生物・化学兵器

化学兵器禁止条約(CWC)の概要

平成29年12月13日

1 化学兵器禁止条約とその沿革

  • 化学兵器禁止条約(Chemical Weapons Convention: CWC、正式名称は「化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約」)は、サリンなどの化学兵器の開発、生産、保有などを包括的に禁止し、同時に、米国やロシア等が保有している化学兵器を一定期間内(原則として10年以内)に全廃することを定めたものである。これは、軍縮条約史上、一つの範疇の大量破壊兵器を完全に禁止し、廃棄させるのみならず、これらの義務の遵守を確保する手段として、実効的な検証制度を持つ初めての条約であり、大きな意味を持っている。CWCの実施に当たる国際機関として、化学兵器禁止機関(OPCW)が設けられている。
  • 化学兵器に関しては、1925年のジュネーブ議定書により「窒息性ガス、毒性ガス等の戦争における使用」が禁止されていたものの、その開発、生産および貯蔵までは禁止されていなかった。
  • 1969年、ウ・タント国連事務総長が、「化学・細菌兵器とその使用の影響」と題する報告書を提出したことを契機として、国連などの場で化学兵器の禁止が活発に議論されることとなった。その後1980年から軍縮委員会(その後の軍縮会議)において化学兵器禁止特別委員会が設立され、化学兵器禁止のための交渉作業が本格的に開始された。
  • 東西間、南北間の対立のため交渉は長期化したが、1992年9月にいたり条約案が軍縮会議において採択され、1993年1月13日にはパリで署名式が開催された。発効は1997年4月29日。同年5月にはCWCの実施に当たる国際機関として化学兵器禁止機関(OPCW)がハーグに設立された。わが国は1993年1月に署名し、1995年9月に批准した。
  • 2017年11月現在の締約国数は192か国。イスラエル(署名国)、北朝鮮、エジプト及び南スーダンが未締結である。
  • OPCWの最高意思決定機関である締約国会議は通常年1回開催。各地域グループから選出された41か国からなるOPCWの執行機関である執行理事会は通常年3回開催されている。また、締約国によるCWC運用検討会議が5年ごとに開催される。

2 条約の主な内容

  • 締約国は、いかなる場合にも化学兵器の開発、生産、取得、保有、移譲及び使用を行わないことを約束する(第1条)。
  • 締約国は、保有する化学兵器及び化学兵器生産施設を申告し、原則として条約発効後10年以内(2007年4月まで)に廃棄する(第4条、第5条)。
  • 条約で禁止されていない目的のために毒性化学物質等を開発、生産する権利などは認められるが、一定の毒性化学物質及び関連施設は検証措置の対象とし、締約国はその活動につき申告を行う(第6条)。
  • 締約国は、条約に基づく義務を履行するため、法令の制定を含む必要な措置をとる(第7条)。
  • 締約国からの申告を受け、査察などにより条約の遵守を検証する機関として化学兵器禁止機関(OPCW)を設立する(第8条)。
  • 条約の違反の可能性について懸念が生じる場合には、OPCWは締約国の要請に応じ、疑義の対象となる施設・区域に対してチャレンジ査察(抜き打ち査察)を行うことが認められる(第9条)。特に重大な事態に関しては、OPCW締約国会議は国連総会及び国連安全保障理事会の注意を喚起する(第12条)。
  • 締約国は、老朽化した化学兵器及び他の締約国の領域内に遺棄した化学兵器も廃棄する(検証議定書第4部(B)において適用する第4条)。

3 条約の強化に向けた取り組み

  • CWC発効後5年が経過したことを受け2003年に開催された第1回CWC運用検討会議では、CWCの普遍化(加盟)促進と締約国による条約の国内実施強化の重要性が指摘された。
  • これを受け、普遍化と国内実施強化への取り組みを強化するため、同年に開催された第8回締約国会議などにおいて「普遍化に関するアクション・プラン」及び「国内実施措置に関するアクション・プラン」(いずれも期限は2年)が採択された。現在でも期限を延長するなどして取組まれている。

(1)普遍化に関するアクション・プランの骨子

  • 締約国に対しCWC普遍化のために更なる努力を行うことを求める。
  • 地域ごとに本件アクション・プランの実施支援と調整を行う「ポイント・オブ・コンタクト」の指名を支持。
  • OPCW技術事務局に対して、CWC締結予定国への加盟準備支援、未締結国の訪問、ハーグに公館を有さない未締結国との会合、地域セミナーやワークショップの開催、CWC及びOPCWに関する広報の強化などを含む普遍化関連活動年間計画を作成するよう求める。
  • 締約国に対して、CWC未締結国との接触などでCWC普遍化強化を追求するよう求める。
  • OPCW技術事務局長に対して、普遍化アクション・プランの実施状況について毎年締約国会議に報告するよう求める。

(2)国内実施措置に関するアクション・プランの骨子

  • OPCW技術事務局に対して、CWC第7条(締約国の国内実施措置を規定)が求める措置の実施に困難を有する締約国との間で問題点の把握等において協力するよう求める。
  • 支援を求める締約国に対して、必要とする支援内容につきOPCW技術事務局に通報するよう求める。
  • OPCW技術事務局に対して、要望する締約国に対し国内当局の設置、CWC実施法の制定などにおいて継続的な技術支援を行うよう求める。
  • 本件行動計画のための締約国からの任意拠出を歓迎する。
  • 締約国は、要請があれば、他の締約国がCWC国内実施法などを制定するにあたってアドバイスを与えるよう配慮する。
  • 支援を提供できる締約国は、提供できる支援の内容につきOPCW技術事務局に通報するよう求める。
  • OPCW技術事務局に対して、国内実施支援プログラムを更に改善させるよう求める。
  • まだ国内実施法・措置を制定していない締約国に対して、国内実施のための現実的目標期日を設定し、遅くとも2005年11月までに国内実施法・措置を制定するよう求める。
  • 締約国とOPCW技術事務局に対して、特に軍、産業、化学及び技術部門におけるCWの禁止及び要請事項に関する認識を高める措置をとるよう奨励する。
  • 締約国に対して、化学物質の防疫に関する規則がCWCに適合したものとなるよう見直すよう求める。
  • OPCW技術事務局に対して、第9回締約国会議及び第36回以降隔回の執行理事会にこのアクション・プランの実施状況につき報告するよう求める。

4 ストックパイル化学兵器(CW)廃棄

  • (1)ストックパイル(保有)化学兵器(CW)保有国は、CWの廃棄を条約発効後10年以内に完了する(第4条6)。一方、保有国が条約発効後10年以内に全てのCWの廃棄を確保できないと認める場合には、当該CWの廃棄完了の期限の延期を執行理事会に対し要請することができる(検証付属書第4部(A)24)。締約国会議は、執行理事会の勧告に基づき、当該要請に関する決定を行うことができるが、当該期限は、条約発効後15年を越えて延期してはならない(検証付属書第4部(A)24)。
  • (2)米国、ロシア及びリビアについては、上記諸規定に基づきCWの廃棄完了の期限が2012年4月29日に延期されていた(2006年の第11回締約国会議決定)が、米国とロシアの廃棄については同日までに完了しない見込みであったことから、CWに関する条約上の廃棄期限問題に対処する必要が生じた。締約国は、廃棄期限を迎える約2年前から、CW廃棄期限問題への対応につき議論を継続した。その結果、2011年12月の第16回締約国会議において、CW保有国(米国、ロシア及びリビア)が廃棄期限までにCWの廃棄を完了できなかったことを確認した上で、保有国による化学兵器の廃棄の進展と、今後も保有国が化学兵器の廃棄を継続するとのコミットメントを確認し、可能な限り早い時期に化学兵器の廃棄を完了するよう慫慂し、OPCWが中心となりその廃棄の進展を確認するための措置をとることを骨子とする決定(C-16/DEC.11)が採択された。
  • (3)2017年9月には、ロシアがストックパイルCWの廃棄を完了した。また、同年11月には、ドイツ国内で実施されていたリビアのCWの廃棄も完了している。
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