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世界農業遺産「能登の里山里海」を通じた国際貢献
フィリピン・イフガオとの交流
令和3年11月15日
石川県農林水産部里山振興室
1 世界農業遺産「能登の里山里海」

- (1)世界農業遺産の概要
- 世界農業遺産は、国連食糧農業機関(FAO)が創設し、農林水産業を基盤とした地域社会の生活、文化、景観の維持・継承と生物多様性の保全を目指す取組です。
- (2)石川県の能登が世界農業遺産として認定されるに至った経緯
- 県土の約6割を占め、能登のほぼ全域をカバーする里山は、長年にわたる人々の暮らしと農林漁業などの営みにより、生物や文化の多様性を育んできました。
一方で、戦後の高度経済成長の中、過疎・高齢化が進行し、里山の荒廃や生物多様性の低下が懸念されていました。
こうした中、石川県では、里山里海に新たな価値を創造することで、地域社会を維持し、生物多様性を保全していく取組を進めていましたが、世界農業遺産の考え方が、本県の取組と相通じることから、世界農業遺産の認定を能登振興の起爆剤とすべく、2010年12月、能登という面的な広がりを対象としてFAOに申請し、2011年6月、「能登の里山里海」が日本で初めて、先進国としても初めて世界農業遺産に認定されました。 - (3)「能登の里山里海」認定10周年
- 2021年、「能登の里山里海」が世界農業遺産に認定されて10年の節目を迎えました。この間、世界農業遺産の認定を活用した農業振興、地域振興に取り組み、認定による効果は、農林水産業の枠にとどまらず、観光やものづくりといった他の産業にも広がり、地域の活性化に結び付いています。
2 いしかわ世界農業遺産国際貢献プログラム

- (1)世界農業遺産を通じた国際貢献の取組
- 世界農業遺産「能登の里山里海」の認定を契機に、石川県では開発途上国の認定申請や地域活性化に貢献するため、海外の政府職員等の研修を積極的に受け入れてきました。
2017年11月には、FAOや国連大学、JICA、金沢大学、石川県立大学と覚書を締結し、新たに「いしかわ世界農業遺産国際貢献プログラム」を立ち上げ、海外からの研修受入体制の充実を図りました。
集落を挙げて農家民宿に取り組む春蘭の里や、若手・女性の実践者など意欲あ る担い手の存在に加え、里山振興ファンドを活用した生業の創出などの本県における取組は、特に開発途上国の方々にとっては、母国の地域活性化に向けて参考となる事例が多く、参加者からは高い評価をいただいています。
また、地域住民にとっても、海外から評価されていることに気づくことにより、「能登の里山里海」が世界農業遺産に認定された時と同様に、自らの地域を再評価するきっかけとなり、視察受け入れに協力いただいた方々の自信にもつながることで、人材育成やさらなる取組強化に伴う地域活性化につながることも期待されています。
3 能登とイフガオの人材交流

- (1)石川県及び関係機関とフィリピン・イフガオ州との人材交流
- 金沢大学を中心に、県や能登の4市5町などで組織する「イフガオGIAHS支援協議会」は、2014年2月からJICA草の根技術協力事業(地域活性化特別枠)の採択を受け、若者の離村、文化継承などの共通課題を抱えるイフガオと連携し、金沢大学が能登で取り組んでいる人材育成プログラム「里山マイスター」のノウハウを活用した、イフガオ地域での農林業や観光業等の振興を担う若手人材を養成する取組を展開してきました。
具体的には、イフガオへの農林業の専門家派遣やイフガオからの研修員受け入れに加え、両地域実践者の相互技術交流、ワークショップ等を通じた課題や人材養成のノウハウの共有など、互いの世界農業遺産地域の活性化に向けた取組の強化を図っています。
4 今後の展望
今後とも、研修生の受入などを通じ、先進国の認定地域として本県に期待される責務である国際貢献の役割を果たすとともに、世界農業遺産「能登の里山里海」の世界への発信にもつなげていきたいと考えています。