グローカル外交ネット

令和元年10月31日

外交実務研修員 山下 竜生

1 はじめに

 私は,2018年4月に和歌山県から外務省に派遣され,外交実務研修員として勤務しています。和歌山県では,入庁から4年間勤務していました。最初の2年間は和歌山県産食品の国内へのプロモーションを行う業務に携わり,2年目には大阪府で行われた和歌山県産食品の商談会を担当しておりました。今思えば,当該業務は外務省での業務に欠かせないサブロジ・ロジのノウハウがあれば円滑に進んでいたものを,当時はよくわからないまま手探りで,不安を抱えたまま行っていた記憶があります。しかしながら,ここでの業務を通じて,国内市場の将来的な限界,海外への市場開拓や交流の必要性という視点から,国際的知見の重要性を認識しました。その後2年間は,和歌山県道の管理を行う業務に携わり,入庁から5年目で,4年間外交実務を学ぶ機会を与えていただきました。現在も,外務省の上司,先輩や同僚の皆さまに多大なる支援を頂きながら,学びの日々を過ごしております。

2 アフリカ部アフリカ第2課

(写真1)日・ウガンダ外相ワーキングディナーの様子 日・ウガンダ外相ワーキングディナー
(外務省ホームページ)

 私は着任から現在まで,アフリカ部アフリカ第2課で勤務しております。各職員は国担当として,各国の情勢について,当該国の日本国大使館や在京各国大使館から情報収集を行い,よりよい二国間外交関係の構築に向け,日々業務を行っています。私は,恥ずかしながら,着任当初は「アフリカにはどんな国があって,この課は何をするところなのか。」全く五里霧中の状態でした。自分の国担当がウガンダ共和国であると知らされたときは,まずはひたすらウガンダについて知ることから始めました。しかし,5月にはアフリカ部長のウガンダ出張があり,主担当の上司の指示のもと,右往左往しながら業務を行いました。それが終わったのも束の間,6月にはクテサ・ウガンダ共和国外務大臣夫妻が訪日されました。要人の往来は,二国間関係の発展のために極めて重要であり,二国間会談はもちろん,国際機関・民間企業視察,加えて日本文化の理解促進やスムーズできめ細やかな接遇等,様々な業務を完遂しなければ,成功とは言えません。私はその中で,各種視察先のアポイントの調整,空港接遇や現場への同行を担当していました。分刻みのスケジュール調整に冷や汗をかきながら,訪日中はすべての日程で大臣夫妻に同行,関西視察にも亀田・駐ウガンダ共和国大使とともに帯同させていただきました。最終日,大臣夫妻が日本を発たれる際,大臣がおっしゃった「素晴らしい訪日だった,是非今度はウガンダにも来てほしい。ありがとう。」というお言葉は,二国間の関係の発展に向け,国担当として何ができるのか,日々考えるうえでの活力源となっています。
 現在は,ナミビア共和国・レソト王国・エスワティニ王国の国担当として,業務を行っています。まずは知ること,そして各国の立場,日本の立場,さらに国際情勢を俯瞰して二国間関係を考える。上司や先輩方に日々助けてもらいながら,未熟者として今も業務に励んでいます。

3 TICAD7

(写真2)2018年TICAD閣僚会合共同記者発表の様子 2018年TICAD閣僚会合共同記者発表
(外務省ホームページ)

 外交実務研修員として着任して初めての夏,第7回アフリカ開発会議(TICAD7)閣僚会合の準備事務局が設置されました。TICADとは,日本が1993年に立ち上げたアフリカ開発に関する首脳級の国際会議であり,TICADV(2013年)までは5年毎,TICAD VI(2016年)からは3年毎に開催されています。2019年8月にはTICAD7が横浜市で開催されました。上記閣僚会合はその準備会合に位置付けられ,アフリカ各国の閣僚級が参加し,TICAD7本番に向け議論が行われます。東京で行われる閣僚会合に向け,私は広報班の一員として,TICAD7のロゴマークおよびTICAD7名誉大使の決定に携わりました。タイトなスケジュールの中,TICAD7開催都市の横浜市や各国際機関の共催者と協議の上,閣僚会合当日にはお披露目ができましたが,各方面との調整の困難さを痛感することになりました。
 閣僚会合が終わって間もなく,TICAD7準備事務局が発足,引き続き広報業務に携わらせていただきました。現在も残る課題として,日本に住んでいる多くの方が,アフリカについてあまり関心がない,誤解をしているという点があります。TICADを通じて,もっとアフリカを知ってほしい,日本が誇る取組を理解してほしいという思いのもと,様々な方法で広報業務を進めていきました。私も,ほんの1年前まではアフリカについて何も知りませんでした。1人でも多くの方が,アフリカに興味を持ってくださったなら,私の仕事は報われたと思います。
 本番の8月に向け,直前期の5月から本番までの間は,TICAD7の成果文書を作成する班に配属されました。国際会議の総決算でもある成果文書作成のための,各方面との文書交渉の現場は,凍てつくような緊張感と,外交官としての気迫に溢れていました。私は主に当日の特別会合の文書作成に携わりましたが,日本でも有数の大規模国際会議の現場は,想像をはるかに超える熱気と緊張に包まれていました。まだまだ研修は続きますが,数えきれない人数の職員,ボランティアがひとつのチームとなり,それぞれが与えられた役割を懸命に果たす,このチームの一員になれたことは,私にとってかけがえのないものになりました。

(写真3)TICAD7の様子 TICAD7写真撮影(写真提供:内閣広報室)

4 終わりに

 私にとって外務省は未知の世界でした。外務省独特の言い回し,スピード感,最初はとても戸惑い,2年間やっていけるか不安でした。ただ,挫けながら,へこたれながら,なんとかやってこられているのは,アフリカ第2課,TICAD7準備事務局の方々をはじめ,これまで関わってきた皆さまの温かいサポートのおかげです。外務省の皆様は,責任感が強く,真摯に仕事と向き合い,必ず仕事をやり遂げます。今まさに,このような環境で仕事ができていることは私の1番の財産です。アフリカ第2課で国担当として培っている各国との二国間関係形成のためのノウハウ,「TICAD7閣僚会合」「TICAD7」等の大規模ロジを通じて得た知見やネットワークをこの先の在外公館での勤務,さらに将来的には,和歌山県のために生かしていきたいと思います。ありがとうございました。

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