の探究活動でした。今後は、長期的なスパンで、1学年次からのプログラムを計画・立案していく必要があります。その際、総合的な探究の時間のカリキュラムとの連動も考えなければなりません。さらには、五日市高等学校とチカル校、マレーシアのゴンバック校も合わせた3か国でのオンライン交流も視野に入れています。そして、これまで行ってきた相互訪問による交流と合わせたハイブリッド型国際交流を推進していく体制を整える必要性を感じています。

 予測不可能なこれからの社会の中で、協働して問題解決に向けて取り組む力は一層必要になると考えられます。五日市高等学校では、そういった力を生徒に身に付けさせるため、教育活動全体におけるハイブリッド型国際交流の位置付けを明確にしながら推進し、「自律・挑戦・貢献・感謝」できる生徒の育成を目指してまいります。

(写真1)Meetでのオンライン会議中の画面 Meetでのオンライン会議中の画面
(写真2)広島県教育委員会教育長室で実際に接続 広島県教育委員会教育長室で実際に接続
(写真3)双方の伝統食をオンラインで味わう試み 双方の伝統食をオンラインで味わう試み
グローカル外交ネットへ戻る