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リオデジャネイロ市と神戸市の姉妹都市関係
在リオデジャネイロ総領事 橋場 健
1 はじめに
本年6月1日、神戸市とリオデジャネイロ(以下「リオ」)市の姉妹都市関係に関する条例の修正案(なぜ今「修正」なのかは後で説明します)の写しを、リオ市議会から私に伝達いただく式典が行われました。また同時に、私に対するリオ市名誉市民称号伝達式も行われ、多くの日系人、日本人そしてカリオカと呼ばれるリオ市民の皆様にご出席いただきました。着任して僅か1年ちょっとでリオ市の名誉市民と認めていただく幸運に恵まれたのは、これまで50年以上に亘り、リオ市と神戸市の姉妹都市関係を含む日伯交流に携わった多くの方々が努力を積み重ねてきたおかげであり、深く感謝申し上げます。また、リオ市側の今後の日本との交流への期待を込めたものでもあったと思います。
2 国外最大の日系人コミュニティーを誇るブラジル
現在、ブラジルには約200万人の日系人がおり、国外最大の日系人コミュニティーを有する国となっています。日本人移民の歴史は古く、初の移民船「笠戸丸」がサンパウロ州のサントス港に到着した1908年に遡り ます。
これまで約25万人の日本人が移住したと言われており、現在、多くの日系人がブラジルの様々な分野で活躍されています。日本人移民及び日系人の皆様が多大な苦労を乗り越えて、100年以上に亘り築き上げてきた両国間の歴史的な繋がりにより、現在、多くのブラジル人が日本人に対し、「勤勉、 誠実、実直」といったポジティブなイメージを持ってくれています。また、漫画やアニメ等のポップカルチャーを通じた、若い世代への日本文化の浸透も見られ、今回の日本文化紹介展示のように、我々も引き続き、日本文化の更なる魅力発信に努めてまいります。
3 世界的な観光地であるリオ市
1960年にブラジリアに遷都するまでブラジルの首都であったリオ市は、現在、ブラジル南東部に位置するリオ州の州都で、約670万人の人口、約1200平方キロメートルの面積を有する、サンパウロ市に次ぐ国内第二位の大都市となっています。コパカバーナビーチやイパネマビーチといった美しい海岸、「イパネマの娘」を始めとするボサノバの発祥地、また、世界で最も有名なお祭りの一つリオのカーニバルに代表されるように、ブラジル最大の観光都市であり、国内外から多くの観光客が年間を通して訪れています。コロナ渦で中断されていたカーニバルは本年4月に再開・実施されました。しかし、皆様の記憶に新しいのは、昨年の東京オリンピック・パラリンピック大会の前回開催地として、2016年に南米大陸では初となる夏季オリ・パラ大会がリオで開催されたことではないでしょうか?閉会式でスーパーマリオの姿で登場してあっと驚かせた故安倍元総理の姿は、カリオカを始めとする多くのブラジル国民、いや全世界の人々の心の中に今でも焼き付いています。
4 リオ市と神戸市の姉妹都市関係
リオ市と神戸市の姉妹都市関係の歴史は、1968年にファースト・カルドーナ在神戸ブラジル総領事代理が神戸市に対し、当時グアナバラ州とされていたリオ市との姉妹都市提携を勧めたことに遡ります。その後、フランシスコ・ネグロン・デ・リーマ・グアナバラ州知事が正式に原口忠次郎神戸市長へ正式な申し入れを行い、1969年5月19日にリーマ知事と原口市長によって姉妹都市提携共同宣言書が調印されました。2019年に姉妹都市提携50周年を迎え、両市において様々な記念行事が開催されました。
2019年には、リオ市に本社を置く、ブラジル最大のテレビ局「TVグローボ」の関係者が、姉妹都市提携50周年を記念して神戸市を訪問しました。同関係者らは、市内に所在する海外移住と文化の交流センターや相楽園など様々な施設を取材し、翌年には、ブラジルで同取材に基づいた神戸特集が大々的に放映されました。
5 ハプニングの発生とリオ市議会議員の尽力
50年以上に亘る両市の姉妹都市関係ですが、2015年にリオ市が提携している姉妹都市をリストアップするために制定された条例から神戸市の名前が誤って漏れてしまうというハプニングが生じました。多くの市議会議員が、この事態を改善すべく尽力し、2019年に修正案の提出にこぎ着けたものの、コロナの影響もあり長期間投票が行われていませんでした。その後、2021年にリオ市議会は無事に同修正案を採択したものの、今度はリオ市政府の手続き上の誤りにより、市長の拒否権が発動される事態となりました。これに対し、複数の市議会議員が抗議し、最終的に手続き上の誤りが認められ、全会一致で拒否権が覆されました。二度にわたる手続き上の問題により、神戸市がリオ市の姉妹都市から漏れてしまう可能性があったものの、修正案が無事に成立し、むしろ、同市議会において両市の50年以上に亘る歴史的な姉妹都市関係の重要性が広く認知されていることを確認することができました。
名誉市民称号伝達式で同条例案の写しが私に手渡されたのはこのような経緯があったためですし、同伝達式では、神戸市紹介ビデオが流され、私自身が久元喜造市長からのメッセージを読み上げました。今後も両市の姉妹都市関係を通じた更なる交流に期待し、また私も微力ながら尽力いたします。