グローカル外交ネット
外交実務研修員研修(国連大学サステイナビリティ高等研究所)
外務省地方連携推進室
令和3年9月7日、「令和3年度第1回外交実務研修員研修」として、21名の外交実務研修員がオンライン形式で国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)による「国連大学と持続可能な開発」をテーマとした講義を受講しました。その概要は次のとおりです。
国連大学(UNU)について
はじめに、バルドックUNU首席補佐官から、UNUの主な特色として、(1)国際機関としてのネットワークを活かした様々なレベルのステークホルダーへの働きかけを行っていること、➁学術研究機関として大学院機能を有し開発途上国を含め世界各国から学生を受け入れていること、(3)地球規模課題に焦点を当てて研究に取り組む14の機関(例:東京―サステイナビリティ、ヘルシンキー開発経済、クアラルンプールーパブリックヘルス、ニューヨークー平和と安全保障等)を世界各地に設置していること、(4)グローバルシンクタンクとしての取組、等についてご紹介いただきました。
国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)について
続いて、山口UNU-IAS 所長からUNU-IASについてご紹介いただきました。UNU-IASでは、4つのテーマ((1)持続可能な開発のためのガバナンス、➁生物多様性と社会、(3)水と資源管理、(4)イノベーションと教育)を主軸としつつ、政策志向型の研究と教育、アドボカシーが推進され、国際社会のみならず、日本の政府機関や地方自治体、大学など教育機関と幅広く連携し、取組を展開されているとのこと。また、取組によって蓄積されたエビデンスを駆使し、政策立案・実行に貢献できることがUNU-IASの最たる強みであるとのご説明がありました。
SDGs、廃棄物、気候変動、ESD(持続可能な社会のための教育)について
山口所長から、2030年までのSDGs達成に向けて、特にカーボンニュートラル、グリーンリカバリー、DX分野の地球規模での促進の重要性が示されました。これらを促進するにあたっても、「誰一人取り残さない」公平で包摂的な発展を遂げるという観点から取り組めば、途上国も含めた地球規模で、課題解決を加速化できることが強調されました。新型コロナウイルス感染拡大による学ぶ機会・教育へのアクセスの不均衡が生じていることも喫緊の課題です。これまでUNU-IASは国内外の様々な地域や大学とのネットワークやパートナーシップ(SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ、ESDに関する地域拠点(RCE)、など)に参画し、あらゆるレベルのステークホルダーと連携した課題解決に向けた取組が行われています。各機関との連携をいかに展開し、具体的なアクションに取り組んでいくか、アクターとして持つべき大事な視点も共有いただきました。
竹本プログラムヘッドからは、統計資料とともに、日本のSDGs達成率が各国の中でも比較的上位にあることを示しながら、日本は貧困目標(SDG1)及び教育目標(SDG4)の達成率が大変高い一方で、ジェンダー(SDG5)及び海洋(SDG14)や土地利用(SDG15)については評価が低く、課題が残っていることについて説明いただきました。廃棄物関連では日本は1人当たりのプラスチック容器包装廃棄量が各国と比較して多いこと、また日本とは異なる廃棄物処理姿勢が国外に存在すること、気候変動関連では、今後日本がカーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでいくことで国際社会における評価が改善され得ることなど、各課題の背景とともに、日本の立ち位置と固有の課題を改めて認識することができました。ESDにおいては、世界の179と日本国内の8つの拠点を活かしつつ、UNU-IASが教育機関に向けてのみだけでなく、地方の公的機関や地域コミュニティなどに向けての活動支援に努められており、「持続可能な」という視点の多面的な広がりを感じました。
最後に
山口所長及び竹本プログラムヘッドからは、SDGsが世界中に浸透した理由は、先進国と途上国を問わず全ての国・地域で、政府レベルのみならず、多くの個人・組織にとって解決すべき課題であると捉えられたことにあることなど、研修員の質疑にも丁寧に答えていただきました。また、山口所長と竹本プログラムヘッドの国際経験豊富なバックグラウンドについてもお話しいただき、オンライン形式の研修でありながら、地球規模課題に考えをめぐらし、グローバル感覚を養えた貴重な時間を過ごすことができました。山口所長から、締め括りに、「世の中の変化のスピードに伴って新たな課題も到来し得るが、ポストSDGsのゴール設定を考えるのはネクストジェネレーションの君たちである。ぜひ意見を聞かせて欲しい。今後も議論したい」と熱いメッセージをいただき、研修員皆、気持ちが高揚したようです。
この度、大変有意義な研修を行っていただいたUNU-IASの皆様に厚く御礼申し上げます。
