グローカル外交ネット

令和3年8月17日

外交実務研修員 稲葉 大輔
(鳥取県から派遣)

1 はじめに

 私は、2020年4月に鳥取県から派遣され、現在欧州局日露経済室で勤務しております。本寄稿の機会をいただいたので、拙いながらこれまでの勤務を振り返って御紹介いたします。

2 日露経済室での業務

 日露経済室では、日本とロシアの経済分野における互恵的な協力に関する業務を所掌しており、特に、2016年5月に安倍前総理からプーチン大統領へ提示した8項目の「協力プラン」を推進するため、日露間の経済プロジェクトの具体化に向けた作業を進めています。
 私は、「医療」「農林水産」「地域間交流」といった分野を担当しており、日露の省庁間で行うプロジェクトや日本企業が行うロシアビジネスのフォロー、関連情報の収集等を行っています。新型コロナウイルスの関係で、日本で報道を目にしない日はない医療分野は、ロシアでもコロナ禍以前から重要視されており、8項目の「協力プラン」でも第一の柱とされる喫緊の課題です。また、農林水産分野も非常に重要であり、ロシア極東の農業及び水産業の生産性向上に係る日露共同プロジェクトに基づいて、農業・水産分野における日露協力を推進しております。加えて、地域間交流は、日露の協力の裾野を広げるという意味でも意義が大きく、昨年から日露地域交流年も始まっており、今後の有望協力分野の一つです。これらのような重要な課題に、担当として携われたことは大変貴重な経験だったと思います。
 以下、私が実際に携わり、思い出深い業務を簡単に紹介させていただきます。

  • (1)日露経済関係に係る情報収集等
    上記担当分野を中心に、日露経済関係の情報を収集・整理することに努めています。それらの結果は、省内関係者と共有し、情勢判断や政策決定に向けた判断材料の一つにもなり得ます。地方新聞を読むことはあっても、英語、ましてはロシア語の記事を読むことがなかった私にとっては、想像を超える難しい作業でしたが、課室内だけでなく在ロシア大使館の方々とも協力しながら、なんとか作業を進めています。海外の知識がほとんどない状態で外務省に飛び込みましたが、ロシアだけでなく他国の外交施策またはその発信方法などを肌で学ぶことができ、とてもやりがいのある業務です。
    また、特に医療分野では、コロナ禍において新型コロナウイルスに関連する様々な情報があふれる中で、短期間での正確な状況報告を求められることも多いです。そのため、予め問題意識を持ちながら、手持ち情報を最新のものにしておくことが重要です。案件の一つ一つの速いスピード感の中で、それに瞬時かつ適切に反応する能力を求められるため、外交的な視点もちろんのこと、国内的な観点含め省内関係者への報告内容やタイミングといった点を確認・相談しながら対応するなど、勉強勉強の日々です。
  • (2)コロナ禍における会議の開催
    両国の首脳や大臣等の要人が往来する際には、事務的な後方支援(いわゆるロジ)にも従事しております。昨今は新型コロナウイルス拡大の影響により、人々の往来が困難な状況ですので、会議等はオンライン開催がメインとなっています。オンラインは双方が問題なく繋がって初めて成立するものであるため、どのプラットフォームを使用するか、回線の安定性など様々な点に配慮した各々の考え方等を踏まえて、ロシア側を始めとする関係者と調整を行ったことは、貴重な経験となりました。
(写真1)茂木外務大臣(正面)
(写真2)茂木外務大臣(背面)

貿易経済に関する日露政府間委員会共同議長間会合(オンライン)の様子

 私の外務省生活は、2020年3月、過去に鳥取県庁から外務省に出向した諸先輩方へ挨拶をした日から始まりました。ちょうどその頃WHOによって新型コロナウイルスが世界的な大流行に至っているとの認識が示された中、地方から東京へ、仕事だけでなく感染症の不安をも抱えながら赴任した夜。そして、これまで経験したことのない原則テレワークという新しい働き方で東京生活がスタートしたことがつい最近のように思い出されます。当初は、テレワークのため、同僚の顔だけでなく、資料も思うように確認できない日々が続き、また、英語もロシア語も飛び交うメールに、不安でしかなかったことを鮮明に覚えています。
 とは言え、本省での勤務は早くも折り返し地点を過ぎました。外務省職員の皆様の能力の高さに圧倒される日々ですが、優秀なロシア課及び日露経済室の皆様と一緒に勤務できたことを人生の財産として、残された時間を大切に、少しでも成長できるように日々精進したいと思います。
 最後になりましたが、貴重な機会を与えていただいた外務省及び鳥取県、度重なるご迷惑をおかけしてもお力添えやご指導いただいたロシア課及び日露経済室の皆様には、この場を借りて深く御礼申し上げます。

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