人権外交

(International Humanitarian Fact-Finding Commission, IHFFC)

令和元年8月14日

1 概要

 国際事実調査委員会は,ジュネーヴ諸条約及び第1追加議定書の違反行為として申し立てられた事実を調査等することにより,国際人道法の履行を確保・促進する目的で,1991年6月25日,同追加議定書第90条1(a)及び(b)に基づき発足した。事務局の所在地は,スイスのベルン。
 我が国は,2004年に同追加議定書に加入した際に,同委員会の権限を認める旨の宣言を行い,国際人道法の履行を強化することに努めている。同様の宣言をしている国は,現在77か国(2019年7月時点)。
 また,同委員会は,任期5年の15名の委員から構成され,我が国からは,古谷修一早稲田大学大学院法務研究科教授が委員として活動している(任期2017年~2022年)。これまで,医者,軍事専門家,外交官,国際法学者等の経験を有する者が委員に就任している。

2 活動内容

 国際事実調査委員会は,第1追加議定書第90条2(c)及び(d)に基づき,次の活動を行う権限を有する。

  • (1)ジュネーヴ諸条約及び同追加議定書に定める重大な違反行為その他の同諸条約又は同追加議定書に対する著しい違反であると申し立てられた事実を調査すること。
  • (2)あっせんにより,同諸条約及び同追加議定書を尊重する態度が回復されることを容易にすること。
  • (3)その他の場合には,紛争当事者の要請がある場合であって,他の関係紛争当事者の同意がある時にのみ調査を行う。

3 具体的な活動例

 2017年4月,国際事実調査委員会は,ウクライナの非政府管理区域において,欧州安全保障協力機構(Organization for Security and Co-operation in Europe, OSCE)の特別監視ミッション(Special Monitoring Mission, SMM)のパトロール中にOSCEの装甲車が爆発に巻き込まれ,1名の救急隊員が死亡,2名のパトロール要員が負傷した事件につき,OSCEの要請に基づき,独立した法医学調査を実施。
 2017年9月に発表された報告書では,SMMはほとんど当該道路を使用しないこと等から,SMMが意図されたターゲットであった可能性は否定する一方,爆発は対戦車地雷によるものだったとし,民間の交通に使用される道路にそのような地雷を設置することは,国際人道法上,無差別かつ違法な地雷の使用であると結論付けた。

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