核軍縮・不拡散
包括的核実験禁止条約
(CTBT:Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty)
令和3年3月1日
1 概要
- (1)宇宙空間、大気圏内、水中、地下を含むあらゆる空間における核兵器の実験的爆発及び他の核爆発を禁止する。
- (2)この条約の趣旨及び目的を達成し、この条約の規定の実施を確保する等のため、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)を設立する。
- (3)条約の遵守について検証するために、国際監視制度、現地査察、信頼醸成措置等から成る検証制度を設ける。
2 意義
- (1)核兵器の開発あるいは改良を行うためには、核実験の実施が必要であると考えられており、CTBTは、従来の部分的核実験禁止条約(PTBT)が禁止の対象としていなかった地下核実験を含む、すべての核実験を禁止するという点において、核軍縮・不拡散上で極めて重要な意義を有する。
- (2)わが国はCTBTを、国際原子力機関(IAEA)の保障措置と並び、核兵器不拡散条約(NPT)を中核とする核不拡散・核軍縮体制の不可欠の柱として捉え、その発効促進を核軍縮・核不拡散分野の最優先課題の一つとして重視している。
3 現状(令和3年2月現在)
CTBTが発効するためには、特定の44か国(発効要件国(注))すべての批准が必要とされている(第14条)。しかし、現在のところ、米、印、パキスタン等、一部の発効要件国の批准の見通しはたっておらず、条約は未発効。
- (1)署名国185か国、批准170か国
- (2)発効要件国44か国のうち、署名国41か国、批准国36か国
発効要件国のうち、
署名済・未批准国(5か国):米国、中国、エジプト、イラン、イスラエル
未署名・未批准国(3か国):北朝鮮、インド、パキスタン - (注)条約の附属書二に掲げられている。ジュネーブ軍縮会議の構成国であって、IAEA「世界の動力用原子炉」の表に掲げられている国。
4 経緯
- (1)部分的核実験禁止条約(PTBT)締結以後、地下核実験を含むすべての核実験を禁止することが国際社会の大きな軍縮課題の一つとされてきた(注)。そのための包括的核実験禁止条約(CTBT)の作成に向けて、1994年1月からジュネーブ軍縮会議の核実験禁止特別委員会において、交渉が本格的に開始された。軍縮会議における交渉は、2年半にわたって行われたが、インド等の反対によって同条約案をコンセンサス方式で採択することはできなかった。
- (2)しかし、CTBT成立に対する国際社会の圧倒的な支持と期待を背景として、オーストラリアが中心となり、ジュネーブ軍縮会議で作成された条約案を国連総会に提出し、1996年9月、国連総会は圧倒的多数をもって同条約を採択した(反対:インド、ブータン、リビア。棄権:キューバ、シリア、レバノン、タンザニア、モーリシャス)。
- (3)我が国は、1996年9月24日(日本時間同)、この条約に署名し、1997年7月8日(日本時間9日)、国連事務総長に対し、この条約の批准書を寄託した。
- (注)「大気圏内、宇宙空間及び水中における核兵器実験を禁止する条約」(いわゆる「部分的核実験禁止条約(PTBT)」。1963年モスクワで作成)は、既に、地下を除く核兵器の実験的爆発及び他の核爆発を禁止していた。
5 検証制度
CTBTは、条約の遵守について検証するため、(1)国際監視制度(IMS)、(2)協議及び説明、(3)現地査察、(4)信頼醸成についての措置からなる検証制度を定めている。
- (1)「国際監視制度(IMS)」とは、世界337か所に設置された4種類の監視観測所(地震学的監視観測所(注1)、放射性核種監視観測所(注2)、水中音波監視観測所(注3)及び微気圧振動監視観測所(注4))及び16の放射性核種監視実験施設により、CTBTにより禁止される核兵器の実験的爆発又は他の核爆発が実施されたか否かを監視する制度である。2020年2月の段階で、309か所(約91%)が建設を完成しており(認証済み施設は300か所)、監視の結果得られたデータは、ウィーンに設置される国際データセンターに送付され、処理される。
- (注1)地震波を観測することにより、核爆発を監視する
- (注2)大気中の放射性核種を観測することにより、核爆発を監視する
- (注3)水中(海中)を伝搬する音波を観測することにより、核爆発を監視する
- (注4)気圧の微妙な振動を監視することにより、大気中の核爆発を監視する
- (2)「協議及び説明」とは、核兵器の実験的爆発又は他の核爆発の実施を疑わせる事態が発生した場合、締約国が他の締約国との間で、CTBTOとの間で、または CTBTOを通じて、問題を明らかにし、解決するための制度である。この制度は、疑いをもたれた締約国による説明を含む。
- (3)「現地査察」とは、条約の規定に違反して核実験が行われたか否かを明らかにし、また違反した可能性のある者を特定するのに役立つ情報を可能な限り収集することを目的として、派遣査察団により実施される。「現地査察」の実施は、51か国の執行理事会の理事国のうち、30か国以上の賛成により承認される。
- (4)「信頼醸成措置」とは、鉱山などで実施されている爆発(化学爆発)を核実験または他の核爆発と誤認しないために、締約国が、そのような爆発の実施についてCTBT機関の内部機関である技術事務局に通報するなどの措置をいう。