演説

木村外務副大臣演説

第5回包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議
木村外務副大臣演説

平成19年9月17日、於:ウィーン

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議長、

 はじめに、日本政府を代表して、第5回CTBT発効促進会議議長に就任されたプラスニック・オーストリア外相及びスタニョ・コスタリカ外相に対し、心よりお祝い申し上げます。また、今次会議のホスト国であるオーストリア政府による支援に対し謝意を表明いたします。

(CTBTの核軍縮・不拡散における意義)

議長、

 我が国は、包括的核実験禁止条約(CTBT)を、核兵器不拡散条約(NPT)を礎とする国際的核不拡散体制を支え、核兵器のない世界を実現するための現実的かつ具体的措置として捉え、その早期発効を極めて重視しております。本年4月から5月にかけて、当地において我が国の天野ウィーン代表部大使の議長の下、NPT第1回準備委員会が開催され、2010年NPT運用検討会議に向けて成功裡にスタートを切ることができました。我が国は、2010年NPT運用検討会議に向けての取組を強化していく観点からもCTBTの早期発効に精力的に取り組むことが重要と考えます。

(CTBTを取り巻く現状に対する評価)

議長、

 CTBTは軍縮会議における長年の議論・交渉を経て、1996年9月に国連総会において採択された後に署名開放されましたが、残念ながらその時から11年が経過した現在においても条約が発効しておりません。しかしながら、署名国が177か国、批准国が140か国になったという事実は核実験禁止が国際社会に幅広く受け入れられる規範としての役割を果たしつつあることを示すものであります。

 このような状況において、昨年10月に北朝鮮が公表した核実験実施は、核実験禁止を求める国際社会全体の意思及びCTBTに対する重大な挑戦であると言えます。我が国は北朝鮮の核実験を改めて非難し、北朝鮮が安保理決議第1718号を速やかに実施することを強く求めます。最近、六者会合を通じた朝鮮半島の非核化に向けた努力がおこなわれており、「初期段階の措置」として、北朝鮮により、寧辺の核施設の活動が停止され、IAEAがこの監視・検証を実施していることは歓迎される動きです。しかしこれは、あくまで2005年9月の六者会合共同声明の完全な実施に向けた第1歩に過ぎず、今後「次の段階」の措置に関する合意を早期に達成し、迅速に行動に移すことが重要です。そして、共同声明にいう北朝鮮の「全ての核兵器及び既存の核計画」の放棄の実現が不可欠であることを強調したいと思います。我が国としては、引き続き、拉致、核・ミサイル等の諸案件を解決し、国交正常化を実現するとの観点から、六者会合を通じた核問題の平和的解決に積極的に取り組んで参ります。

 また、核実験モラトリアムが維持されることが重要であり、今後、如何なる国によっても二度と核実験が行われないよう、唯一の被爆国である我が国としては、国際社会に強く訴えます。

(CTBTの発効に向けた我が国の取り組み)

議長、

 我が国はこのホーフブルグ宮殿において8年前に開催されました第1回発効促進会議の議長を務めた後、初代の「調整国」として発効促進活動に積極的に取り組みました。その後もあらゆる機会を捉えてCTBT早期発効のため発効要件国への働きかけを行っております。我が国は、CTBT未批准・未署名の国、とくに発効要件国10か国に対して改めて速やかな署名・批准を強く求めます。我が国は、これまでの二国間の働きかけに加え、本年の第1回NPT準備委員会の前に、改めてこれらの10か国に対して早期批准・署名の働きかけを行いました。また、本年2月及び7月に、発効要件国であるコロンビア、インドネシアの両国からCTBT批准に影響力を有する関係者を招聘して我が国のCTBT関連施設視察や意見交換の機会を作り、両国に早期批准を働きかけました。

 発効促進に向けてのモメンタムを維持するとの観点から、発効要件国でない署名国・批准国を増やしCTBTの普遍性を高めることも重要であり、我が国は、本年8月、そのような国に対して署名・批准を働きかけました。また、世界で有数の地震国である我が国は、JICA地震観測研修への未署名・未批准国の専門家の参加を通じてCTBTの重要性に対する理解の促進に努めております。

 我が国としては、CTBTの一日も早い発効を目指し、今後も2年ごとに発効促進会議を開催し、発効に向けた機運を維持していくべきと考えます。

議長、

 我が国は、CTBTO準備委員会により国際監視制度(IMS)施設の構築が順調に進んでおり、既に200以上の施設が認証されたことを歓迎するとともに、CTBTO準備委員会事務局の努力を高く評価しております。先般の北朝鮮による核実験の際にもIMSの有用性が確認されましたが、かかる取組は、CTBTの発効に向けたモメンタムの維持にも貢献していると言えます。

 我が国も、国内のIMS施設の整備を積極的に進めております。本年2月には沖縄放射性核種監視観測所が認証された他、昨年末には既に建設済みの高崎観測所に希ガス監視装置が設置され、放射性核種監視施設の整備は完了しましたが、残りのIMS施設の認証に向けて引き続き尽力します。また、我が国は核実験探知のためのデータ解析を行う国内データセンター整備にも努力しております。我が国の国内データセンターは、核実験探知能力の向上のための協力として知見等の提供をCTBTO準備委員会等に対して随時行っておりますが、本年11月にはCTBTO準備委員会事務局との協力により我が国において微気圧振動技術ワークショップを開催する予定です。

 津波警報へのIMSデータの利用もCTBTの意義を国際社会に浸透する上で重要であります。我が国は、昨年11月のCTBTO準備委員会において津波警報への貢献の原則及びデータ転送のための手続きに合意されたことを歓迎いたします。日本の北西太平洋津波情報センターでは、現在実証実験として転送されている同データを活用し、北西太平洋域に対する津波警報の高度化を図っております。

(結語)

議長、

 核実験禁止は核軍縮・不拡散アジェンダの中でも長きに亘り重要な地位を占めてきました。我が国としては、この機会に改めてCTBT早期発効の重要性を強調するとともに、唯一の被爆国として核廃絶という国民及び人類の悲願の実現に向けてリーダーシップを発揮していく所存であります。

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