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歴史と産業を共通項とした田原本町とグアテマラのホストタウン交流(奈良県田原本町)
田原本町役場 参事 村上 玲子
(内閣府の地方創生人材支援制度で外務省より派遣中)
1 田原本町とグアテマラ共和国(以下,グアテマラ)
奈良県田原本町は,奈良盆地の中心部に位置し,平地と水運を活かした農業が発展する中,大阪や京都から電車や車で約1時間という好立地にあります。
2018年10月,私が田原本町に着任以降,ホストタウン事業(事後交流型)に参画すべく,田原本町と海外とのつながりを模索していたところ,内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局から,未だホストタウンに登録されていなかった中米グアテマラを紹介されました。2019年6月,森章浩・田原本町長と共にウビコ駐日グアテマラ臨時代理大使(当時)を表敬訪問し,田原本町に好印象を持っていただけたことを受け,一気にグアテマラとの関係を深めることとなりました。翌月7月に内閣官房職員がグアテマラに出張しグアテマラ関係者の意向を確認,8月にはホストタウンの合意書に田原本町とグアテマラ側が署名,同下旬にホストタウン登録が完了しました。
田原本町は弥生時代に形成された唐古・鍵遺跡,グアテマラはマヤ文明が生み出したティカル遺跡を始め,共に価値ある文化遺産を有しています。また,UCC上島珈琲株式会社の創業者の出身地である田原本町,コーヒーの一大生産地であるグアテマラとは,コーヒーというキーワードでも繋がりがあります。さらに,共に農業を主産業としており,これらの共通項を通じ,今後更なる交流促進,相互理解と友好親善を深めることができると考えています。
2 これまでの交流
(1)グアテマラ・オリンピック委員会及びコーヒー事業者他の招致
2020年1月23~27日,グアテマラ・オリンピック委員会会長と役員(ボート種目のアスリート),大手日刊紙新聞記者(報道記者招へい),日本在住のコーヒー事業者,駐日グアテマラ大使館員から成る5名のグアテマラ人が田原本町を訪問しました。
一行は関西国際空港での歓迎を受け,翌日から田原本町役場表敬訪問,町内の小中学校での交流事業に参加した他,町民向け国際交流セミナーではグアテマラに関する自然・文化・産業等について発表しました。また,事後交流の場として想定されている体育施設や今夏オープン予定の宿泊施設の視察,町の主要産業でもあるイチゴ「古都華」の栽培体験,町民と一緒に和菓子作り・生け花体験,寺社訪問等,精力的に各種活動に参加しました。
田原本南小学校での交流事業では,6年生の児童約70名が,グアテマラ一行をよさこいの踊りで歓迎し,グアテマラについて予め調べた内容をポスターに纏め説明,グアテマラの児童・生徒へのビデオレターを披露,最後に縦笛で「ふるさと」を演奏しました。グアテマラ一行は,児童一人ひとりにグアテマラの玩具(コマやヨーヨー,ミサンガ)やお菓子を持参し,児童にプレゼントすると,目を輝かせて喜んでいたのが印象的でした。また,グアテマラ一行からAntigua Green Schoolのビデオレターが紹介されたところ,グアテマラの学校教員や児童のメッセージ映像を興味深く見ながら,将来の直接的な交流に向けて田原本町の子どもたちが想いを馳せていました。
このような訪問の様子は,広報誌「たわらもと」やSNSを始め,主要日刊紙や奈良テレビ等,多くの媒体で発信されました。この交流を通じて,町内の児童・生徒,保護者,町職員,学校教員等,あらゆる町民がグアテマラについて関心を持ち始め,国際交流に積極的になったことが成果の一つと考えています。
(2)手紙やビデオメッセージの交換
2020年2月以降,新型コロナウイルスの影響を受け,手紙やビデオメッセージでの交流を始めています。2020年2月25日には,山元毅・在グアテマラ日本大使が,4名のグアテマラ・オリンピック出場選手からのメッセージを携えて田原本町を訪問し,その手紙は田原本町立図書館で飾られています。また3月,田原本町長が町のマスコットキャラクター「タワラモトン」と共にグアテマラ向けビデオメッセージを配信すると,SNS上で多くの「いいね!」が寄せられました。在グアテマラ日本大使館のFacebookにおいても,田原本町を紹介するクイズやアルバムが作成される等,交流促進に向け積極的に広報し合っています。
3 ホストタウンの派生効果や今後の交流に向けて
このような急激な関係強化を背景に,官民・民民連携も広まりつつあります。京都外国語大学総長補佐がグアテマラの名誉領事を務めていることから,田原本町×グアテマラの交流にも協力下さることとなった他,九州を拠点とし日本全国にグアテマラの魅力を発信する活動をされている「アモール・グアテマラ」から,ホストタウンとなった田原本町の児童に絵本のプレゼントがありました。さらに,2020年1月に田原本町を訪問した「Good Coffee Farmers」責任者のCarlos Melen氏は,田原本町事業者「Aogaki Cafe」と提携し,町内でのグアテマラ産コーヒー豆の販売が開始されました。
グアテマラ・オリンピック委員会より,田原本町に専用体育館を有しているバドミントン競技のパラリンピック選手も出場選手に選出される可能性が高いと聞き,今般「共生社会ホストタウン」への登録も目指して,更なる関係強化に努めているところです。