平成22年5月28日
5月3日から28日まで,ニューヨーク国連本部において,2010年NPT運用検討会議が開催された。議長はカバクチュラン・フィリピン国連常駐代表が務め,我が国から福山哲郎外務副大臣(首席代表),須田軍縮代表部大使,阿部外務省参与,小溝在ウィーン国際機関代表部次席大使他が出席した。また,中根在ウィーン国際機関代表部大使が主要委員会 III 議長を務めた。
(1)今次会議では,NPTの3本柱(核軍縮,核不拡散,原子力の平和的利用)それぞれについて,条約の運用のレビューと将来に向けた具体的な行動計画(要旨別添)を含む最終文書が採択された(前者については合意に至らず,議長の責任によるペーパーとしてテークノートされ,後者については会議の合意文書として採択)。
(2)今次会合の成果としては,(a)中東決議の実施に関する現実的な措置(例:2012年の国際会議開催を支持)につき合意したこと,(b)核軍縮につき「明確な約束」が再確認されたこと,(c)具体的な核軍縮措置につき核兵器国が2014年のNPT運用検討会議準備委員会に進捗を報告するよう核兵器国に要請したこと,(d)「核兵器のない世界」の達成に向けた直接的な言及が盛り込まれたことが挙げられる。
(3)他方,課題としては,イラン問題に関する言及が無く,かつ条約の遵守,脱退についての言及が弱かったこと,核不拡散措置につき小幅の進展に留まったこと等が挙げられる。
(4)最終文書の概要は以下のとおり。
(1)手続事項の採択に時間を費やした2005年NPT運用検討会議と異なり,同事項については早い段階で問題なく合意し,実質事項の議論に移ることができた。また,議長により最終文書案が早い段階で提示されるなど,前半は順調に推移した。
(2)文言交渉が本格化するにつれて,核兵器国と非核兵器国,先進国と途上国といった締約国や地域グループ間の立場の違いが鮮明になり,対立が先鋭化した。
(3)最終局面において,核軍縮,脱退・機構,IAEA追加議定書,中東決議といった大きな対立点について,複数の調整役を任命。各国が粘り強く交渉し,歩み寄った結果,最終文書の合意につながった。
(1)我が国からは,福山外務副大臣が首席代表として一般討論に出席し,5月4日に,日豪共同提案に盛り込まれた具体的な核軍縮措置,追加議定書普遍化の推進,北朝鮮やイランの核問題の解決,原子力の平和的利用のための国際協力の重要性を強調する演説を行った。また、福山副大臣は,潘基文国連事務総長,テ・ヒューヒュー・ニュージーランド軍縮・軍備管理担当大臣,スミス豪外相,マルティ・インドネシア外相,ホイヤー独外務副大臣,リャプコフ露外務次官及び天野IAEA事務局長と二国間会談を実施し,我が国は3本柱をバランスよく強化するために今次会議で最大限努力する旨述べ,我が国の提出した作業文書に対する支持を求めつつ,これら関係国・国際機関と緊密に協力していくことで一致。
(2)我が国は,日豪共同提案(核軍縮・不拡散),IAEA保障措置の強化,技術協力,軍縮・不拡散教育に関する4本の作業文書を提出し,多くの国から支持と評価を得て,文言交渉に対して有益な材料を提供した。また,核兵器国やNAM等の関係国との調整や,主要委員会及び補助機関の議長に対し,具体的な文言を提案する等,最終文書の合意に向けて貢献した。また,北朝鮮の核問題に関する強いメッセージが最終文書に反映されるよう,米国及び韓国と緊密に連携し,中国,露,議長と協議を行った。
(3)会議の最終段階で,岡田克也外務大臣のイニシアティブにより,豪,墺,独,韓国の外相及びNZの軍縮・軍備管理担当大臣とともに,今次会議での合意形成に向けて,国際社会の結束を呼びかける緊急閣僚声明を発出した。
(4)中根ウィーン国際機関代表部大使は,主要委員会IIIの議長として,各国と意見調整を行いつつ,原子力の平和的利用に関する同議長の報告書案を作成し,最終文書の作成に貢献した。
(1)最終文書合意の意義
(2)最終文書の合意に至った要因