グローカル外交ネット
外交実務研修員研修(JR東日本)
外務省地方連携推進室
令和3年2月26日、「令和2年度第1回外交実務研修員研修」として、18名の外交実務研修員がJR東日本本社を訪問し、「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)」とJR東日本グループの企業価値向上の取組みとして、「地方創生」、「インバウンド」、「環境・社会・ガバナンス(以下、ESG)」、「海外展開」等について説明を受けました。
東京2020大会に向けた取組について

大会運営支援の取組として、様々なお客様が東京に来られる想定のもと、インフラ面でのバリアフリー化や旅のストレスフリー化が促進され、大会開催へ向けた準備がほとんど整っていること、また、大会開催機運醸成の取組としては、パラスポーツ支援を通じた地域社会への貢献や自治体のホストタウン事業に現場主導で取り組まれ、具体的にはタイのホストタウンである秋田県大館駅にボッチャのコートを設営したり、駅で選手団の出迎えや見送りを行ったりと、ホストタウン事業を大事な事業として位置付けていることなどについてお話を伺いました。
企業価値向上に向けて
JR東日本グループも例外ではなく、新型コロナウイルス感染症の大きな影響を受けています。そのような厳しい経営環境の中で、ポストコロナ社会の構造変化への対応として、「変革のスピードアップ」を2020年9月に公表し、「ESG経営の実践」「成長・イノベーション戦略の再構築」「経営体質の抜本的強化」の3つに取り組んでいます。これら企業価値向上の具体的な取組の中で、以下の内容の説明を受けました。
地方創生の取組について

目的を地方に創り、地方を元気するという考えのもとで展開されている無人駅のホテル化やグランピング化、体験型観光農園の開設といった先進的な取組の数々について紹介頂きました。いずれも持続可能性を見据えた上で、地域と共存共栄の視点で連携し、地域の観光資源の活用を図っていくことが強く意識されていることに、研修員は大いに共鳴しました。
インバウンドの取組について
海外からのお客様の心が日本から離れないように動画・SNSで安心や観光情報の発信を行い、また、今後のインバウンド回復予測を立てつつも、現在は在留外国人へのプロモーションに力を入れているというお話を伺いました。車内のWi-Fi環境整備や、Welcome Suicaの導入、よりシームレスな環境整備など海外からのお客様にとってストレスフリーとなる具体的な環境改善の取組、プロモーションのデジタルシフトについても説明を受けました。
ESGの取組について

脱炭素社会の実現に向け、同社は、グループ全体で2050年度CO2排出量実質ゼロ目標を掲げており、省エネ車両・水素活用車両をエネルギー源とした燃料電池試験車両の実証実験や商業施設のLED化、空調高効率化などに取り組まれています。また、資源循環社会の形成に向けて、プラごみ削減策としてエコバッグの配布や、駅ナカ店舗の販売しきれなかった商品を従業員に向けて販売するフードロス削減策といった具体的取組の数々についてお話を伺いました。
海外展開の取組について
インド、タイ、インドネシア、英国の各海外事業展開先において、鉄道のオペレーションやメンテナンス事業に取り組まれていることなど果敢な挑戦について学び、同社が世界での知名度向上に努力される様子について知ることができました。
質疑応答
活発な質疑応答が行われ、新幹線での特産物輸送は北海道や東北、北陸から運ばれるのみでなく、東京からスイーツが運ばれていくこともあることや、人口が少ない地域での取組においては継続的に利益を出すことが困難であり、地元住民と自治体のバックアップが肝要であることなど、丁寧にお答えいただきました。
今回、最も印象的だったことは、同社がコロナ禍以前において、鉄道が使われなくなる未来を想定し、その場合の計画を立てていたというお話でした。輸送業に留まらない多角的な事業展開が行われ、スタートアップ企業などと新たな事業を創発し、勢いをもって価値創造を具体的に繰り広げていく様子は、研修員にとって大いなる刺激となりました。
この度、大変有意義な研修を行っていただけたJR東日本の皆様に厚く御礼申し上げます。