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友好のカヌー パラオからの贈り物
三重県雇用経済部国際戦略課

三重県とパラオ共和国は、平成8年に友好提携を結びました。
当時の大統領であったクニオ・ナカムラ氏の実父が、伊勢市大湊出身の船大工だったことが一つのきっかけであり、当初から三重県とパラオには深いゆかりがありました。友好提携を締結したその年、三重県は友好の印として、大統領からパラオの伝統的な工法で作られたカヌーを頂きました。
カヌーは、今も志摩市にある県立水産高校で展示を行っています。
実はこのカヌー、頂いてから二十数年が経過し、展示を行っていた水産高校では、屋根はあるものの屋外であるため劣化が避けられず、少し色あせた状態となっていました。
こうした中で、平成27年に偶然このカヌーをご覧いただいたNPO法人日本航海協会の奥理事長から、カヌーの修繕のお申し出を頂きました。カヌーの姿に、何か突き動かされるようなものを感じたとのことです。ナカムラ大統領から三重県に贈られた由緒あるカヌー。大統領の実父の故郷である伊勢には、G7伊勢志摩サミットで日本人の心のふるさととして大きく世界に発信された伊勢神宮があります。
もともと我が国でも、船は重要な往来の手段であり、古くは神武天皇が瀬戸内海を航海したとされるルートが、古事記や日本書紀において残されていました。
そこで同協会は、その航海の出発点とされる宮崎県で修繕したカヌーを、この古代のルートに沿って航海し、各地の海を歴史と人で繋ぎながら、三重県へ届けることを計画しました。
カヌーの側面には、三日月のような模様がデザインされていたこともあり、この壮大な計画は、日本の神話に登場する神の名前をとり、「ツクヨミプロジェクト」と名付けられました。
実際の航海の様子は、日本航海協会のホームページに詳しく掲載されています。
こうして、美しい姿を取り戻した友好のカヌーは、2年がかりの航海を経て、2019年の夏、ついに三重県に帰ってきたのです。

三重県とパラオのお付き合いは思いのほか古く、世界で初めて真珠養殖を実現した御木本幸吉翁の御木本真珠は、戦前にはパラオでも養殖場を営んでおり、三重県から多くの人々がパラオに渡り活躍されました。また、漁業による交流も盛んに行われていたそうです。
現在も、三重県の鳥羽水族館とパラオ国際サンゴ礁センターでは、オウム貝の共同研究や、スタッフ派遣などの人材交流を行っています。四日市市にある(公財)国際環境技術移転センター(ICETT)では、JICA草の根事業を活用して、パラオでのごみ処理の仕組みの改善に取り組んでいます。
また、カヌーを展示している県立水産高校では、実習船「しろちどり」が航海実習で毎年パラオへ寄港し、現地高校生との交流を行うなど、長きにわたる交流を続けています。
今年、パラオは独立25周年を迎え、2019年12月~2020年1月にかけて、日本からパラオまで向かう記念ヨットレースが行われることとなりました。
表彰式にはレメンゲサウ大統領もご参加いただけるとのこと。
パラオから頂いたカヌーが往年の姿を取り戻し、今も健在であることを是非お伝えしたいと思い、私たちはレースに参加する三重県のヨット愛好家を通じて関係者の方々の協力を頂き、見事に復元されたカヌーが海の上を走る雄姿を写真に収め、お祝いのメッセージとして大統領にお届することとしました。
元大統領から頂いた友好のカヌー。
これからも、三重県とパラオを結ぶ末永い友好の絆となることを心から願っています。