経済外交

EITI(採取産業透明性イニシアティブ)概要

平成30年12月10日

1 EITIとは

 採取産業透明性イニシアティブ(Extractive Industries Transparency Initiative:EITI)とは,石油・ガス・鉱物資源等の開発に関わるいわゆる採取産業から資源産出国政府への資金の流れの透明性を高めることを通じて,腐敗や紛争を予防し,もって成長と貧困削減に繋がる責任ある資源開発を促進するという多国間協力の枠組み。途上国政府,採取企業,市民社会の平等で開放的な参加形態が特徴。現在では51の資源産出国,我が国を含む多数の支援国,そして数多くの採取企業やNGOが参加。

 目標として,(1)資源開発は持続可能な経済成長の基盤を提供するという考えを広めること,(2)採取産業のすべての関係者をまとめ,グッドガバナンスと透明性の向上を実現するために最適の方法を模索すること,(3)採取産業における資金の流れの透明性を確保する枠組みを確立することを掲げ,資源産出国が,その保有する資源ゆえに貧困を一層深刻化させるという,いわゆる「資源の呪い」に対する有効な取組となることが期待されている。

 EITI参加国の拡大は,世界全体の資源安全保障の強化につながり,資源の殆どを輸入に依存している我が国にとって安定的な資源供給の維持・強化につながる。また,資源国における企業の公平な競争を確保するためのルール作りは,グローバル・ガバナンスを強化し,日本を含む各国の企業活動にも裨益しうる。

2 実施国(51)

  • (画像1)地図

 アフガニスタン,アルバニア,アルメニア,ブルキナファソ,カメルーン,中央アフリカ(一時資格停止中),チャド,コロンビア,コートジボワール,コンゴ(民),ドミニカ共和国,エチオピア,独,ガーナ,グアテマラ,ギニア,ガイアナ,ホンジュラス,インドネシア,イラク,カザフスタン,キルギス,リベリア(一時資格停止中),マダガスカル,マラウイ,マリ,モーリタニア,メキシコ,モンゴル,モザンビーク,ミャンマー,オランダ,ナイジェリア,ノルウェー,パプアニューギニア,ペルー,フィリピン,コンゴ(共),サントメ・プリンシペ,セネガル,セーシェル,シエラレオネ,スリナム,タジキスタン,タンザニア,東ティモール,トーゴ,トリニダード・トバゴ,ウクライナ,英,ザンビア

 2015年までは,2011年に作成されたEITI基準に基づき,検証の結果により実施国を(1)EITIへの参加要件を満たした「候補国(Candidate Country)」,及び(2)候補国となってから2年半以内にEITI認証要件(注)をすべて満たした「遵守国(Compliant Country)」に区分していたが,2016年に改定されたEITI基準では検証に伴う評価区分が下記のとおり設定された。現在,新たなEITI基準に基づいて全ての実施国について再検証中。

(1)十分な進展(Satisfactory progress):

 全てのEITI認証要件が満たされ,要件の広い目標が達成されている状態。

(2)意味ある進展(Meaningful Progress):

 認証要件のうち主要な部分が満たされ,要件の広い目標が達成されつつある状態。

(3)不十分な進展(Inadequate Progress):

 認証要件の主要部分が実施されておらず,要件の広い目標が達成にほど遠い状態。

(4)進展なし(No Progress):

 全て又はほとんどの認証要件が未達成で,要件の広い目標が達成されていない状態。理事会において除名の是非が決定される。

(注:EITI認証要件)(1)マルチステークホルダーグループ(MSG)による監督,(2)契約及びライセンスの配分を含む法的組織的枠組み,(3)開発と生産,(4)収益の徴収,(5)収益の配分,(6)社会経済的支出,(7)結果及び影響,(8)実施国に対する遵守及び期日

 上記の評価は,下記のスケジュールに沿って実施され,評価により実施国のステータスが再検討される。

  • (画像2)スケジュール

3 支援国・機関(16)

 豪州,ベルギー,カナダ,デンマーク,フィンランド,フランス,ドイツ,イタリア,日本,オランダ,ノルウェー,スペイン,スウェーデン,スイス,英国,米国

4 我が国の支援

 我が国は2009年2月の第4回EITI総会で支援国となるべく意思表明を行って以来,2010年には東京でEITIに焦点を当てた国際セミナー「責任ある資源開発に向けた新たな潮流(“Emerging Trend toward Responsible Natural Resource Development”)」を開催し,2011年からはEITIマルチドナー信託基金(MDTF)に対して拠出(平成23年度及び24年度に各15万ドル,25年度に20万ドル,26年度に5.7万ドルを拠出)してきた。また,2016年のサミット議長年にあわせ,EITIとG7の複雑な契約交渉支援強化(CONNEX)イニシアティブとの協力の可能性についての委託調査を行う経費等として36,500ドルをEITI事務局に対して拠出するなど,積極的にその活動を支援している。

5 主な支援企業、産業組織,国際機関

(1)企業(約80社(太字は日本企業))

石油採取企業
BP,シェブロン,ENI,エクソンモービル,シェル,トタール,国際石油開発帝石(INPEX) 等
鉱物資源採取企業
アルコア,アングロ・アメリカン,バリック・ゴールド,BHPビリトン,デビアス,フリーポート・マクモラン,グレンコア,三菱マテリアル,ニューモント,JX金属,リオ・ティント,住友金属鉱山,ヴァーレ 等

 (なお、支援企業になるためのステップについては、EITIホームページ別ウィンドウで開くを参照)

(2)産業組織

 米国石油機関(API),国際金属・鉱業評議会(ICMM),石油ガス生産国機構(OGP)等

(3)国際機関

 アフリカ開発銀行,アフリカ連合,アジア開発銀行,欧州委員会,欧州復興開発銀行,G20,G7,米州開発銀行,IMF,OECD,世銀グループ等

6 組織

  • (1)設立当初は英国国際開発省に拠点を置く国際事務局により支援・運営されていたが,2007年にノルウェー・オスロに国際事務局を設置。EITI理事会の政策決定の実施やEITI実施に向けた候補国と支援国・機関との調整等を行っている。
  • (2)国際事務局のスタッフは,事務局長,地域局長,広報部長,秘書,総務部長等で構成され,事務局長は,マーク・ロビンソン氏(英国人)。
  • (3)2006年,候補国,支援国,市民団体,企業等の20の代表から構成される理事会が立ち上げられ,EITIの戦略的方向性,アウトリーチ,広報等について,少なくとも3年に一度開催される閣僚級会合(総会)への勧告を行っている。理事会の議長は,フレドリック・ラインフェルト元スウェーデン首相。
  • (4)採取産業グローバル計画支援(EGPS-MDTF)は,世銀が委託機関となっており,資源国がEITIを推進する際の技術協力等に使用されている。

7 経緯

(1)設立の経緯

 ブレア英首相(当時)が「持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)(於:ヨハネスブルク,2002年9月)」で提唱。

(2)閣僚級会合(総会:The EITI Global Conference)の開催

第1回閣僚級会合(2003年6月,於:ロンドン)

 英国際開発省の主催により開催され,12項目からなる以下のEITI原則(下記)が発表された。

The EITI Principles
  1. We share a belief that the prudent use of natural resource wealth should be an important engine for sustainable economic growth that contributes to sustainable development and poverty reduction, but if not managed properly, can create negative economic and social impacts.
  2. We affirm that management of natural resource wealth for the benefit of a country’s citizens is in the domain of sovereign governments to be exercised in the interests of their national development.
  3. We recognise that the benefits of resource extraction occur as revenue streams over many years and can be highly price dependent.
  4. We recognise that a public understanding of government revenues and expenditure over time could help public debate and inform choice of appropriate and realistic options for sustainable development.
  5. We underline the importance of transparency by governments and companies in the extractive industries and the need to enhance public financial management and accountability.
  6. We recognise that achievement of greater transparency must be set in the context of respect for contracts and laws.
  7. We recognise the enhanced environment for domestic and foreign direct investment that financial transparency may bring.
  8. We believe in the principle and practice of accountability by government to all citizens for the stewardship of revenue streams and public expenditure.
  9. We are committed to encouraging high standards of transparency and accountability in public life, government operations and in business.
  10. We believe that a broadly consistent and workable approach to the disclosure of payments and revenues is required, which is simple to undertake and to use.
  11. We believe that payments’ disclosure in a given country should involve all extractive industry companies operating in that country.
  12. In seeking solutions, we believe that all stakeholders have important and relevant contributions to make - including governments and their agencies, extractive industry companies, service companies, multilateral organisations, financial organisations, investors, and non-governmental organisations.

第2回閣僚級会合(2005年3月,於:ロンドン)

 EITIの実施に向け,6項目からなる以下のEITI基準(下記)が合意された。また,EITIを進めるための手引書(EITI Source book)が発行された。

The EITI Criteria
  1. Regular publication of all material oil, gas and mining payments by companies to governments (“payments”) and all material revenues received by governments from oil, gas and mining companies (“revenues”) to a wide audience in a publicly accessible, comprehensive and comprehensible manner.
  2. Where such audits do not already exist, payments and revenues are the subject of a credible, independent audit, applying international auditing standards.
  3. Payments and revenues are reconciled by a credible, independent administrator, applying international auditing standards and with publication of the administrator’s opinion regarding that reconciliation including discrepancies, should any be identified.
  4. This approach is extended to all companies including state-owned enterprises.
  5. Civil society is actively engaged as a participant in the design, monitoring and evaluation of this process and contributes towards public debate.
  6. A public, financially sustainable work plan for all the above is developed by the host government, with assistance from the international financial institutions where required, including measurable targets, a timetable for implementation, and an assessment of potential capacity constraints.

第3回EITI閣僚級会合(2006年10月,於:オスロ)

 ナイジェリア,アゼルバイジャンから実施報告書を公表。また,国際諮問グループから提出されたEITI原則の重要性,企業のEITI実施評価方法,理事会の設置等についての勧告が採択された。今後2年ごとに総会を開催することを決定。さらに,マダガスカル,イエメン,コートジボアール及びリベリアの4か国から参加表明。

第4回EITI閣僚級会合(2009年2月,於:ドーハ)

 我が国代表(外務省経済安全保障課長)がEITI総会に初めて正式に出席し,支援国となる意思表明を行った。

第5回EITI閣僚級会合(2011年3月,於:パリ)

 我が国代表(在仏大公使)がEITI総会で,EITIマルチドナー信託基金に対して,15万USドルの財政的支援の実施を予定している旨言及した(2011年12月拠出済)。

第6回EITI閣僚級会合(2013年5月,於:シドニー)

 理事会での承認を経て、EITI新基準が発表された。EITI原則に変更はないが、EITI認証要件は以下の7項目になり、分野に関するより多くの詳細情報や定性的評価も取り入れることになった。

The EITI REQUIREMENTS
The EITI requires:
  1. Effective oversight by the multi-stakeholder group.
  2. Timely publication of EITI Reports.
  3. EITI Reports that include contextual information about the extractive industries.
  4. The production of comprehensive EITI Reports that include full government disclosure of extractive industry revenues, and disclosure of all material payments to government by oil, gas and mining companies.
  5. A credible assurance process applying international standards.
  6. EITI Reports that are comprehensible, actively promoted, publicly accessible, and contribute to public debate.
  7. That the multi-stakeholder group takes steps to act on lessons learned and review the outcomes and impact of EITI implementation.
    Each of these requirements are set out in full in this chapter.

第7回EITI閣僚級会合(2016年2月,於:リマ)

 前回の2013年会合の基準を改定するEITI基準2016が以下のとおり発表された。主な改定点としては,実施国のコンプライアンスに係るとりきめの追加や2020年までに受益所有権の情報をEITI報告書 に盛り込む規定が追加された。

Requirements for EITI implementing countries
  1. Oversight by the multi-stakeholder group
  2. Legal and institutional framework, including allocation of contracts and licenses
  3. Exploration and production
  4. Revenue collection
  5. Revenue allocations
  6. Social and economic spending
  7. Outcomes and impact
  8. Compliance and deadlines for implementing countries

参考:G8及びG20サミットにおける取り扱い

G8サミット

  • エビアン(2003年)シーアイランド(2004年)

     両サミットにおいて,首脳文書「腐敗との戦いと透明性の向上」の中で「採取産業から得られる収入の透明性向上の重要性」について言及。また,シーアイランド・サミットにおいては,G8と4か国(グルジア,ニカラグア,ナイジェリア,ペルー)それぞれとの間で協約が作成された。

  • グレンイーグルズ・サミット(2005年)

     アフリカに関する首脳文書において,「14.アフリカのコミットメントに対応し,」「腐敗対策及び透明性向上のための取組の一環として,・・・・EITI及びEITIを実施する国々への支援を拡大」と言及。

  • サンクトペテルブルク・サミット(2006年)

     エネルギー安全保障に関する首脳文書において,「腐敗防止のための闘いの重要な手段として,・・・,採取産業透明性イニシアティブ(EITI)及び国際通貨基金の資源歳入の透明性に関する指針(GRRT)の文脈等で,エネルギー輸出により得られる公的歳入の管理をより透明性があるものとするための取組努力を支持する」と言及された他,腐敗対策イニシアティブ,アフリカに関する首脳文書においても,EITIが取り上げられた。

  • ハイリゲンダム・サミット(2007年)

     「世界経済」の天然資源に関する首脳文書では,EITIに関するパラグラフ(パラ87)が設けられ,「資源に起因する支払いフローに関して,透明性を促進する我々の継続した取組の一部として,引き続き良い統治とEITI等の反腐敗イニシアティブを支持する…」と言及。」。

  • 北海道洞爺湖サミット(2008年)

     「世界経済」の首脳文書の天然資源に関するパラグラフ(パラ15)において,「EITIのようなイニシアティブを引き続き支持し,その完全な実施を呼びかけ,候補国に対して時宜に即して認証プロセスを完了させることを呼びかける。我々は新興市場国及びその企業がこのイニシアティブを支持することを奨励する」と明記された。また,北海道洞爺湖サミットに先駆けて実施された大阪でのG8財務大臣会合においても,共同声明の中で「EITIをより多くの国が実施することの重要性を確認」と記された。

  • ラクイラサミット(2009年)

     G8首脳文書において,腐敗及びアフリカの文脈で2度の言及(パラ35,131)。支持の継続を表明した上,「すべての実施国及び当該国において操業するすべての企業による検証を促進する取組を強化する。さらに,EITI候補国が,それぞれの合意された期間内に実施を完了させるよう強く奨励し,他の開発途上国及び新興市場国並びに右諸国の企業に対し,このイニシアティブを遵守することを求める」と明記された。

  • ムスコカ・サミット(2010年)

     G8首脳宣言「回復と新たな始まり」中の「開発」に関するパラグラフ(パラ18)にて「EITI候補国に対し,採取セクターにおけるガバナンス及び説明責任を強化するためのメカニズムとしてEITI実施プロセスを完了するよう促す」ことが明記された。

  • ドーヴィル・サミット(2011年)

     G8首脳宣言「自由及び民主主義のための新たなコミットメント」(パラ62)において,「我々は,我々すべてが支持する採取産業透明性イニシアティブ(EITI)の完全な実施を通じたものも含め,他の分野における透明性を引き続き支援する。我々は,すべての国々,特に資源の豊富な国々,及び採取企業に対し,このイニシアティブに参加し又はこれを支持することを求める」ことが明記された。

  • ロック・アーンサミット(2013年)

     G8首脳宣言において、パラ34から42までを「採取」とし、採取産業の透明性の強化につき大きく取り上げられた。その骨子は以下のとおり。(全文はhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/page4_000099.html(外務省ホームページ)参照)

    • 相当規模の国内採取産業を有する国や大規模な多国籍採取企業の母国は、採取透明性の世界基準を引き上げ、世界共通の報告基準に向けて行動。このような基準の下、企業は採取に関する支出の報告を義務付けられ、G8各国は情報開示遵守を確保。
    • 採取部門の透明性・ガバナンス向上を目指すパートナーシップを立ち上げ。
    • 露と日本は、EITIの目標を支持すると共に、国内企業によるEITI支持を奨励。
  • ブリュッセル・サミット(2014年)

     G7首脳宣言中の「開発」に関するパラグラフ(パラ17から18)において,「引き続き,採取産業の透明性を向上させる世界共通の基準に向けて取り組むことに責任を有する」旨明記。また,企業の支払に関する情報の公開に関連し,「採取産業透明性イニシアティブ(EITI)基準に参加している政府は,自発的に収入を報告する」と言及。(全文はhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page22_001097.html(外務省ホームページ)参照)

  • 伊勢志摩サミット(2016年)

     G7首脳宣言の「腐敗対策」に関するパラグラフにおいて,「…我々は,国際社会における(中略)採取産業透明性イニシアティブ(EITI)(中略)のような価値あるイニシアティブを活性化するために英国が5月に主催した腐敗対策サミットによって創り出された成果及びモメンタムを歓迎する。」と言及。(全文はhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000160267.pdf(PDF)別ウィンドウで開く(外務省ホームページ)参照)

G20サミット

  • ピッツバーグサミット(2009年)

     G20首脳文書において,腐敗に関するパラグラフ(パラ42)において,「資源採取企業と資源国政府との資金の流れの透明性を確保するEITIへの自主的な参加を支援する」と明記された。

  • カンヌサミット(2011年)

     G20最終宣言において,「腐敗との我々の闘いの強化」(パラ87)において,「EITIへの任意の参加を含む,民間部門と政府との関係において透明性を高めることを目指すイニシアティブを歓迎する」と明記された。

  • サンクトペテルブルク・サミット(2013年)

     G20首脳宣言において、腐敗に関するパラグラフ(パラ111)において、「採取産業透明性イニシアティブ(EITI)への自発的参加を含む、採取産業の透明性向上を目指したイニシアティブを歓迎し、進捗に留意する。」と明記された。


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