軍縮・不拡散

第5回包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議
(概要と評価)

平成19年9月20日

 9月17日から18日にかけて、ウィーンのホーフブルグ宮殿において第5回CTBT発効促進会議が開催されたところ、概要及び評価は以下のとおり。

1.概要

(1)1996年の署名開放以来、CTBTは、署名国が177か国、批准国が140か国に達しているが、発効要件国10か国(米、中、印、パキスタン、イスラエル、北朝鮮、イラン、インドネシア、エジプト、コロンビア(注))が未批准のため、未発効である。なお、2年前の前回会議以降、署名国が1か国、批准国がベトナム(発効要件国)を含め15か国増加した。

(注)印、パキスタン、北朝鮮は未署名。

(2)このような状況下で同条約の発効促進のために開催された今次会議には106か国の批准・署名国(うち4か国は外相)が参加した。会議は、プラスニック・オーストリア外相及びスタニョ・コスタリカ外相が共同で議長を務め、我が国からは木村仁外務副大臣が政府代表として参加した。なお、米、印、北朝鮮は不参加。

(3)我が国の政府代表演説は、(イ)唯一の被爆国としてCTBTの早期発効を重視している立場を強調し、(ロ)発効要件国10か国を含む未署名・未批准国に対して速やかな署名・批准を要請し、(ハ)昨年10月の北朝鮮の核実験を改めて非難し、安保理決議第1718号の速やかな実施を強く求めるとともに、(ニ)CTBTの発効促進および検証体制整備のために行ってきた我が国の取組を紹介した。

(4)中国は、CTBTの目標を支持、核実験モラトリアムを継続すること、条約を人民議会に提出済みであることに言及。

(5)北朝鮮の核実験については、多くの国が言及。特に、同核実験により、CTBTの早期発効及び検証体制整備の必要性が一層増した旨言及された。

(6)最終日の18日、会議参加国の総意として、以下を主要点とする最終宣言が採択された。

(イ)発効要件国10か国を含む条約の未署名・未批准国に対し、早期署名・批准を呼びかける。

(ロ)核実験モラトリアムが維持されるべき。

(ハ)北朝鮮の核実験については、(右を非難する)昨年国連総会CTBT決議を念頭に置きつつ、共同声明及び六者協議の枠組みにおいて合意された初期段階の措置を成功裏に実施することを通じ、核問題を平和的に解決することの必要性を強調する。同核実験は、CTBTの早期発効及び検証体制整備の緊急の必要性を照らし出した。

(二)CTBTの検証体制整備の重要性を強調する。

2.評価

(1)NPTを礎とする国際的な核軍縮・不拡散体制が深刻な挑戦に直面する中、CTBT批准国・署名国が、CTBTの早期発効や核実験モラトリアムの維持の重要性を含む最終宣言をコンセンサスで採択したことは、核実験の禁止が引き続き核軍縮不拡散体制の強化に向けた最優先事項の一つであるとの政治的なメッセージを国際社会に発信する上で意義深かったと考えられる。また、木村副大臣が出席し、ハイレベルでわが国としての代表演説を行ったことは、我が国のCTBT発効促進に関する一貫して積極的な姿勢を、内外に強く印象付けることとなり、大変有意義であった(日本国内でも報道された。)。

(2)しかし、上記発効要件国10か国が未批准である状況にかんがみると、CTBT早期発効への道のりは依然として険しい。CTBT発効促進のための地道な努力が継続されなければならない。

(3)検証体制整備のため、わが国として、引き続きこの分野で積極的に活動していくべきである。

(4)検証制度のデータを津波警報機関へ提供することの重要性が再確認された。民生面での条約の有用性を高めることにより、条約批准のインセンティブを高める効果もあり、引き続き積極的に推進していくことが望ましい。

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