グローカル外交ネット

令和4年9月20日

外務省地方連携推進室

 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京大会)が開催されてからおよそ1年が経ちました。
 これまでも数々のホストタウン事業を展開してきた都内の八芳園において、一般社団法人ホストタウンアピール実行委員会の主催により、東京大会のホストタウン交流のレガシーを2025年大阪・関西万博をはじめとする未来に活かすために何ができるのか、このヒントを生み出すことを目的に「HOST TOWN FESTIVAL GO TO 2025 次世代につなぐ自治体の未来」が開催されました。これまで関係省庁の一つとして、東京大会のホストタウン交流をフォローしてきた外務省職員が本事業に参加し、特に印象に残った内容をご紹介します。

1 東京大会のホストタウン交流とは

 まず、東京大会のホストタウン交流をフォローする上で欠かせなかった視点は、大会期間中に限った取組ではなく、大会前・期間中の交流を通じて培ったホストタウン相手国・地域との関係を大会後も維持・発展させていくこと、ホストタウンは競技団体の事前合宿を受け入れるだけではなく、日本の各地方自治体と相手国・地域との関係に応じ、スポーツ以外も経済、文化、学術等、幅広い分野での交流という点です。
 この点については、本事業冒頭のビデオメッセージにおいて、かつて内閣官房オリパラ事務局で企画・推進統括官としてホストタウン事業を牽引した勝野徳島県副知事からも述べられました。副知事には、東京大会、そして今後の大阪・関西万博における地方自治体の交流活動の共通点として、(1)2020年(2021年)/2025年という期間に限らない、(2)スポーツ/博覧会という分野に限らない、(3)東京/大阪という場所に限らない、全国の地方自治体が関与する形で、事業が終わった後も脈々と続いていく幅広い分野の取組であるべきとの示唆をいただきました。

2 ホストタウン交流のレガシー

 それでは、実際にホストタウン交流に携わった地方自治体からは、いわゆる大会のレガシーとして、東京大会後も継続している取組についてどのような報告がされたのでしょうか。
 まずは徳島県について、勝野副知事から、万博会場でのホストタウン相手国パビリオン・ナショナルデーイベントとのコラボ企画など、東京大会から大阪万博につながる取組が紹介されました。同県のホストタウン特使に任命されている徳島商業高校で指導にあたった四国大学准教授からは、同校がジョージアのパラリンピック出場選手との交流を実現し、同選手にも焦点を当てたポスター制作、都内会場にてオンライン文化祭を開催し相手国との共同開発商品を遠隔販売するなど商業高校ならではの連携の取組が紹介され、その後自治体からの参加者に対しては、今後の取組において子供たちの無限の可能性を引き出すことの重要性について示唆がありました。
 佐賀県からは、ホストタウン相手国の一つフィンランドとの交流を通じて豊かな自然環境や「人」を大事にする政策などの親和性をベースに、同国の社会思想や政策を参考にした政策連携に取り組んでおり、先進的な取組である子育て施策「ネウボラ」、交通施策「MaaS」等から着想を得て、佐賀県版として妊娠・出産・子育て相談支援、歩くライフスタイルを推進する「さがモビリティラボ」等の施策を推進していること、千葉県いすみ市からは、フランスとの交流を通じ、同国サーフィン選手とのSNS交流、国内外のフランス国籍者を対象としたサーフィンツーリズム、ガストロノミーウォーキングイベントへの駐日フランス大使の招待等の計画について発表がありました。
 また、山形県村山市は、ブルガリアの新体操チームとの交流を通じた一番の財産として「人の輪」を挙げ、同チームが金メダルを獲得した際、ファンクラブを結成した市民に対し、「村山のおばあちゃん、おじいちゃん、金メダルとったよ」との報告を受けて市民が涙を流したストーリーや、ファンクラブ解散後も、日本ブルガリア協会山形県村山支部として活動が継承されているとのことや、ホストタウン登録後に設立されたむらやま新体操教室の会員が現在も拡大しているなど、それぞれの交流から残された大会後のレガシーの中身が伝わってきました。

  • (写真1)当日の会場の様子 左:ステージの様子 右:阿波踊りを披露している様子

当日の会場の様子(ステージ・阿波踊り公演)

3 ホストタウン相手国とのつながり

 いよいよ後半のセッションでは、「これからのホストタウン活動」というタイトルで、より未来に目を向けた形で活動の紹介が行われました。複数のホストタウン関係者が相手国の駐日大使館員等と椅子を並べる形でステージに登壇し、自治体関係者の報告に対して、大使館関係者が感謝や今後の期待についてコメントを述べるなど、東京大会を通じて築いた「つながり」が目に見える瞬間でした。
 福島県郡山市の発表に対しては、駐日オランダ大使館広報文化担当官から万博を通じてこれまでのオランダと郡山市との歴史的関係を更に深めていきたいこと、山形県長井市の発表に対しては、駐日エチオピア大使館参事官からスポーツ、文化等の分野に限らず将来は姉妹都市提携を見据えて協力を深め、同国関係者が万博で訪日する際は長井市訪問も希望していること、栃木県那須塩原市からの発表に対しては、駐日オーストリア大使館公使から外交では人の交流を積極的に推進することが重要であること、那須塩原市民と姉妹都市を提携する同国リンツ市民が、万博が開催される大阪での再会を望んでいることなど心温まるコメントをいただきました。また、秋田県能代市のホストタウン相手国であるヨルダンからは駐日ヨルダン大使が登壇し、訪れた能代市で市民と育んだ友情を振り返りつつ、東京大会ホストタウン交流を万博など未来の協力につなげていく取組を歓迎する旨を述べられました。
 さらに、静岡県牧ノ原市の発表では、米国サーフィン選手団の事前合宿受け入れを中心とするホストタウン交流事業で連携してきた同県下田市の中高生との間でサーフィンを通じた交流が続いているなど大会を通じて自治体間の横連携が深まったこと、選手団の事前合宿前に市民がビーチクリーン大作戦を展開し、このような海を大切にし、美しい海をPRする取組は、SDGsを重視する万博の精神にも合致することなどに触れ、一緒に登壇した米国選手団の事前合宿で日米のパイプ役を果たした元米オリパラ委日本代表駐在員からは、ロスでオリパラが開催される際には、日本のホストタウン交流を参考にし、ロス版ホストタウン交流を実施したいとの意気込みも聞かれました。

  • (写真2)各国のPRをしているテーブルの様子

ホストタウンPRブースの一部

4 結び

 これら以外にも、大阪・万博に向けて第一線で活躍する関係者から、ホストタウン相手国のパビリオンや開催期間中のナショナルデーにおける協力や会場内でのパフォーマンスの展開の可能性、万博開催の機会を活用した日本全国の物産等の魅力を世界に発信する重要性など、東京大会のホストタウンで培われた相手国・地域との交流を万博において発展させていくための有益な示唆がありました。今後、交流計画が具体化していくことに期待しています。
 プログラム後の交流会で参加者に提供されたホストタウンと相手国・地域との彩り豊かなコラボ食の数々は、お互いが手を取り合って大切なものを育んできたことを象徴しているようです。
 過去の心温まる交流に思いを馳せつつ、未来に向かって突き進んでいくホストタウン交流から、目が離せません。

  • (写真3)ショウケースの中に並ぶ相手国・地域のコラボ料理の写真

ホストタウン×相手国・地域のコラボ料理

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