軍縮・不拡散

第5回包括的核実験禁止条約(CTBT)フレンズ外相会合
(概要と評価)

平成22年9月24日

(写真)第5回包括的核実験禁止条約(CTBT)フレンズ外相会合に出席する前原外務大臣

 9月23日,ニューヨークの国連本部において第5回包括的核実験禁止条約(CTBT)フレンズ外相会合(参考)が開催されたところ,概要及び評価は以下のとおり。

1.概要

  1. (1) 今次会合には,共催国である我が国,オーストラリア,オランダ,カナダ,フィンランド,フランス,モロッコを含め,72か国が参加(このうち24か国の外相が出席)。ラッド豪外相が議長を務め,我が国からは前原外務大臣が政府代表として参加のうえ,政府代表演説を行った。
  2. (2) 多くの政府代表が米国及びインドネシアによる批准に向けた積極的な姿勢を歓迎する旨表明するなかで,米国政府代表はオバマ大統領のコミットを再確認すると同時に,米国の批准だけではCTBTは発効しない旨指摘し,他の発効要件国に対し署名・批准を呼びかけた。
  3. (3) 北朝鮮による核実験については,これを非難すると同時に,CTBT検証制度の有効性を証明したと評価する声が聞かれた。
  4. (4) 潘基文国連事務総長は,8月に広島と長崎を訪問したことに言及の上,CTBT早期発効のためには政治的な意思と行動が必要であり,未署名・未批准国は他国を待たずに自ら動くよう呼びかけた。
  5. (5) 潘基文国連事務総長の演説の後,キャノン・カナダ外相が未署名・未批准国,特に発効要件国に対する早期署名・批准の呼びかけや核実験モラトリアム維持の重要性等を盛り込んだ閣僚共同声明案を提示し,採択された。

2.前原大臣による政府代表演説のポイント

  1. (1) 「核兵器のない世界」に向けた機運を維持していくためには,力強い政治的意思が不可欠であるとし,「核兵器のない世界」に向けた移行期戦略として「核リスクの低い世界」を目指すべく,志を共有する他の国々の外相と共に新たなグループを立ち上げたことを表明。
  2. (2) CTBTはNPT体制を支える不可欠な要素であると同時に,NPT非締約国を国際的核軍縮・不拡散体制に取り込んでいく上での重要な手段であることを強調。
  3. (3) この1年間の我が国の発効要件国に対する取組を紹介の上,すべての発効要件国の政治的指導者が,英断により早期署名・批准に向けたリーダーシップを発揮することを呼びかけ。また,条約発効までの間,核実験モラトリアムを継続することを強く要求。

3.評価

  1. (1) 今次会合は,過去4回の会合と異なり,被招待国を批准国から署名国に広げて開催。未批准国のうち米及びイラクが出席し,共同声明を支持した上で,批准に向けた積極的な姿勢を表明した。
  2. (2) NPT運用検討会議において最終文書の合意に至ったことや米露による新START条約署名により核軍縮・不拡散に向けた機運が高まっている今こ そ,CTBT早期発効を現実のものとすべく力を合わせる時だとする意見が相次いだ。
  3. (3) 我が国は,本会合の共催国として準備段階から主導的役割を果たした他,前原外務大臣の代表演説において,我が国がCTBTの早期発効を「核兵器のない世界」を実現するための最も重要で実践的な第一歩として極めて重視していることを強調の上,未批准国,特に発効要件国に対し早期署名・批准に向けたリーダーシップを発揮するよう呼びかけると同時に,我が国としてCTBT早期発効に貢献すべくいかなる努力も惜しまないとの考えを明らかにすることができた。
(参考) フレンズ外相会合
  1. 本会合はCTBT発効促進会議(2年に1度。外相レベル)が開催されない年に,CTBT発効促進の機運を維持・強化するために開催され,会議の成果として閣僚共同声明を発出してきている。2002年,日豪蘭が共催国となり第1回CTBTフレンズ外相会合を開催。これまでに計4回開催。
  2. CTBTフレンズとは,主に包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)の所在するウィーンを中心に,CTBT発効促進活動を調整・推進するため,日本・オーストラリア・オランダが結成した国家グループ。現在は右3か国の他,カナダ,フィンランド,及び本年における発効促進調整国(第6回発効促進会議の共同議長国)であるフランス・モロッコの計7か国がメンバーとなっている。
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