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杉原千畝氏とゆかりのある地方とイスラエルの交流
在イスラエル日本国大使館
2023年7月4日から5日にかけて、水嶋光一在イスラエル大使は、福井県敦賀市、愛知県名古屋市そして岐阜県八百津町を訪問しました。いずれも、第二次世界大戦中に多くのユダヤ系避難民に対して「命のビザ」と呼ばれる査証を発行した杉原千畝氏とゆかりのある地です。
1 福井県敦賀市

7月4日、水嶋大使はまず福井県敦賀市を訪問しました。敦賀市は、1940年代に「命のビザ」を手にしたユダヤ人が日本に初めて上陸した地で、イスラエルとの長い交流があります。実際に敦賀港の地を踏んだ、所謂「スギハラ・サバイバー」は現在もイスラエルにご健在で、在イスラエル大使館とも交流があります。彼らは、長旅を経て敦賀に到着した際にとても安心したこと、地元の人々が果物を差し出したりお風呂を進めてくれたりとても親切だったことなど、当時の様子を活き活きと語ってくださいます。
今般の訪問で水嶋大使は、まず米澤市長を表敬し、当時の歴史や人々の様子を次世代に伝える記念館「人道の港 敦賀ムゼウム」を訪れたほか、船に乗り当時のユダヤ人が船上から目にした敦賀港の様子を眺めるなど、今後の更なる敦賀市とイスラエルの交流強化に向けた活動を行いました。
2 愛知県名古屋市
水嶋大使は次に、杉原千畝氏が卒業した、名古屋市の県立瑞陵高等学校(旧制愛知県立第五中学校)を訪問しました。同校の正門西側には、杉原氏の人道的功績を顕彰する屋外型展示施設「センポ・スギハラ・メモリアル」があり、一般に公開されています。水嶋大使は鶴田校長と面談し、杉原千畝氏の功績を通じたイスラエルとの交流について意見を交わしました。
愛知県からは客年5月には大村知事が、また10月には県議会がそれぞれイスラエルを訪問し、同県が振興しているイスラエルのスタートアップとの連携事業に加え、杉原千畝氏の人道的行為を「諸国民の中の正義の人」として顕彰したことでも知られる、エルサレムにあるホロコースト記念館「ヤド・ヴァシェム」を訪問するなど、近年イスラエルとの活発な交流が進められています。
3 岐阜県八百津町

翌5日、水嶋大使は、杉原千畝氏の出身地岐阜県へ移動し、八百津町の杉原千畝記念館、そしてビザ・モニュメントのある人道の丘公園を視察しました。杉原千畝記念館には当時発行されたビザのレプリカやビデオ資料など、ホロコーストの歴史や杉原千畝氏の功績を紹介する展示があり、多くのイスラエル人旅行者も立ち寄る名所になっています。
展示内容にはヘブライ語訳も付されていますが、それはかつて日本政府から八百津市に派遣された国際交流員と呼ばれるイスラエル人達の功績によるものです。国際交流員を務めた彼らは、滞在期間中八百津町の職員としてホロコーストの歴史やイスラエルの文化を地元に紹介する事業を積極的に行い、八百津町とイスラエルとの交流強化に貢献してきました。
4 杉原千畝氏の功績を通じたイスラエルと地方との交流

在イスラエル大使館では、現在でも「スギハラ・サバイバー」、そして、その多くの子孫との交流の機会を設けています。その都度、皆さんは「ビザがなければ自分はもちろん、その後の家族は皆存在しえなかった。勇気ある行動に心から感謝している」と感謝の言葉を述べられます。また、イスラエルには杉原氏の功績を顕彰して名前を冠した通りや広場が複数存在し、次世代の人々にも語り継がれています。
この度水嶋大使が訪問した各地方に加え、飛騨、高山また金沢を含めた経路は、日本を訪問するイスラエル人旅行者の間でも人気の旅行ルートとなっています。大使館では、天皇誕生日祝賀レセプションなどの機会を活用し、パンフレットの配布、また各地方自治体が制作した動画にヘブライ語字幕を付すなどの工夫をしながら、地方の魅力をより多くのイスラエル人に積極的に紹介しています。
3月にはイスラエルと日本をつなぐ直行便が就航し、日本を訪問するイスラエル人旅行者が増えています。今後、日本人とイスラエル人の往来が活発化し、人々の交流の歴史を継承しながら、様々な魅力を有する地方との関係が益々強化されることを願います。