国際組織犯罪に対する国際社会と日本の取組

令和3年10月20日

1 日本の人身取引対策

 近年、グローバル化の一層の発展や、経済格差の拡大等に伴って、人身取引は国境を越える深刻な脅威となっています。我が国は、人身取引は重大な人権侵害であるとの認識の下、平成16年(2004年)に「人身取引対策に関する関係省庁連絡会議」を設置するとともに、「人身取引対策行動計画」を策定し、この計画に基づく各種対策によって大きな成果を上げました。一方で、人身取引の手口の巧妙化・潜在化など、人身取引をめぐる情勢の変化を踏まえ、平成21年(2009年)12月には行動計画を改定し、平成26年(2014年)12月にはこれを再改定した「人身取引対策行動計画2014」を策定しました。新しい行動計画には、これまで以上に関係省庁が連携して人身取引対策を推進するため、官房長官を議長とし、各閣僚から構成される「人身取引対策推進会議」の立ち上げについて明記され、平成27年5月には同会議の第1回会合、平成28年5月には第2回会合が開催されました。

 外務省は、新しい行動計画に基づき、外国人被害者の帰国・社会復帰支援や、東南アジア諸国を中心とした能力構築支援などを通じ、人身取引の撲滅に向けた取組において、国際的に重要な役割を果たしています。

 平成27年における国内の人身取引の被害状況及び政府の人身取引対策については、「人身取引対策に関する取組について(PDF)別ウィンドウで開く」でご確認いただけます。

2 人身取引根絶のための国際的な貢献

(1)諸外国政府等との情報交換:政府協議調査団の派遣

 人身取引対策に関する政府協議調査団は、平成16年12月に策定された「人身取引対策行動計画」(平成21年12月改定、平成26年12月再改定)に基づき、人身取引被害の発生状況の把握・分析及び諸外国政府等との情報交換を行うことを目的として、我が国に多くの被害者を送り出している国々や、我が国に還元できる人身取引対策の取組を実施している国々に、人身取引対策関係省庁から構成される調査団を派遣するものであり、平成16年度から継続して延べ27の国・地域に派遣が行われています。

 最近では、令和2年3月に米国(マイアミ、ワシントンD.C.)へ派遣し、人身取引対策に取り組む現地警察やNGOとの議論、シェルター視察を実施したほか、米国務省と日米協議を実施し、我が国における人身取引対策の取組状況の説明等を行いました。近年の主な派遣先は以下のとおりです。

  • 平成24年12月:チェンマイ(タイ)
  • 平成26年2月:フィリピン
  • 平成27年1月:バンコク(タイ)
  • 平成28年1月:台北(台湾)
  • 平成28年12月:ローマ(イタリア)
  • 平成30年2月:ハーグ(オランダ)
  • 平成31年3月:ロサンゼルス、ワシントンD.C.(米国)
  • 令和2年3月:マイアミ、ワシントンD.C.(米国)

(2)外国人人身取引被害者の帰国支援等の充実:IOM(国際移住機関)を通じた人身取引被害者の帰国・社会復帰支援事業

 日本は、IOMが実施する「人身取引被害者の帰国・社会復帰支援事業」を平成17年より継続して支援しています。平成27年度には約12万ドルを拠出し、日本で人身取引被害者として認知され、母国への帰国を希望する外国人被害者に対する帰国支援及び帰国後の社会復帰支援(就労・職業支援、医療費の提供等)を行いました。平成17年5月1日以降平成28年5月1日までに、計276名の外国人人身取引被害者が安全に母国に帰国しています。

(3)ODAを通じた能力構築支援

 日本は、自ら設置を主導した国連人間の安全保障基金や国際機関への拠出をはじめ、技術協力、無償資金協力等を通じ、人身取引対策に資する支援を積極的に実施しています。近年の人身取引対策を含む支援の一例は以下のとおりです。

ア 国連人間の安全保障基金(UN Trust Fund for Human Security(UNTFHS))

 平成25年度においては、国連薬物・犯罪事務所(UNODC)、国連開発計画(UNDP)、国連人口基金(UNFPA)、ラテンアメリカ・カリブにおける国連平和・武装解除・開発のための地域センター(UNLIREC)及び汎米保健機構(PAHO)が実施し、人身取引やジェンダーに基づく暴力の脅威に対する青少年の脆弱性の軽減等を目的とする「ペルーにおける平和的共存の促進を通じた人間の安全保障及びコミュニティの強靱性の強化」事業に対し、約225万ドルを支援しました。さらに、UNDP、国連児童基金(UNICEF)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、UNFPA、国連世界食糧計画(WFP)及び国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が実施し、非合法武装勢力による人身取引の防止等を目的とする「エクアドルの北部境界地帯における人間の安全保障アプローチによる平和と開発のための地域の能力強化」事業に対し、約210万ドルを支援しました。

イ UNODC(国連薬物・犯罪事務所)が管理する犯罪防止刑事司法基金(Crime Prevention and Criminal Justice Fund(CPCJF))

 平成24年度においては、タイの法執行職員の能力向上を目的とする「人身取引対策Eラーニング用教材のタイ語への翻訳プロジェクト」に約5万ドルを拠出しました。また、平成26年度においては、東南アジア地域の人身取引に係る調査・評価等を行う「東南アジア地域における女性や女児に特化した人身取引対策支援プロジェクト」に約10万ドル、西アフリカにおける人身取引に係る体制強化及び法執行機関能力強化を目的とする「リベリア及びコートジボワールの人身取引対策能力向上を通じた西アフリカの人間の安全保障促進プロジェクト」に37万ドルを拠出しています。27年度には、カンボジア、ラオス、ベトナムにおいて、児童の性的搾取及び児童の人身取引に対する法執行機関の能力向上を目的とするプロジェクトを支援するため、10万ドルを拠出しています。

ウ 無償資金協力

 平成24年度においては、主に人身取引被害者への保護強化を目的に、ミャンマーにおける「カレン州ミャワディ地区人身取引被害者シェルター建設計画」及び「タニンダリー地域コータウン地区人身取引被害者シェルター建設計画」実施のため計約19万ドルを拠出し、タイにおける「脆弱な女性や子どもを人身取引から守るための女性支援センター設置計画」実施のため、300万バーツ(約798万円)を支援しました。さらに、平成26年には紛争解決・平和構築無償資金協力を通じ、ナイジェリアの人身取引法執行機関の能力強化を目的に、「人身取引との闘いに対する支援計画」に50万ドルの拠出を行うとともに、平成27年には、「インド洋における漂流者問題に対する緊急無償資金協力」として、インド洋を漂流する非正規移民に対するシェルターの提供、保健・栄養等に係る人道支援を行うため、UNHCR及びIOMを通じ、総額350万ドルの支援を決定しました。

エ 技術協力

 平成21年3月から平成26年3月まで、タイ国政府の中央/地方の多分野協働チーム(MDT:Multi-Disciplinary Teams)を通じて、タイの人身取引被害者に対する効果的な保護・自立支援を強化することを目標に、「人身取引被害者保護・自立支援プロジェクト」を実施しました。ミャンマーでは、平成24年6月から平成27年6月まで、被害者保護・支援に直接携わる実務者の能力向上を目指し、「人身取引被害者自立支援のための能力向上プロジェクト」を行いました。ベトナムでは、平成24年7月から平成27年7月まで、人身取引被害予防及び被害者復帰支援を図るべく、人身取引対策ホットラインの運営システムの整備を通じた人身取引対策に係る体制整備への支援として、「人身取引対策ホットラインにかかる体制整備プロジェクト」を実施しました。

(4)国際社会における協力・取組

 日本は、特にアジア太平洋地域における人身取引に係る国際的な協力枠組みに積極的に参画しています。そのうち主な取組は以下のとおりです。

ア 「テロ及び国境を越える犯罪と闘う協力のための日・ASEAN共同宣言(The ASEAN-Japan Joint Declaration For Cooperation to Combat Terrorism and Transnational Crime)」

 日本及びASEAN各国の首脳は、平成26年11月に開催された「第17回日・ASEAN首脳会議」において、「テロ及び国境を越える犯罪と闘う協力のための日・ASEAN共同宣言」を採択しました。同宣言では、人身取引は8つの優先協力分野の1つとして掲げられており、主にその「防止」「法執行」「被害者の保護」「パートナーシップ」の4項目について日・ASEAN間で協力を強化することが盛り込まれています。

イ 人身取引対策に関する日タイ共同タスクフォース

 平成18年5月、日タイ政府間で、人身取引の防止、法執行及び被害者の保護の3分野で協力を行うため、「人身取引対策に関する日タイ共同タスクフォース(Japan-Thailand Joint Task Force on Counter Trafficking in Persons(JT-CTP))」を立ち上げました。平成27年1月には、第6回目となる会合を開催し、人身取引の撲滅に向け、これまで以上に情報交換を密に行っていくことに合意しました。

ウ バリ・プロセス

 日本は、インドネシアと豪州の共催による「人の密輸・人身取引及び関連する国境を越える犯罪に関する地域閣僚会議」のフォローアップ・プロセス(「バリ・プロセス」)に積極的に参画しています。特に、同プロセスのウェブサイトの維持・管理及び掲載情報の整備を行うIOM(国際移住機関)に対する毎年1万ドルの拠出を通じ、関係国間の情報共有の向上に努めています。

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