2 外交実施体制の強化
(1)機構・定員・予算
日本を取り巻く安全保障環境が戦後最も厳しく複雑になる中、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・発展のための外交を強力に推進するためには、外交・領事実施体制の抜本的な強化が不可欠である。そのため外務省は、在外公館の数と質の両面の強化や外務本省の組織・人的体制の整備を進めている。2025年度は、国際情勢が激動する中でこれまで以上に機動的かつ戦略的に外交政策に取り組むため、大臣官房、総合外交政策局、欧州局、経済局、領事局において課室の新設・統合などの機構改革を行った。
大使館や総領事館などの在外公館は、海外で国を代表し、外交関係の処理に携わり、外交の最前線での情報収集・戦略的な対外発信などの分野で重要な役割を果たしている。同時に、邦人保護、日本企業支援や投資・観光の促進、資源・エネルギーの確保など、国民の利益増進に直結する活動も行っている。
また、外務本省及び各在外公館で、外交を支える人員を確保・増強することが重要である。2025年度においては、政府全体での厳しい予算・定員事情の中で、同盟国・同志国との関係深化、グローバル・サウス諸国との連携強化、日本企業支援を含む経済外交の推進、情報戦時代への取組強化、邦人保護・領事体制の強化などに取り組むため、外務省の定員数は2024年度から87人増の6,761人となった。しかし、他の主要国と比較して人員は依然十分とはいえず、引き続き日本の国力・外交方針に合致した体制の構築を目指すための取組を実施していく。なお、2026年度も、外交・領事実施体制の強化が引き続き不可欠との考えの下、91人(1)の定員増を行う予定である。
法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化するため、外務省は2025年度当初予算で7,617億円を計上した。また、2025年度補正予算に関しては1,844億円を計上した。同補正予算においては、高市総理大臣が設置した日本成長戦略本部で「戦略分野」に指定された「AI・サイバー・GX」に関する施策、日本企業の海外展開や経済安全保障に資する施策、対ウクライナ支援、グローバル・サウスや同志国との連携に係る施策など、日本と世界に関する喫緊の諸課題に対処するための施策を計上した。2026年度政府予算案では、(ア)日本の安全と経済の繁栄の追求、(イ)日本の国益に資する国際環境の整備、(ウ)邦人保護のための領事実施体制の強化を実現すべき重点項目として、8,170億円を計上している。主なものとしては、日本にとって望ましい国際秩序の形成(「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現を含む。)に向けた取組のための予算、グローバル・サウス諸国との関係強化のための予算、ウクライナ・パレスチナ及び影響を受ける国への支援のための予算、政府安全保障能力強化支援(OSA)のための予算、自由で公正な国際経済秩序を支えるルール作りと日本企業の海外展開支援のための予算、親日派・知日派を拡大する人的・文化交流を含む日本への信頼、好感度、親近感を増強する文化外交を抜本的に強化するための予算、情報戦時代への取組を強化するための予算などが含まれている。引き続き、一層の効率的な予算執行を含め合理化の努力を行いつつ外交・領事実施体制の整備を戦略的に進め、厳しい国際情勢の中で日本の国益を追求していく。




(2)日本外交に資する情報の収集・分析
日本は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面している。日本周辺では、核・ミサイル開発を含む軍備増強が急速に進展し、力による一方的な現状変更の試みが強まっている。同時に、偽情報の拡散などを通じた情報戦などが恒常的に生起し、有事と平時の境目はますます曖昧になってきている。このように国際情勢が不確実性を増す中、日本の国益を守り、国民の安全を確保するためには、情報の的確な収集及び分析がより一層必要不可欠となっている。
外務省は、国際情勢の動向を踏まえ、情報の収集・分析体制を強化してきた。21世紀に入ってからは、米国同時多発テロやその後のイラク情勢など、刻々と変化する国際情勢に一層迅速かつ柔軟に対応する必要性を踏まえ、2004年に国際情報局を改編する形で国際情報統括官組織を設置した。その後、日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさと複雑さを増す中、2023年には国際情報統括官の下、組織内の総合調整を担当する管理グループと国際情勢分析を担う分析グループに組織を再編した。
国際情報統括官組織は、「日本の外交・安全保障に資する分析(インテリジェンス)の提供」を目的として、国際情勢に関する情報の収集・分析などを専門的に行う組織であり、外交政策の立案を担当する政策部局から独立し、国際情勢の展開や外交日程などを踏まえ、エビデンス(証拠)に基づく客観的なインテリジェンスの生産を行っている。国際情報統括官組織は、こうしたインテリジェンスを適時に外務大臣及び外務省内の政策部局、さらには官邸、国家安全保障局などに直接提供することで、外交・安全保障政策の立案・決定に貢献している。
また、情報の分析に際しては、外務省の強みである在外公館を通じて得た情報、AI等の新興技術も活用して収集した公開情報、関係省庁や外国の政府等から得た情報、情報収集衛星による画像情報などを基に、各地域や分野に関する分析官の専門性をいかした「オール・ソース・アナリシス」(あらゆる情報手段を活用した総合的な分析)を行っている。
国際情勢に関する情報の収集・分析能力はますます重要となっていくことが見込まれ、引き続き、様々な形で、情報分野における機能の一層の強化を図っていく。
2024年10月から在インド日本国大使館で公邸料理人を務めております、生島卓也です。世界一の人口を有し、日本と特別戦略的グローバル・パートナーシップを結ぶインドにおいて、大使公邸での会食やレセプションは政治、経済などあらゆる面で良好な関係を深めるために重要な機会です。毎回緊張しますが、食事後にお客様と御挨拶した際にお褒めの言葉を頂くことも多く、大変やりがいを感じる仕事です。
会食では「今までで一番美味(おい)しかった」と伝えてくださったベジタリアンのお客様や、レセプションではお寿司を全てお出しした後に私を探して握手を求めてくださったお客様もいらっしゃいました。
料理を提供する上で最も心掛けているのは、日本の「おもてなし」をインドの食材や料理法も取り入れながら、その時々のお客様に合わせて表現することです。お出しする料理から日印友好につながるものをお客様に少しでも感じていただきたいという想(おも)いを込めて、日々調理に励んでいます。


インドでは、宗教上の理由から牛肉・豚肉が避けられ、世界有数のベジタリアン人口を抱えているため、メニュー作成には苦労しますが、お越しいただく皆様に喜んでいただけるよう、こうした制約の中でも工夫を凝らした料理を常に考えています。インドや各国のお客様をお招きする際には日本を感じる会席料理を、日本から訪印されたお客様にはコースの一品としてインド料理を基にした料理を、大使と相談しながら提供しています。
大使館があるニューデリー近辺以外にも休暇を利用して出掛け、インド各地の様々なジャンルの料理を食べ歩いて、インドの食文化の理解を深めています。アイデアを公邸での会食にいかしながら、インドの嗜(し)好を踏まえて、味付けの調整を行うことも心掛けています。伝統的なインド料理だけでなく、日本やヨーロッパの影響を受けたモダンインディアンのお店も増えており、大変勉強になっています。国内各地のインド人の料理人とも交流し、意見交換できる機会を持てることも公邸料理人ならではだと感じます。インド人からは日本の食材や調理器具について質問をもらったり、私はインドの食材や料理について教えてもらったりしています。
日々改善すべきこともありますが、公邸料理人は海外で働くことで日本では体験できない文化に触れることができ、私のように50歳を過ぎても成長できる機会を与えてくれる仕事だと感じています。これからも、インドでの生活を楽しみながらも公邸料理人として日本の外交に貢献できるよう、取り組んでいきたいと思います。

外務省はこれまでの公邸料理人制度を見直し、2026年1月より「在外公館料理人制度」をスタートしました。御関心のある方は以下のサイトをご参照ください。
【国際交流サービス協会】http://www.ihcsa.or.jp/zaigaikoukan/cook-1/

公邸料理人の活躍はSNSアカウント「外務省×公邸料理人(Facebook、X)」でも御覧いただけます。
Facebook:
https://www.facebook.com/MofaJapanChef

X:
https://x.com/mofa_japan_chef

外務省には、「在外営繕」という仕事があることをご存じですか。「日本の顔」として外交活動の拠点や舞台となり、非常時には邦人保護の最後の「砦(とりで)」となるのが、海外にある日本国大使館などの在外公館施設です。これら施設を設計・建設し、維持管理するのが「在外営繕」であり、外交活動を足元から支えつつ、海外在住の日本国民の生命を守る重責の一端を担っています。ここでは、在コンゴ民主共和国日本国大使館で大使公邸の新築工事を担当している三尾営繕技官に在外営繕の仕事について語ってもらいました。
私はコンゴ民主共和国の首都キンシャサで大使公邸の新築工事を担当しています。当地は熱帯モンスーン気候に属しており、1年のうち9か月程は雨季のため豪雨が発生しやすく、残り3か月程の乾季も砂ぼこりが舞い上がり、築年数の浅い建物であっても外壁の劣化が生じやすい環境です。そのような環境の中、1958年築(築後67年)の民家を購入し使用している現在の大使公邸の外壁も、汚れや劣化が著しい状況となっていたほか、高頻度で発生する電圧変動や停電による電気・機械設備の度重なる故障や断水により、外交活動への影響が避けられない状況でした。そのため、安定的に外交活動を実施し、また非常時における邦人保護の最後の「砦」として必要な機能を確保・整備するため、監督職員として大使公邸の新築工事に取り組んでいます。
コンゴ民主共和国の建築事情としては、過去数十年にわたり地震が観測されておらず、また台風などの強風にさらされることも少ないため、多くの建物が日本とは比較できないほど簡素な構造です。その点もあってか、現地作業員の自己判断で精度の高くない施工で作業を進めてしまうことがあり、常に注意深い監督が必要です。
施工に加え資材の調達も容易ではありません。設計時点では調達可能と確認できていた資材が施工時点では調達不可となったり、現地製品の性能テストをしたところ使用に耐えないことが確認され、代替資材を検討する機会も多いです。建物及び設備をより良く、より長く使用できるよう、建築時の施工品質はもとより、現地でも調達が容易な資材を選定することで、今後の施設の維持管理性の向上を図る視点を持って代替資材の検討に取り組んでいます。
言語や気候風土、文化も慣習も異なる環境で工事を進めていくことは容易ではありませんが、実際に現地の方々と直接やり取りを重ねることで、日本式の設計思想を現地の実情に合わせて実現できること、また外交活動の舞台となる大使公邸の施設整備を通じて、日本の魅力を発信できるのは「在外営繕」ならではのやりがいと楽しさだと感じています。引き続き、日本の象徴となる建物の完成に向け努めていきます。

外務省では、国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)技術系区分(試験区分:「建築」、「デジタル・電気・電子」、「機械」及び「教養」)の合格者の中から、営繕技官を採用しています。御関心のある方は以下の技術系職員採用関係ホームページをご確認ください。
【外務省ホームページ「一般職採用試験(大卒・技術系):在外営繕業務」】
https://warp.ndl.go.jp/web/20250901182508/https://www.mofa.go.jp/mofaj/ms/prs/page1w_000167.html

―宇宙から世界をのぞむ情報のスペシャリスト―
「イミント(IMINT)」という言葉をご存知でしょうか。「イミント」は画像から得られる情報を収集・分析するインテリジェンス手法の一つです。外交の効果的な遂行のためには国際情勢に関する情報の収集・分析が不可欠であり、衛星などから得られる画像情報も重要な情報源の一つです。
外務省では、画像情報の分析に専門的に従事する「画像情報分析官」が、安全保障や在留邦人保護といった分野において、関係者に情勢報告を日々行い、タイムリーかつ客観的という画像情報の価値を外交活動に存分にいかしています。
私は、長く画像情報分析業務に従事しています。画像分析は極めて地道な作業ですが、近年では衛星画像分析の有用性が広く認知され、外務省の情報収集・分析においても画像情報の比重は高まっていると感じます。
昨今はSNS等が普及し、公開情報があふれています。公開情報は時に真実を伝えますが、時にフェイクも混じります。その点、衛星画像から得られる情報は客観的であり、事実は何なのかを見極めるために大いに活用されています。
画像情報は、他の様々な情報源と組み合わせて、複合的・重層的に分析することで、情勢分析の精度を高めていくことができます。そのため、常日頃から公開情報を含む様々な情報源と組み合わせつつ、様々な専門家の方々と意見交換を行い、彼らの知見・経験を分析作業において積極的に取り入れています。
日本を取り巻く安全保障環境は、一層厳しさを増しています。外交政策の決定に直接携わる外務省の幹部に情勢報告を行うとき、自分の分析・評価の持つ重みを実感することが多々あり、自分が大きな責任を負っていることを感じますが、それだけ自分の分析が外交政策の一端を担っているのだという、やりがいを感じています。
(1) 定年引上げに伴う新規採用のための特例的な定員(1年時限)4人を含む。
