グローカル外交ネット

令和元年7月29日

外交実務研修員 栗野 隼
(福岡県から派遣)

1 はじめに

 私は,福岡県から外務省へ派遣され,平成30年4月から外交実務研修員として勤務させていただいています。外務省へ出向する前は医療関係の部署に配属されており,主に補助金の交付,基金の管理等の業務に携わっていました。

2 文化交流・海外広報課での業務

 外務省では外務報道官・広報文化組織の文化交流・海外広報課という課に配属されました。
 「広報文化外交」が重要性を増していく中,外務省では,国内外の様々な主体と協力しながら,外国における日本に対する理解や信頼感を高めるための取組を総合的に推進しています。その中心となるのが外務報道官・広報文化組織で,これらを広範かつ一体的に進めていくための基本的な方針を企画・立案するとともに,国内外への広報,文化・人物交流等に関する業務に取り組んでいます。
 私が配属された文化交流・海外広報課は,この中でも主に文化交流に関する業務を担っており,世界各地に設置されている在外公館や,世界の各地で国際文化交流を実施する機関である独立行政法人国際交流基金とも連携して,文化芸術交流や海外における日本語教育,日本研究・知的交流の推進等に取り組んでいます。
 ひとえに文化交流と言ってもその範囲は非常に幅広いものですが,今回はこの中でも現在私が担当させていただいている「在外公館文化事業」及び「海外における日本語教育」についてご紹介させていただきます。

3 在外公館文化事業

(写真1)出張時に見学したテンペリアウキオ教会(フィンランド・ヘルシンキ) この会場でも様々な日本文化紹介事業が実施されています 出張時に見学したテンペリアウキオ教会(フィンランド・ヘルシンキ)
この会場でも様々な日本文化紹介事業が実施されています

 世界各地には200を超える我が国の在外公館(大使館,総領事館,代表部)が設置されており,これらの公館では,対日理解の促進や親日派の形成を目的とした外交活動の一環として,様々な日本文化紹介事業を実施しています。
 その事業内容は,現地のニーズを踏まえた各公館の創意工夫のもと,伝統芸能からポップカルチャーまで多岐に亘っており,また,時には日本の地方自治体等とも連携して,様々な側面から多様な日本文化をアピールするものとなっています。さらに,外交上重要となる節目の機会(外交関係樹立○○周年等)には,日本から著名な文化人等を招へいし,能公演やコンサート等,通常よりも大規模な文化事業を実施しています。
 世界各地の方々にこうした魅力的な日本の文化に触れていただくことで,日本への理解を深めていただき,さらには日本に対する親近感を高めていただけるよう,当課では各公館にて実施される事業の計画を確認し,時にはアドバイスするなどして,より効果の高い事業の実施を目指し,常日頃から各公館と連絡を取り合い,意見交換をしています。

4 海外における日本語教育

 現在,海外では137の国・地域において約366万人が日本語を学習しています(平成27年国際交流基金調べ)。
 外務省では,国際交流基金と連携して,日本語専門家の海外派遣や,海外の日本語教師及び学習者の訪日研修,日本語教材の開発等を行っているほか,在外公館において日本語弁論大会を開催する等,海外における日本語の普及に努めています。
 昨年12月に改正入管法が成立し,今年4月から新たな在留資格「特定技能」が創設されたことに伴い,将来日本で働くために日本語を学ぼうとする方々へ向けた日本語教育への需要が高まりつつあり,また,本年6月には日本語教育の推進に関する国の責務等を明記した「日本語教育の推進に関する法律」が公布・施行されたことで,国内外において日本語教育への注目が非常に高まっている状況にあります。実際に,本年7月に開催された2019年第1回日本語能力試験の応募者数は前年度同回から約10万人増加し,過去最多の約64万人に達しました。
 さらに近年では,将来の就職や留学といった目的のみならず,アニメやマンガ等の日本文化への関心から日本語を学ぶ方もいらっしゃいます。海外における日本語教育は,日本との交流の担い手を育て,海外における対日理解と認識を深めることを通じて,諸外国との友好関係の基盤を作る上で非常に重要であり,今後ますます力を入れて取り組んでいく必要がある分野の一つと言えると思います。

5 おわりに

 外務省へ派遣されて以来,本当に様々な経験をさせていただきましたが,非常に早い外務省の業務スピードについていくのがやっとで,あっという間に1年と3ヶ月が経過してしまいました。
 これまで全く触れたことのない世界で働かせていただけるという大変貴重な機会を与えていただいた福岡県及び外務省に感謝申し上げるとともに,そして何よりも右も左も分からない自分に優しく接していただいた外務省の皆様には本当に頭が上がりません。
 外務本省での勤務も残り約9ヶ月となり,その後は在外公館にて2年間勤務させていただくこととなりますが,日々勉強との思いのもと,残りの期間の1日1日を大切に過ごしていきたいと思います。

グローカル外交ネットへ戻る