
核軍縮・不拡散に関する有識者懇談会
(第3回会合概要)
平成22年8月
8月24日,午後2時から,第3回核軍縮・不拡散に関する有識者懇談会が開催されたところ,概要以下のとおり。
1.出席者
(有識者側)黒澤大阪女学院大学教授(座長),秋山一橋大学准教授,梅林NPO法人ピースデポ特別代表,佐藤拓殖大学教授,吉田朝日新聞論説委員,石田秘書(岡田事務所)
(外務省側)岡田大臣,徳永大臣政務官,宮川軍科部長,佐野駐デンマーク大使(前軍科部長),本庄大臣秘書官(政務),石川大臣秘書官(事務),東政務官秘書官,鈴木軍軍長,武田軍軍補佐,渋谷軍軍事務官
2.議論の概要
(1)我が国軍縮・不拡散外交の中長期的課題
有識者側から,岡田大臣の問題提起を踏まえ,以下の諸点につき発言があった。
- ア 新START条約後の核軍縮
新START条約の発効に向けた動きと並行して,米露又は核兵器保有国間で新たな協議が開始される可能性も否定できず,その場合には,より多くの核兵器保有国をいかに取り込むかが重要な点。
- イ 核兵器の役割低減
核兵器の数及び役割が低減した状況では,核抑止力のより効果的な展開との観点からは,照準を多数ある軍事目標ではなく,特定の大都市・産業へ移行させるとの考え方も出てき得る。他方,国際規範を遵守する民主主義下の核兵器保有国にとって,倫理的立場からかかる考え方を採用することは困難であり,民主主義の縛りの低い国に比べ,核戦略上は不利な状況となることも考えられる。このような状況において,日本は,米国による拡大抑止における核抑止力の割合が減ぜられる中で,安全保障を維持することが求められるところ,米国との調整プロセスにいかに対応するかが重要。
- ウ NPT非締約国の扱い
NPT非締約国をいかに国際的な核軍縮・不拡散体制に取り込むかとの問題は一筋縄には行かないが,包括的核実験禁止条約(CTBT)や兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)等を通じて多国間交渉に取り込んでいくことが重要。本件は,9月の国連総会のマージンで開催される日豪共催核軍縮・不拡散に関する外相会合で立ち上げる新グループにおいても取り上げていくべきテーマ。
なお,核兵器の役割低減に関しては,米国による拡大抑止につき,日本としてどの程度までであれば,米国の核抑止力の低減を受け入れられるかを,米国関係者が気にしているとの印象。日本としての方針を考えるべき。
- エ 非核兵器地帯条約
- (ア) 既存の非核兵器地帯については,NPT運用検討会議における米国の姿勢の転換など前向きな動きあり。日本としても,例えば,これまでも支援を行ってきた中央アジア非核兵器地帯条約の前進(核兵器国による議定書署名・批准など)に向け,関係国の対話を促進する橋渡し役を務めてはどうか。
- (イ) 北東アジア非核兵器地帯については,北朝鮮の核問題を解決した後に議論するとの考え方ではなく,上記地帯の実現の際に北朝鮮の核問題も解決できると考えるべき。核軍縮を推進する世界的な気運を活かし,本件構想を議論していくべき。
以上の議論の最後に,岡田大臣より,既存の非核兵器地帯条約に対するスタンス及び北東アジア非核兵器地帯条約のメリットとデメリットについて,有識者の考えをまとめていただきたい旨発言があった。
(2)軍縮会議(CD)に関する有識者からの提言
- ア 有識者から,国連事務総長主催CDハイレベル会合に関する提言(PDF)
につき,特にFMCT及び消極的安全保証(NSA)について,CDでの議論の停滞を踏まえ,例えば少なくとも来年9月までに議論の進展が見られない場合,両テーマを各々CD以外の場で議論することを真剣に考えるべきである等の説明があった。
- イ また,有識者から,時限を切ってCDの中で真剣な議論を行い,失敗した場合にはCD外で交渉するというのが提言の発想である,従来通りの枠組みに固執している限り物事は進展しない,CDの外でのやり方について,有志国によるオタワ条約・オスロ条約方式(必ずしもNGO主導という意味ではない)でいいのではないかと思う,NPTも当初から関係国すべてを包含したわけではなく,仏中が加入したのは冷戦後であった旨指摘があった。
(3)その他
9月の国連総会のマージンで日本が豪州と共に開催する予定である核軍縮・不拡散に関する外相会合について,外務省側から,準備状況等を説明したのに対し,有識者側から,行動指向の新グループを目指すことが重要である旨の発言があった。
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