経済

2008年IEFローマ宣言に向けた開催国と共同開催国による閉会宣言(仮訳)

2008年4月20-22日、ローマ

  1. 第11回国際エネルギー・フォーラム(IEF)は、4月20日から22日までローマで開催され、74ヵ国の閣僚級代表団及び13の国際機関が参加した。中心的テーマは地球規模の課題に対応するためのエネルギー対話であった。エネルギー産出国と消費国は、対話を向上させ強化させることにより、エネルギー価格高騰、エネルギー需給の安全保障、増大する地球環境問題に関する懸念、持続可能な開発の振興、エネルギー貧困の解消といった主要な地球規模の課題に対し、より良い対処が可能であるという共通理解に達した。
  2. エネルギー産業の役割という観点から、27人の産業界のリーダーの参加を得て4月20日に開催された第3回国際エネルギー・ビジネス・フォーラム(IEBF)において、閣僚は、世界の主要なエネルギー企業と意見交換を行った。IEBFは、IEFでの閣僚間の議論に向け、投資や官民パートナーシップに関する貴重なインプットを提供した。閣僚及び産業界のリーダーは、世界のエネルギー市場をより安定させ、エネルギー投資を促進させ、技術的進歩を促進しつつ地球環境の保護に貢献する実際的な方策を特定することを目指し、建設的かつ開かれた対話を行った。
  3. 閣僚は、現行の油価の水準に対する懸念を表明した。IEFは、世界の、特に途上国における経済成長を確実にするため、産消双方にとって受け入れ可能な水準にあるべきであるとの認識を有した。原油価格と金融市場の相互関連はより強くなりつつある。原油価格の変動の激しさは、市場の示すシグナルの解釈をより複雑にし、投資に悪影響を与えるおそれもある。
     閣僚は、関連する国際機関に対し、エネルギー市場のファンダメンタルズそのものや、金融市場が油価の水準やその変動幅に与える影響につき、より深い考察を行うよう求める。
  4. 世界のエネルギー需要は、新興国と途上国において予想される急激な成長により、今後数十年にわたり大きく増加すると見込まれる。IEFは、石油及びガス資源が今後数十年に亘り世界の需要を満たすのに十分であると認識した。しかしながら、残念なことに、一般社会や市場の認識は、この石油とガスの地質学的な現実には合致していない。IEF加盟国は、社会と市場の認識を市場のファンダメンタルズと一致するよう協力して取組むことが求められた。
  5. フォーラムは、消費国が天然ガス輸入にますます依存していることを認識した。大規模なガス事業は、操業開始までに長い準備期間を必要とする一方、多くの投資を必要とする旨指摘された。更に、ガスの輸送・通過は複数の国に影響する。閣僚は、官民のより良い協調や特別な地域的取り決めが推進されるべき旨指摘した。
  6. フォーラムは、利用可能な資源を市場に供給するためには、石油及びガス供給チェーン全体において適切かつ時宜を得た投資が必要である旨強調した。膨大なコストの増加のため、2030年までの石油及びガスへの投資に必要な金額は約10兆ドルにのぼると推定されている。エネルギー需給に関する不確実性は、投資を計画するにあたり大きな障害となる。自由貿易の原則は維持・法制化されなければならない。輸入国は、短期・長期それぞれのエネルギー需要を形作る明確なエネルギー政策と計画を策定することが求められた。供給面では、エネルギー市場の透明性の向上、より安定的な法規制の枠組み、より予測可能なエネルギー政策が、投資とその収益性に影響を及ぼすであろう不確実性と不当な政治的影響を減少させる上で極めて重要である。
  7. これらの不確実性を認識し、閣僚は、IEF事務局に対し、次回のIEF閣僚会議に向け、エネルギー投資を阻害する主な不確実要素を如何に除去するかに関する提言と行動に焦点をおいた報告書の作成を求めた。
  8. 閣僚は、エネルギー産出国と消費国との相互依存関係は、当分の間増大し続けることを確認した。この相互依存関係は、世界経済の健全な成長、公平なエネルギー貿易及び国際協力を支え、これらを結びつけるものとして評価されるべきである。IEFを通じた協力と効果的な対話は、エネルギー安全保障を提供し、気候変動問題に対応するための協調的なエネルギー戦略を策定する上で必須のものである。
  9. 巨大プロジェクトの増大するコスト、複雑性及びリスクに対処する上で大きな可能性を提供するものとして、IEFは、IOC(国際石油企業)とNOC(国営石油企業)、サービス企業間の協力関係の強化を主張した。全ての当事者の法律や権利、期待を中武運に踏まえつつ、協力の可能性を最大化するために、協力枠組みの条件や運営をどのように向上させられるかという点について、閣僚間で幅広い議論が行われた。
  10. しかしながら、20億以上の人々が、未だに現代的エネルギー・サービスを利用できないでいる。このため、貧困のサイクルが繰り返され、訓練と望ましい健康水準への到達を妨げつつ阻害してされている。本フォーラムは、2015年までに貧困率を半減させることにより「ミレニアム発展目標」達成を支援するため、IEF参加国の団結と、全ての関係国際機関による一体となった努力における方向性の変化を求めた。
  11. 閣僚は、人的資源及び技術進歩分野での協力と(情報)交換を拡大させる必要性につき議論した。閣僚は、石油・ガス産業で働く技術者や熟練スタッフのイメージと報酬を向上させるために、石油・ガス産業界、大学、研究機関と共に消費国・産油国双方において世界的なキャンペーンを早急に展開する必要性を述べた。
  12. 現実的な全てのシナリオにおいて、化石燃料は今後数十年に亘りエネルギーミックスの主流を占めるであろう。閣僚によれば、持続的なエネルギーの未来とは、エネルギー効率の向上、化石燃料の生産・消費の両面における技術進歩、そして代替的低炭素エネルギー源の開発を意味する。閣僚は、産消国間におけるエネルギーに関する一層の技術移転と協力を主張した。あらゆるエネルギー技術の選択肢がオープンのままとされ、また優先順位が付けられるべきである。
  13. 閣僚は、行動計画、セクター別アプローチ、エネルギーの生産、輸送、消費におけるベスト・プラクティスの共有を通じたエネルギー効率の向上は、エネルギー市場の安定、環境面での持続可能性、そして経済発展を向上させる上で、産油国と生産国の双方にとり、費用対効果が高く、かつ、有益であることを確認した。

    フォーラムは、二酸化炭素回収・貯留技術(CCS)は、化石燃料から排出される温室効果ガスを減少させる上で重要な選択肢である旨認識した。CCSの開発と活用は、持続可能なエネルギーの未来を可能とする上で、極めて重要な役割を果たす。可能な限り早急にCCSがCDMに組み入れられるべきであり、CCSが商業化を促進するためには、より多くの商業化に近いスケールでの実証プロジェクトと国際的なパートナーシップが必要であるという共通認識が得られた。

  14. 閣僚は、代替エネルギー源の発展を歓迎する一方で、いくつかのバイオ燃料の欠点や限界にも焦点を当てた。バイオ燃料の将来及び潜在的な環境上及び経済上の影響を現実的かつ包括的に評価することは、今後における投資決定の重要な要素である。IEF事務局は、IEA、OPECその他の関連機関と、こうした評価が利用可能になるよう協力することを求められた。
  15. 石油消費、生産、貿易に関するより迅速かつ完全なデータの整備は、石油市場の透明性向上と原油価格の変動を小さくすることによる投機の余地の減少に役立つ旨閣僚は述べた。

    共同石油データ・イニシアティブ(JODI)が、原油市場の透明性の向上に貢献したとして賞賛した。しかし、改善の余地がある。閣僚の間では、JODIを世界の石油データの出所とするべく、その更なる発展への強いコミットメントが看取された。

  16. ガス市場におけるグローバル化への流れの中で、JODIの対象に天然ガスを早晩加えるべき時期に来ている。2008年11月24日に開催予定のIEFとIGU(世界ガス連盟)共催のガス・フォーラムが、本件の重要な前進につながりうる。我々は、IEF事務局が、本件が実現する様主導的に関連する国際的な機関と協力して取り組み、進捗状況を次回の閣僚会合に報告することを求める。
  17. フォーラムは、現在および将来における課題に対処するためにエネルギー対話を継続、拡大していくことの必要性を確認した。IEF加盟国は、通常拠出金及びエネルギー対話の継続と強化のために各国が必要と考える追加的な貢献をもって事務局が業務を遂行できるよう支援することを慫慂された。
  18. 本フォーラムは、ドイツとクウェートの共催の下、2010年に開かれる第12回国際エネルギー・フォーラム閣僚級会合に、主催国としてのメキシコの立候補を歓迎し、受託した。
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