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パシフィコ横浜ノースの開業と「グローバルMICE都市」としての取組
横浜市文化観光局観光MICE振興部MICE振興課
1 横浜市におけるMICEの取組

横浜市は、1859年の開港以来、日本近代化の原点の地であり、国際的に開かれた都市として発展してきました。
現在も、日本有数の国際貿易港、羽田空港へのアクセスなど優れた交通網、緑豊かな住環境など、ビジネスに必要な都市環境が整っており、平成23年に「環境未来都市」「国際戦略総合特区」、平成25年には「グローバルMICE戦略都市」に指定されました。
(注)MICE(マイス)とは、会議(Meeting)、報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際会議 (Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字からとったイベントの総称を指す語です。
本市の中長期な戦略と重点的に推進すべき政策を取りまとめた「横浜市中期4か年計画2018から2021」においても「グローバルMICE都市」としての機能強化を戦略の一つとして掲げ、MICEの誘致や関連産業の強化を進めています。
本市の中核的なMICE施設であるパシフィコ横浜は、日本最大級の複合MICE施設として、劇場式ホール、会議室、展示場、ホテルと、MICEに必要とされる機能が同一敷地内に存在する、ALL IN ONEの利便性に強みを持つ施設で、APECやTICAD、ADBなど、数々の国際会議の舞台として活躍し、国際会議の開催件数・参加人数とも国内のMICE施設中で首位を維持しています。
一方で、稼働率が限界に近く、MICE市場規模の世界的拡大や大型バンケット利用の国際会議の開催需要に応えきれていませんでした。そのため、パシフィコ横浜の隣接地にこれらの開催需要に対応するバンケット機能を持つ新たなMICE施設とホテルを合わせて整備することでコンベンションに必要な施設を強化し、ALL IN ONEの魅力を高めることを目指しました。
2 パシフィコ横浜ノースの開業

令和2年4月24日に新たなMICE施設としてパシフィコ横浜ノース(正式名称:横浜みなとみらい国際コンベンションセンター)が開業しました。
既存のパシフィコ横浜の運営者である株式会社横浜国際平和会議場がパシフィコ横浜ノースの運営権を取得することにより、既存施設と一体に運営し更に大規模なMICEの開催なども受け入れが可能となりました。

本施設は、国内最大規模となる約6,300平方メートルの多目的ホールと大中小42室の会議室を備えており、学会やレセプションなど、さまざまなイベントの開催が可能です。
海外の先進的MICE施設のバンケットルームに倣った多目的ホールは、無柱・床面カーペット仕様、8分割が可能で、立食で5,000人、着席で2,300人の大規模パーティーが開催可能です。記念式典やインセンティブトラベル(報奨・研修旅行)、新商品発表会などの企業コンベンションの開催に最適なフレキシブルなスペースです。
また、既存のパシフィコ横浜と2階のペデストリアンデッキで連絡しており、催事スタイルに応じて一体的な利用ができます。
緊急事態宣言発令中の開業となり、その後も新型コロナウイルス感染症の影響を受け、多くの催事が延期中止となりました。しかし、感染症予防対策ガイドラインの策定、ソーシャルディスタンスを確保した会場レイアウトの提案や感染予防対策の実施等を行い、従来の現地開催形式以外に、オンライン形式や現地開催とオンライン開催の両方を行うハイブリット形式を活用した会議や式典などが開催されました。
大規模国際会議の「2020年JCI世界会議 横浜大会」は、ハイブリット形式で開催され、約8,000人の参加者があり、また、日本初開催の国際会議である「ICCA Asia Pacific Chapter Summit 2020」もハイブリット形式で開催されました。
3 パシフィコ横浜ノースの運営事業者によるMICE誘致
国際会議の誘致にあたっては、コンベンション・ビューローが主体的に取り組むことが一般的ですが、本施設の運営事業者であるパシフィコ横浜は、横浜市、横浜観光コンベンション・ビューローと密に連携し、積極的に誘致活動に取り組んでいます。
運営事業者として選定される以前から、海外のMICE見本市・商談会への参加やICCA(国際会議協会)等の業界団体の活動に基づいたネットワーキングを通じて、数多くの海外MICE主催者・関係者に対して、本施設をPRするとともに、国内有力研究者等への営業活動などを行い、コロナ禍で一部開催中止やハイブリッド開催となったものの、開業初年度には4件の国際会議の誘致に成功しました。
また、先述の「ICCA Asia Pacific Chapter Summit 2020」においては、『「Navigating a new model for meetings」 新たなミーティングモデルの確立』をテーマに、15か国・地域から現地参加170名、オンライン参加124名の参加者を集めたハイブリッド会議を開催し、with/after コロナ時代の新たな会議開催形態を提示するとともに、本施設の認知の向上を図りました。
4 おわりに
現在は新型コロナウイルス感染症の影響で、開催の中止やオンライン形式への変更が多くなっています。しかし、人と人との交流を通じたイノベーションの機会やビジネス機会の創出がMICEに対する大きな期待と考えています。徹底した感染対策を講じたMICE開催の実績を重ねつつ、催事形態に合わせて、分割して利用が可能な国内最大規模の「多目的ホール」や隣接して整備されたラグジュアリーホテルの「ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜」との連携などを活かして、企業のレセプションやインセンティブ旅行などの分野についても積極的に誘致していきたいと考えています。