第8節 アフリカ
1 概観
アフリカは、54か国に13億人を超える人口を擁し、高い潜在性と豊富な天然資源により国際社会の関心を集めている。同時に、アフリカにおいては、紛争や政治的混乱、テロが平和と安定を脅かし、依然として深刻な貧困を含む開発課題を抱えている。アフリカにおけるこれらの課題の克服は、国際社会全体の平和と繁栄にとっても重要である。
新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という。)は、2020年に続き2021年においても、アフリカの経済・社会に引き続き甚大な影響を及ぼしている。アフリカでは、新型コロナの第3波を迎え、累計感染者数は900万人以上に上っている(2021年12月時点)。一方で、世界でワクチン開発が進む中、アフリカ全体におけるワクチン接種率は11%(2021年12月時点)に止(とど)まり、ワクチン接種率の向上が重要な課題となっている。このような状況の中、日本は、4月にアフリカの25か国に対し、ワクチン接種体制を構築する「ラスト・ワン・マイル支援」として、コールド・チェーンの整備や接種能力強化などの支援を行うことを発表した。加えて岸田総理大臣は、12月に行われた東京栄養サミット2021において、アフリカに対し、ワクチン供与を行うとの表明を行った。
また、2021年は、アフリカの複数の地域における政情の不安定化が顕著となった年でもあった。国軍の一部兵士によって暫定政府要人が拘束されたマリ及び大統領が拘束されたギニア、政府とティグライ人民解放戦線(TPLF)との間で武力衝突が発生したエチオピア、国軍が首相などを拘束し、内閣を解散したスーダンは、その例といえる。
日本は、平和と安定の分野における課題に対する取組の一環として、2021年3月、政情不安や新型コロナによる経済・社会への甚大な影響を受け、人道危機に直面するアフリカ7か国に対し、31億7,900万円の緊急無償資金協力を実施した。これは、新型コロナによって経済活動が低迷し、食料危機を含む人道危機に直面している国々に対して食糧支援などを行うことを通じて、地域の不安定化を防ぐことを目的とする取組である。また、第7回アフリカ開発会議(TICAD7)の際に提唱した、「アフリカの平和と安定に関する新たなアプローチ(NAPSA)」の下、紛争・テロ地域の安定化に向けた支援、制度構築・ガバナンス強化や若者過激化防止に向けた支援に取り組んでいる。
新型コロナの影響によって要人の往来が制限される中、2021年には日・アフリカ間で様々なレベルでの人的交流が行われた。
1月には、茂木外務大臣がケニア、セネガルを訪問し、長年にわたって培ってきた日本とアフリカの友好関係を再確認することができた。
また、夏に開催された2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京2020大会」という。)に際しては、ニャンデン南スーダン副大統領を始めとし、サブサハラ・アフリカ27か国から閣僚級の要人が訪日した。オリンピック・ホストタウンを通じた交流は、アフリカと日本の地方自治体の交流を促す契機となった。
日本は、アフリカの「オーナーシップ(自助努力)」と国際社会との「パートナーシップ」を基本理念として、四半世紀を超える歴史を誇るアフリカ開発会議(TICAD)を通じ、長年にわたり、アフリカの発展に貢献してきた。2022年には第8回アフリカ開発会議(TICAD8)が開催される予定である。新型コロナがアフリカの様々な開発課題を浮き彫りとする中、日本はTICAD8を通じ、アフリカ自身が主導する発展を力強く後押しし、ポスト・コロナも見据えたアフリカ開発の針路を示していく(146ページ コラム参照)。