グローカル外交ネット
コロナ禍における海外交流に必要な3Cs
(Challenge, Creativity, Communication)
愛知県立津島高等学校 伊藤 和明
1 はじめに
本校は、愛知県西部に位置し令和2年に創立120周年を迎えた県内有数の伝統校です。平成19年度には普通科の中に国際理解コースが設置され、また平成27年度には文部科学省から「スーパーグローバルハイスクール(SGH)アソシエイト校」の指定を受け、学校全体でグローバル教育を進めています。一方で、地元の小学校で英語の出前授業を行ったり、地元の祭を英語で説明するアナウンスボランティアとして生徒が参加したりするなど、魅力ある地域づくりの手助けをしています。さらに平成30年12月には愛知県知事、県庁国際課を通じてバンコクのワットスッターラム高校(以下、現地の略称に合わせてMSR校という。)と姉妹校提携を結び、令和元年9月から国際理解コースの生徒を中心にスカイプによる交流を行っています。
2 令和元年度のスカイプ交流


スカイプ交流に先立ち、令和元年8月下旬MSR校を訪問し、今後の連携内容の確認をしました。具体的には、生徒派遣では令和2年8月上旬に本校生徒がMSR校を2日間訪問すること、そしてスカイプ交流では準備が整い次第開始することを決めました。
さて実際のスカイプ交流は9月から5回行いました。初回のスカイプは室内で行いましたが、2回目はタブレットを屋外に持ち出し校地を回りながら学校の様子をリアルタイムで実況中継しました。3回目は調理室に場所を移し、生徒たちが4種類の日本の卵料理を英語で説明しながらその料理を作り、その食べ方も伝えました。4回目はMSR校の体育祭当日に日程を合わせていただき、スカイプを通して現地の体育祭を観戦しました。5回目は、本校のスカイプ交流の担当生徒が3年生から1年生に交代し、また新たな交流の始まりになりました。
なお、こうしたスカイプの様子は各回終了後に報告書を作成し、本校のホームページに掲載しました。併せて英語版の報告書も作成しバンコクにメールで送信しました。MSR校内でその英語版報告書を閲覧することにより、本校との交流活動を現地の方々に広く知っていただけたのではないかと思います。
3 令和2年度のスカイプ交流

新型コロナウイルス感染症により、8月に予定していたバンコクへの生徒派遣を中止せざるを得なくなりました。本校では、この学校訪問と併せてJICAタイ事務所の訪問及びJICAのプロジェクトサイト見学の承諾を得ていただけに苦渋の決断でした。
しかし、コロナ禍においても両校は昨年からの交流を継続させたいという熱い思いをもっていました。そこで4月早々には担当者間で、両校が学校再開した段階で早めのスカイプ交流を約束しました。本校では、その早期のスカイプ交流を想定し、休業中のオンラインセミナーでオールイングリッシュによる会話練習を自発的に十数回行いました。
そして迎えた7月、待ちに待った令和2年度最初のスカイプを始めることができ、それを皮切りに、12月末までに5回行うことができました。まず7月は自己紹介から始まり、お互いの国の文化や新型コロナウイルス感染症による影響について情報共有をしました。10月になるとSDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた取組について高校生のレベルで話し合うことにより世界的な課題を共有するなど、次第に内容の濃いものになりました。さらに12月には交流の密度を高めるため、スカイプ交流に加えて学校での様子や家庭での過ごし方などを、本校のスカイプ参加生徒が一人一人ビデオに収めてMSR校に動画を送りました。それらは日常よく見かける動画ではありますが、顔見知りの生徒が説明していることで、相手の心に訴える力は大きいと考えています。コロナ禍という日常生活にさえ大きな制約がある中で、工夫を凝らしながら最大限の交流をしていくことこそが求められているのではないかと思います。
4 今後の交流
新型コロナウイルス感染症の影響で、本校のグローバル化推進計画は当初予定した通りには進んでいません。この先どうなるのか、予測不能です。一方その影響で、今まで日本では当たり前と思っていた平和で自由な日常が、実はとても貴重なものであったということがわかりました。またコロナ禍で生徒は、普段あまり関心がなかった政治や経済に目を向けることにつながりました。そして我々の社会は、自分たちが思っているほど強固な社会ではないことを知ることにもなりました。それらを踏まえて今後の国際社会を生きていくのに必要なものとして、次の3Csを念頭に置いて生徒を導いていきたいと考えています。
- Challenge:新しいことに対してそのリスクを理解した上で主体的に挑戦
- Creativity:直面する課題を明確化してそれを解決するための創意工夫
- Communication:相手の国や人に配慮しながら共感力をもって意思疎通