平成20年4月
(1)4月21~22日、イタリアのローマにおいて、第11回国際エネルギー・フォーラム(IEF:International Energy Forum)が開催された(主催国はイタリア、共催国はメキシコ及びインド)。我が国からは、21日(議題1:エネルギー資源の利用可能性の強化、議題2:エネルギー関連投資の確保)に甘利経済産業大臣が、22日(議題3:持続的なエネルギーの未来に向けて、議題4:世界のエネルギー安全保障のためのIEF)に小池外務大臣政務官が出席した。(議題3での小池外務大臣政務官の発言はこちら)
(2)主な出席者は、伊ベルサーニ経済振興大臣、独グロース経済・技術大臣、蘭ファン・デル・フーフェン経済大臣、オーストリア・バルテンシュタイン経済労働大臣、露フリステンコ産業エネルギー大臣、サウジアラビア・ナイミ石油・鉱物資源大臣、ア首連アル・ハミリ・エネルギー大臣、カタール・アティーヤ副首相兼エネルギー鉱業大臣、イラン・ノーザリ石油大臣、エジプト・ファハミ石油大臣、ベネズエラ・ラミレス・エネルギー石油大臣、田中IEA事務局長、エル・バドリOPEC事務局長等、74ヵ国の閣僚級及び13国際機関の代表が参加した。
(3)なお、国際エネルギー・フォーラムは、1991年のフランスでの第1回開催以降、石油等のエネルギー生産国と消費国がエネルギー政策に関する情報・意見交換を行うことにより両者の関係促進を図ることを目的として、2年に1度開催される閣僚級の対話の場。前々回は2004年5月にオランダのアムステルダムで、前回は2006年4月にカタールのドーハで開催された。
(1)今次会合では、「地球規模の課題に対応するためのエネルギー対話(Energy Dialogue to Respond to Global Challenges)」を会合全体のテーマとして掲げ、会合の結果、以下の点について出席者のコンセンサスが得られた。
(イ)石油価格の高騰と価格変動の不安定性は、世界経済を更に後退させる要因となっており、また、市場のシグナルをより難しく複雑にしている。実需に見合わない価格の高騰及びエネルギー市場の不安定化は、産消双方にとってメリットとはならない。相互依存が増す国際社会において、IEFを通じた生産国・消費国の協力と効果的な対話を通じて、産消双方がそれぞれの責任を果たすことが重要。
(ロ)石油及び天然ガスの需給の不確実性は、生産及び投資の決定に重大な影響を与えており、エネルギー市場の透明性を向上させることが、市場不安を縮小し、エネルギー需要見通しを立て易くし、投機の余地を縮小し、また、長期的なエネルギー政策の策定を容易にする。IEFが調整を行っている共同石油データ・イニシアティブ(JODI)の一層の推進を支持。
(ハ)エネルギー源の多様化は重要であるが、石油、天然ガス等の化石燃料は、将来においても引き続き主要なエネルギー源であり続けるとの見通しから、需要に見合う供給を確保するために新たな投資が必要。
(ニ)エネルギー政策は、気候変動問題への対応とコインの表裏。持続的なエネルギーの未来のために、エネルギー効率の向上、環境面での持続可能性、化石燃料の生産・消費両面における技術進歩、低炭素な代替エネルギーの開発が重要。炭素隔離貯蔵技術(CCS)は、持続可能なエネルギーの未来において重要な役割を果たす。バイオ燃料等の再生可能エネルギーの開発は、食料との競合や森林破壊等の問題に配慮した上で行われるべき。
(ホ)生産国において投資を呼び込むためには、投資環境の整備及びガバナンスの向上が重要。不透明な意思決定、急な制度や契約内容の変更等、政策の不確実性は投資の障壁となる。また、将来の生産動向を把握するために透明性の高いデータの提供が必要。国営石油会社(または政府)と国際石油会社との連携推進も重要。
(ヘ)多くの開発途上国にとってはエネルギー・アクセスの向上が課題。エネルギー貧困を減少させるために、各国及び全ての国際機関が協調して努力することが重要。
(2)我が国よりは、以下の発言を行った。
(イ)第1セッションにパネリストとして参加した甘利経産大臣より、現在の原油価格は異常な水準にあり、状況を放置すれば世界経済の後退につながり、これは産油国、消費国双方、とりわけ途上国にとって望ましいものではないこと、特に途上国は深刻な状況にあることを強調した。また、不確実性の除去として、1)投資の拡大、2)市場の透明性の向上、3)省エネルギーの推進の重要性を強調、また、世界全体のエネルギー問題解決に向け、産油国と消費国とが一体となって取り組むことが必要との発言を行った。
(ロ)小池外務大臣政務官より、第3セッションにおいて、開発途上国におけるエネルギー・アクセスの向上の必要性とそれに伴うエネルギー需給逼迫の緩和、また、気候変動問題への対応の重要性を指摘し、地球規模の戦略の下に各国が協力していくことが必要であるとして、我が国もエネルギー貧困の削減、気候変動問題への対応に引き続き積極的に貢献する旨の発言を行った。(全文はこちら)
(3)会議後の記者会見で「主催国及び共催国による閉会宣言(Closing Statement by Host and Co-hosting Countries)(英文(PDF))(和文仮訳)」が、イタリア(主催国)、メキシコ及びインド(共催国)によって発出された。
(1)今次会合では、原油価格(WTI)が110ドル/バレルを超えて推移し、石油市場の安定に向けた取組が注目される中、生産国及び消費国が一堂に会し、原油価格高騰をはじめとするエネルギー問題の課題とその解決に向けて如何なる取組を行うべきかについて、産消それぞれの立場から自由な意見交換が行われる実りある機会となった。
(2)特に、安定的なエネルギー需給の確保は、生産国・消費国双方にとってのメリットであり、中長期的なエネルギー市場の安定のために、産消双方がそれぞれの責任を果たすことが重要との認識で一致した。また、そのための投資環境整備の重要性についても議論が及んだ。
(3)多くの貧困層がエネルギーの入手が困難な状況に置かれている現状を踏まえ、エネルギー貧困率の低減の重要性が強調された。また、将来のエネルギー安全保障の確保において技術開発が果す役割の重要性も指摘された。
(4)石油市場の透明性の確保に向けて、参加国の多くが、IEF事務局がこれまで取り進めてきた共同石油データイニシアティブ(JODI)への支持を表明し、一層の推進につき一致したことは評価できる。
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