平成21年9月26日
9月23日、ニューヨークにおいて、我が国主催、世界銀行、国連食糧農業機関(FAO)、国際農業開発基金(IFAD)及び国連貿易開発会議(UNCTAD)共催により、「責任ある国際農業投資の促進に関する高級実務者会合」(Roundtable on Responsible International Investment in Agriculture)を開催したところ、概要と評価以下のとおり(平松経済局審議官(議長)及び農水省林田審議官が出席)。
(1) 本会合は、世界的な食料価格高騰を契機として、途上国への大規模な国際農業投資が増加し、これが「新植民地主義」あるいは「農地争奪」として国際社会の注目を集める中、我が国がG8ラクイラ・サミット等において提案した「責任ある国際農業投資」を具体化するため、国連総会のフリンジにおいて開催されたもの。「責任ある国際農業投資」とは、大規模な国際農業投資によって生じ得る負の影響を緩和しつつ、投資の増大によって投資受入国の農業開発を進め、受入国政府、現地の人々、投資家の3者の利益を調和し、最大化することを目指すアプローチ。
(2) 本会合には、以下の関係国・機関より70名以上が参加し、活発な議論が行われた。
【政府】豪州、ベラルーシ、ブラジル、ブルガリア、カメルーン、カナダ、中央アフリカ、コモロ、デンマーク、エジプト、フランス、ドイツ、ガーナ、バチカン、インド、インドネシア、イタリア、日本、ルクセンブルク、モルドバ、パキスタン、パプアニューギニア、サントメ・プリンシペ、サウジアラビア、南アフリカ、韓国、スウェーデン、スイス、タンザニア、英国、米国
【国際機関】世銀、FAO、IFAD、UNCTAD、WFP、EU、OECD、IFPRI(International Food Policy Research Institute)、Global Donor Platform for Rural Development
【市民社会】IISD(International Institute for Sustainable Development)、International Land Coalition
【民間セクター】Rabobankインターナショナル、Yaraインターナショナル
(3) 会合冒頭、平松審議官より、主催者挨拶として、会合開催の趣旨、「責任ある国際農業投資」の考え方、我が国がこれを提唱する理由等につき説明(平松審議官挨拶のポイント(PDF))。その後、ディウフFAO事務局長、ヌワンゼIFAD総裁、ジョゼット・シーランWFP事務局長、オカンジョ=イウェアラ世界銀行専務理事、アホイ・ガーナ食糧農業大臣、フルガムUSAID(米国国際開発庁)長官代行より、我が国のイニシアティブに対する賞賛とともに、各国・機関の国際農業投資に関する考え方・取組や本会合への期待等について発言があった。
(4) 引き続き行われた第一セッション「国際農業投資の増大傾向がもたらす機会とリスクへの国際的対応に関する提案」では、共催の国際機関よりプレゼンテーションが行われた。FAOからは、問題点の整理及び投資国、投資受入国及び国際社会がとるべき行動についてのプレゼンテーション(資料(PDF))、UNCTADからは、本件に関する国際的な知見を結集するためのメカニズム(Knowledge platform and toolkits)についての提案(資料(PDF)
)、世銀からは、責任ある国際農業投資を促進するための原則の提案があった(資料(PDF)
)。
(5) 第二セッション「責任ある国際農業投資を促進するための行動原則、国際的枠組み、グッドプラクティス」では、我が国含め各国・機関の代表がラウンドテーブル形式で活発に議論を行い、本件に関する経験・知見の共有がはかられるとともに、行動原則や国際的枠組みのあり方についての意見交換が行われた。この結果、「責任ある国際農業投資」の考え方への支持が確認されるとともに、行動原則及び国際的枠組みの構築に向けて全ての関係者が協働していくこと等が合意された。また、世銀が提案した原則が、今後の共同作業のベースとなるものとして承認された。
(6) 最後に議長(平松審議官)より、本会合における議論及び合意事項の概要につき取りまとめの発言があり、これを元に議長サマリーを発出することが承認された(議長サマリー本文(PDF)、仮訳(PDF)
)。
(1) 本会合の開催日が国連総会一般討論演説の初日と重なったにもかかわらず、30以上の政府の高級実務者及び3人の国連機関の長を含む関係機関ハイレベルの出席が得られたことは、本会合のテーマへの国際的関心の高さを示した。特に、投資国側よりサウジアラビア農業省副大臣、韓国農林水産食料部局長、投資受入国側よりガーナ食糧農業大臣、インドネシア経済大臣調整府次官の出席が得られたことは有意義であった。全ての発言者より、我が国のイニシアティブに対する賞賛・支持が表明され、今後我が国が国際農業投資を始め食料安全保障に関して活動していく上での大きな資産となった。
(2) この問題に関して政府の代表者を含む国際会議が開かれたのは今回が初めてであったが、「責任ある国際農業投資」の考え方が共有され、関係者が行動原則及び国際的枠組みの構築に向け協働していくことが合意されたことは高く評価できる。これにより、「農地争奪」による負の影響を防ぎ、投資国・投資受入国の双方が裨益する持続的な農業開発の実現に向けた重要な第一歩が踏み出されたと言える。本会合の総意を議長サマリーのかたちで取りまとめたことは、今後の関連活動に道筋をつける成果である。
(3) 本会合の成果は、10月の世銀年次総会、欧州開発デー、11月のFAO食料サミット、12月のOECD・UNCTAD共催イベント(Global Forum on International Investment)等でフォローアップされ、特に今後6ヶ月間に可能な限りの進展を得るべく関係者が努力を結集することとなっており、早期の具体的成果が期待される。
Adobe Systemsのウェブサイトより、Acrobatで作成されたPDFファイルを読むためのAcrobat Readerを無料でダウンロードすることができます。左記ボタンをクリックして、Adobe Systemsのウェブサイトからご使用のコンピュータのOS用のソフトウェアを入手してください。