核軍縮・不拡散

令和2年4月6日

1 中東非大量破壊兵器地帯構想とは

 中東地域における核兵器などの大量破壊兵器のない地帯(非大量破壊兵器地帯)の創設を目指す試み。

2 沿革

 1974年の国連総会においてエジプトが提案した中東非核兵器地帯構想を歓迎する決議が採択されて以来,毎年,この構想を実施するために必要な措置をとるよう求める決議が採択されてきている。1995年NPT運用検討・延長会議において,NPT寄託国である米国,ロシア及び英国の共同提案による中東地域における核兵器などの大量破壊兵器のない地帯(非大量破壊兵器地帯)の創設を目指す中東決議が採択された。同決議は,中東非大量破壊兵器地帯の設立に向け進展を得るため全ての中東諸国が適切な場において実際的な措置をとることに加え,全ての中東諸国が直ちにNPTに加入し,原子力施設をIAEAの保障措置下に置くことを求めている。2000年NPT運用検討会議において,同決議の重要性が再確認された。
 2010年NPT運用検討会議においては,国連事務総長及び共同提案国が2012年に全ての中東諸国が参加する会議を開催すること,国連事務総長及び共同提案国が任命するファシリテーターが同会議の開催を準備することなどが合意された。2010年運用検討会議から1年以上経た2011年10月にファシリテーターとして,ラーヤバ・フィンランド外務次官が任命された。同次官は国連及び共同提案国とともに,2013年10月から2014年6月にかけて,スイスにおける関係国による5回の非公式会合を行うなど,2015年NPT運用検討会議までの間,様々な協議を行ったが,本公式会合を開催できなかった。その間,2013年に開催された第3回準備委員会における本件に関する議論の際には,エジプトが2012年中に本会議が開催されなかったことへの不満を表明し,議場から退席した。
 2015年NPT運用検討会議においては,共同提案国が2010年の合意の基本的な考え方を継承する提案を行ったのに対し,アラブ連盟は,会議の開催は,全ての中東諸国の出席やコンセンサスを前提としないこと,共同提案国の関与をなくし,ファシリテーターを任命しないことに加え,国連事務総長が2015年NPT運用検討会議終了後180日以内に会議を開催することなどを提案した。その後,共同提案国の1か国であるロシアが,アラブ連盟の提案寄りの独自の提案を提出した。一方で,中東を含む地域問題について議論を行う補助機関IIの議長を務めたモロ・スペイン外務省軍縮・不拡散局次長は,アラブ連盟やロシアの提案に比べて2010年の合意に近い提案を行った。フェルーキ運用検討会議議長の最終文書案は,全ての中東諸国の出席を前提としないこと,実質事項についてコンセンサスとすること,共同提案国の関与を会議の準備・フォローアップの支援とすること,国連事務総長が2016年3月1日までに会議を開催するなどとされていた。最終日に,米国は,最終文書案の中東部分については,会議の議題や実施方法の決定がコンセンサスでないことや,会議開催の期限が現実的でない点などについてエジプトなどと協議したものの改善されなかったとして,最終文書案の採択に同意できない旨述べた。英国・カナダも同様の問題を指摘して同意できない旨述べ,最終文書は採択されなかった。
 2018年,国連総会において,2019年に中東非大量破壊兵器地帯について話し合うための国際会議の開催を国連事務総長に委託する決定案がアラブ・グループによって提出され,同決定案が採択された。2019年11月,同決定案に基づき,中東非大量破壊兵器地帯に関する国際会議がニューヨークの国連本部で開催された。

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