外交青書・白書
第2章 地域別に見た外交

第3節 北米

1 概観

〈基本的価値や原則を共有する北米地域との連携の重要性〉

現在、国際社会は歴史の転換点にあるといえる。中東情勢の緊迫化やロシアによるウクライナ侵略の継続などをめぐり、国際社会の分断と対立は深まっている。また、北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)(1)級を含む弾道ミサイルなどの発射や、東シナ海・南シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試みの継続・強化など、日本を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しており、基本的価値や原則を共有するG7を含めた同盟国・同志国との結束は、その重要性を大きく高めている。米国は日本にとって唯一の同盟国である。強固な日米同盟は、日本の外交及び安全保障の基軸であり、インド太平洋地域の平和と安定の礎である。また、G7のメンバーであり、普遍的価値を共有するインド太平洋地域の重要なパートナーであるカナダとの協力も不可欠である。日本が長年紡いできた信頼関係に基づくこうした国々との連携は、地域と国際社会の平和と安定を堅持するために不可欠である。

〈米国とカナダの外交政策〉

米国は、バイデン大統領の下で、2022年にインド太平洋戦略及び国家安全保障戦略を発表し、日本を含む同盟国・同志国と連携しつつ、国際社会が直面する様々な課題に取り組んでいく姿勢を打ち出した。こうした戦略に基づき、米国は積極的に外交活動に取り組み、G7・日米豪印・日米韓・日米比(フィリピン)・日米豪比などでの首脳会談を行い、多国間協力を重視する姿勢をとってきた。

カナダは、2025年のG7議長国を務めることも見据え、G7諸国を始めとする同志国との連携強化を重視するとともに、2022年に発表されたインド太平洋戦略に続いて、2024年4月に改定した国防政策や同年12月に発表した北極外交政策において、引き続きインド太平洋地域及び北極重視の外交姿勢を示した。具体的には、インド太平洋地域では、1年を通じ、「瀬取り」(2)対策や違法・無報告・無規制(IUU)(3)漁業監視活動、各国との共同訓練などにおいて、日本を含む同志国と連携した。北極については、7月、カナダは米国及びフィンランドとの砕氷船建造協力に係る共同声明を発表した。また、12月に発表した北極外交政策では、日本を含む非北極地域国との協力強化も明記された。

経済分野でも、2024年は環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)(4)議長国として、インド太平洋における自由で公正な経済秩序の維持・強化を主導した。

〈日本の対北米外交〉

こうした背景の中、2024年は日本と米国及びカナダの関係が更に深化した年となった。唯一の同盟国である米国との間では、安全保障や経済にとどまらず、あらゆる分野で重層的な協力関係にあり、日米関係はかつてないほど強固で深いものとなっている。日米両国は2024年1月から2025年2月末まで、首脳間で計5回(うち電話会談1回)、外相間で6回(うち電話会談1回)会談を行うなど、あらゆるレベルで常時意思疎通し、連携して地域と国際社会の平和と安定を堅持する努力を尽くしてきている。4月には岸田総理大臣が日本の総理大臣として9年ぶりに国賓待遇で米国を公式訪問し、首脳同士の個人的な信頼関係を深めると同時に、日米両国が深い信頼と重層的な友好関係で結ばれており、二国間や地域にとどまらず、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を共に維持・強化するグローバル・パートナーであることを確認した。9月の日米首脳会談や、11月の石破総理大臣とバイデン大統領との日米首脳会談においても、かつてなく強固になった日米関係を維持・強化するため、日米で緊密に連携していくことで一致した。2025年2月には、石破総理大臣が訪米し、トランプ大統領との間で初めてとなる日米首脳会談を行い、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて緊密に協力し、日米同盟を新たな高みに引き上げていくことを確認した。

また、日本とカナダの間では、2024年1月から2025年1月末まで、首脳間で3回、外相間で4回(うち電話会談1回)会談が行われた。会談では、2022年に両国間で発表した「自由で開かれたインド太平洋に資する日加アクションプラン」を着実に実施し、FOIP実現に向けて引き続き日加間で連携することを確認した。日加共同訓練(KAEDEX24)やIUU漁業監視活動における協力を始め、同アクションプランに基づく安全保障・法の支配などの分野における協力が着実に進展した。また、G7やCPTPPを通じた連携などの多岐にわたる外交の推進を通じて、日加関係はより一層強化された。

(1) ICBM:Intercontinental Ballistic Missile

(2) ここでの「瀬取り」は、2017年9月に採択された国連安保理決議第2375号が国連加盟国に関与などを禁止している、北朝鮮籍船舶に対する又は北朝鮮籍船舶からの洋上での船舶間の物資の積替えのこと

(3) IUU:Illegal, Unreported, Unregulated

(4) CPTPP:Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership

このページのトップへ戻る
青書・白書・提言へ戻る