グローカル外交ネット

令和元年6月4日

外交実務研修員 福永 脩
(鹿児島県から派遣)

1 はじめに

 私は,平成30年の4月に鹿児島県から派遣され,外交実務研修員として外務省で勤務しています。
 鹿児島県庁に入庁して今年で6年目になりますが,最初の職場は保健福祉関連で医療法等担当でした。その後,県産品の貿易担当の部署で県内事業者輸出商談会やシンガポールでの焼酎イベントを開催する等,海外の国々に対し鹿児島県の魅力を発信する業務を行っていました。

2 担当業務について

 外務省では南西アジア課に配属され,インドとブータンを国担当しています。インド班には班員が6名おり,分野ごとに様々な「交流」業務を行っています。交流と一言で言っても,経済,防衛,文化,学術等々,とても幅広いです。その中でも私は「人的交流」を主に所管しています。今回は私の主な業務である,「(1)要人往来」,「(2)青少年交流事業」,「(3)その他の交流事業」についてご紹介します。

要人往来

(写真1)モディ首相と安倍総理 握手を交わす両首脳
(写真提供:内閣広報室)

 インドは,日本が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」構想を実現する上で,最も重要な国の一つであり,毎年安倍総理とモディ印首相が日印両国を相互訪問する等,日印関係は近年飛躍的に発展しています。平成30年度には大型の要人往来が続き,昨年10月にモディ首相が訪日,本年1月に河野外相が訪印しました。また,ブータンは日ブータン外交関係樹立から30周年が経過し,平成30年度には4月にトブゲー首相が訪日し,6月には河野大臣が日本の外相として初めてブータンを訪問しました。私は外務大臣のブータン訪問に同行しました。
 要人往来における私の業務は,主に「ロジ」と言われるもので,具体的には車両,空港やプレスの対応を行いました。これらの業務は,首脳が行き来する上で「上手くいくのが当たり前」であり,大変地味な作業ですが,失敗は許されません。首脳や事務方の当日の一つ一つの動きを頭で反芻しながら,起こりうる可能性を全て想定し,更になかなか連絡が返ってこない相手国側とのやりとりを通じて,細部を詰めていく必要があります。最終的には様々な方の力添えがあり,なんとか大過なく訪問を終えることができました。また訪問本番においては,1分単位のロジの緊張感を肌で感じることができ,外務省ならではの経験となりました。

青少年交流事業

(写真2)日本文化体験の様子 (日本文化体験)浴衣の着付け
(写真3)ホームステイの様子 (SNS発信)ホームステイ

 また私は,南西アジア課以外に対日理解促進交流室業務を兼務しており,「対日理解促進交流プログラム」を担当しています。このプログラムは,各国青少年を日本に招聘し,日本の政治,文化,歴史等に関する理解促進を図り,帰国後には日本の魅力を発信する役割を担ってもらおうという事業です。私はSAARC諸国(注)を担当しており,年間約150名の青少年を招聘しています。準備では,テーマ設定と視察先選定に苦労しました。交流事業は短期的には効果が見えにくいですが,国と国の友好関係の基盤となります。日本と他国の将来の交流を見据え,各国の方々が日本から何を学び,帰国後にどう自国ないし日本に貢献してもらえるか,課員や他省庁・団体の方々のご意見・ご協力をいただきながら選定作業を行ったことは大変勉強になりました。
((注)SAARC諸国:インド,ブータン,スリランカ,モルディブ,ネパール,バングラデシュ,パキスタン,アフガニスタン)

その他の交流事業

 他にも,学術交流,印メディア招へいや自治体間交流,また本年度からは日印文化交流も担当しています。インドとの幅広い交流が活発になる中,時には突飛な案件もありますが,多くは良好な日印関係を反映した前向きな案件であり,インドに精通している班員の意見を伺いながら業務に取り組んでいます。

3 外務省本省勤務で感じたこと,印象に残ったこと

 外務省の業務は,ハイレベルでハイスピードな対応を常に求められます。外務省の方々は,相手国との外交関係上の経緯や相手国の文化や考え方等,様々な要素を踏まえ,非常に早いスピードで業務を処理しており,正直なところ初めは驚愕しました。また,当課課長の口癖である「何か新しい事はできないの?」に象徴されるように,自国の利益を守るため,また相手国との関係を深化させるため非常に前向きに業務に取り組むことが当たり前になっています。多忙でつらく苦しい業務の中でも,膨大なインプットとアウトプットを継続し,仕事を前向きに捉える姿勢を見習いたいです。

4 おわりに

 これから残り約10か月の本省勤務,その後在外公館での勤務とまだまだ長い道のりが続きますが,このような機会を与えていただいている外務省と鹿児島県に心から感謝しつつ,貴重な経験と出会いを大切にして,残りの期間を過ごしていきたいと思います。

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