2 東部アフリカ地域
(1)ウガンダ
ウガンダはムセベニ大統領による長期政権の下、安定した内政を背景とした経済成長を維持し、東部アフリカの主要国として地域の安定に貢献している。同国北部に滞在する南スーダン難民も含め、難民の受入れも積極的に行っている。1月には大統領選挙が実施され、現職のムセベニ大統領が6選を果たした。
(2)エチオピア
エチオピアは、アフリカ連合(AU)の本部が所在し、アフリカ政治において重要な位置を占めている。経済面では、アフリカ第2位の人口(1.1億人)を有し、2004年から2019年まで10%前後の高い成長率を記録した(2020年は6%)。首都アディスアベバはアフリカ有数のハブであり、アフリカで唯一日本への航空便(エチオピア航空)が運航している。
2020年11月に中央政府と地方政府のティグライ人民解放戦線(TPLF)との間で武力衝突が発生し、2021年11月には全土に非常事態宣言が発令された。この紛争による国内避難民は940万人に上り、人権・人道問題が深刻な状況にある。日本は、2月に国際機関を通じ660万ドル、12月に1,240万ドルの緊急無償資金協力を決定するなどの人道支援を実施しているほか、国際社会と連携し、事態の早期収拾に向けて取り組んでいる。
(3)エリトリア
エリトリアは、インド洋とスエズ運河・欧州を結ぶ国際航路に位置する国である。鉱物・水産・観光資源に恵まれ、今後、経済成長が見込まれている。2020年11月以降、エチオピア北部情勢が悪化する中で、地域の安定にエリトリアの果たす役割は重要である。日本は2022年1月、首都アスマラに在エリトリア兼勤駐在官事務所を開設した。
(4)ケニア
ケニアは、東アフリカの大国として地域の平和と安定に貢献するとともに、日本企業のアフリカ進出のゲートウェーとしての役割を担う。1月にケニアを訪問した茂木外務大臣がケニヤッタ大統領を表敬し、オマモ外務長官などと会談を行った。
12月には第2回日・アフリカ官民経済フォーラムの分科会が首都ナイロビと日本をオンラインで結び開催され、日本とアフリカの企業や政府の関係者が参加し、アフリカビジネスの促進について議論した。本フォーラムにおいては、同月に日本とケニアの間で署名された「アフリカ健康構想」の協力覚書が発表され、ヘルスケア分野における民間企業などの活動促進への期待が示された。
(5)コモロ連合
コモロ連合は、インド洋に位置する島嶼(しょ)国で、水産資源に恵まれたイスラム教国である。アザリ大統領の下、「2030年コモロ新興国プラン」を掲げ、観光、交通、保健、エネルギーなどを優先分野として開発を推進している。
(6)ジブチ
ジブチは、インド洋を挟んでヨーロッパとアジア諸国を結ぶ世界貿易の大動脈に面し、地域の物流ハブを目指している。また、国際安全保障上の拠点であり、「自由で開かれたインド太平洋」を実現する上でも重要な国である。2011年から海賊対処行動のための自衛隊の拠点を設置するなど、二国間関係は非常に良好である。
4月には大統領選挙が実施され、現職のゲレ大統領が5選を果たした。5月には初となる海賊対処行動に関する日EUジブチ共同訓練が実施された。
(7)スーダン
スーダンは、原油やナイル川の水資源や肥沃な耕地に恵まれているが、1956年の独立から計40年に及び内戦が続いた。また、2019年に30年間続いたバシール政権が、物価上昇に対するデモが発端で崩壊した。同年、国軍と文民の合意に基づき、民政移管を目指す暫定政府が発足した。国際社会はこの動きを支援し、2021年5月にはマクロン・フランス大統領が支援会合を主催した。これに先立ち、鷲尾英一郎外務副大臣がマリアム外相とオンライン会談を行った。しかし10月、国軍が政権を奪取し、内閣を解散した。これに対し、民政移管を求める民衆によるデモが続いている。日本は国際社会と連携し、民政移管プロセスへの回帰を求めている。
(8)セーシェル
インド洋の島国セーシェルは、2020年の民主的政権交代以後も安定した政治状況を維持している。新型コロナ流行後アフリカでいち早くワクチン接種を進め、国民の高い接種率(2回目接種完了者は約80%)を誇る。訪問客数の減少は、観光を経済の柱とする同国に影響を与えているが、2021年は回復を見せた。
(9)ソマリア
ソマリアは、2012年に21年ぶりに正式な連邦政府を樹立したが、人道危機のほかアル・シャバーブによるテロなどの問題を抱え依然として国内情勢は不安定である。2021年2月に実施予定であった大統領選挙は同年中に実施されなかった。
(10)タンザニア
東南部アフリカの平和と安定を支えるタンザニアは、長年にわたり高い経済成長率を維持している。近年では、民間企業の進出意欲も高く、特に経済、開発協力の面において日本との二国間関係は緊密化してきている。3月のマグフリ前大統領の逝去を受け、4月に初の女性大統領としてサミア大統領が就任した。
10月には小説家のアブドゥルラザク・グルナ氏がタンザニア出身者として初となるノーベル文学賞を受賞した。
(11)ブルンジ
ブルンジは、2015年5月に国軍によるクーデター未遂事件以降、国内の人権・治安状況の悪化が続いていたが、2020年6月に就任したンダイシミエ大統領は、国際社会との融和路線を進め、国内・地域の安定化の流れを生み出した。こうした中、米国は2021年11月に対ブルンジ制裁を解除する大統領令を発出した。
(12)マダガスカル
マダガスカルは、アフリカ東南部沖に位置する島国である。経済面では、日本企業によるアフリカ最大規模の鉱山投資であるニッケル・コバルト地金の一貫生産事業が経済に貢献している。
同国南部は干ばつによる食料危機が深刻となっており、2月、300万ドルの緊急無償資金協力による食料支援などの人道支援を実施した。
(13)南スーダン
南スーダンは2021年に独立10周年を迎え、2018年9月に紛争当事者間で署名された合意に基づき、民政移管プロセスの準備を進めている。州知事の任命や上下院の再編など一定の進捗が見られるが、統一軍の再編などの課題も多い。日本は、平和と安定の実現に向けた南スーダン政府の努力を後押しするため、政府間開発機構(IGAD)などを通じた和平プロセス履行支援を行っている。7月の東京2020大会開会式に際してニャンデン副大統領が訪日し、菅総理大臣に表敬を行った。また、南スーダンは11月に駐日大使館を開設した。

(7月22日 写真提供:内閣広報室)
(14)モーリシャス
インド洋の要衝に位置するモーリシャスは「自由で開かれたインド太平洋」の推進に重要な国である。2020年、貨物船ワカシオ油流出事故を受けて、茂木外務大臣からジャグナット首相にモーリシャスの復旧と復興のための中長期的な支援を行ったが、その一環として2021年2月及び8月に海難防止を目的とした機材の供与を決定した。
(15)ルワンダ
ルワンダでは2017年に3選を果たしたカガメ大統領のリーダーシップの下、経済開発及び国民融和に向けた努力が続けられている。近年、特に情報通信技術(ICT)分野において急速な発展が見られ、日本企業の進出も増加している。
6月にはG20外相及び開発大臣関連会合の機会に茂木外務大臣とビルタ外務・国際協力相との間で外相会談を実施した。また、両大臣は8月にも電話会談を実施し、ビジネス関係を含む様々な分野における二国間関係が一層深化することへの期待を述べた。
