外交青書・白書
第2章 しなやかで、揺るぎない地域外交

第6節 ロシア・ベラルーシと中央アジア・コーカサス

1 概観

G7・欧州連合(EU)諸国を中心に、引き続き厳しい対露制裁、強力なウクライナ支援が続けられているが、2023年もロシアによるウクライナ侵略という暴挙がやむことはなかった。こうした中、G7・EU諸国とロシアとのハイレベルのやり取りはほぼ実施されていない。侵略以前はロシア産エネルギーの最大の輸出先であった欧州は、輸入を一層減少させた。また、北大西洋条約機構(NATO)は更なる拡大を続けており、フィンランドのNATO加盟が実現したほか、スウェーデンはNATO加盟に向けて大きな進展があった。さらに、ウクライナのEU加盟交渉開始が決定された。このように、ロシアとG7・EU諸国などとの関係は、構造的に大きく変化するに至った。

ロシアは、国際社会から孤立していないと声高に主張し、中国、インド、北朝鮮やグローバル・サウスと呼ばれる途上国・新興国との一層の連携強化を模索しているが、各国・地域の対応は様々である。7月に開催された第2回ロシア・アフリカサミットでは、首脳級が出席した国の数が2019年の第1回サミットから大きく減少した。8月に南アフリカで開催されたBRICS首脳会合では、新たに6か国の加盟が招請され、2024年1月1日にそのうち5か国(アラブ首長国連邦(UAE)、イラン、エジプト、エチオピア、サウジアラビア)が加盟したことを2024年議長国であるロシアが発表し、今後の対応が注目される。

ベラルーシについては、ルカシェンコ大統領がロシアの戦術核兵器のベラルーシへの配備に言及するなど、ロシア支援の姿勢を維持している。

中央アジア・コーカサス諸国については、地政学的及び経済的にロシア、ウクライナ双方と密接な関係にある中で、ロシアによるウクライナ侵略に対し、中立的な立場を維持する姿勢を示している(ウクライナ支持を表明しているジョージアを除く。)。また、エネルギーを始めとする貿易品目の輸送路やロシアへの出稼ぎ労働者からの送金などへの影響が生じており対応に苦慮している。

こうした状況を受け、米国や中国を含む各国が中央アジア5か国との間の首脳級・閣僚級会合を開催するなど、中央アジアとの対話が活発に行われた。また、コーカサス地域では、9月、アゼルバイジャンによるナゴルノ・カラバフにおける軍事活動が発生したが、その後、和平合意に向けた信頼醸成措置の一歩が見られるなど、中央アジア・コーカサス諸国に対する国際社会の注目が集まっている。

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