外交青書・白書
第3章 国益と世界全体の利益を増進する経済外交

2 アジア太平洋経済協力(APEC)

APEC1は、アジア太平洋地域の21の国・地域2が参加する経済協力の枠組みである。アジア太平洋地域は、世界人口の約4割、貿易量の約5割、GDPの約6割を占める「世界の成長センター」であり、APECはこの地域の貿易・投資の自由化・円滑化に向け、地域経済統合の推進、経済・技術協力などの活動を行っている。国際的なルールに則(のっと)り、貿易・投資の自由化・円滑化と連結性の強化によって繁栄するアジア太平洋地域は、日本が志向する「自由で開かれたインド太平洋」の中核である。日本がAPECに積極的に関与し、協力を推進することは、日本の経済成長や日本企業の海外展開を後押しする上で大きな意義がある。

2020年はマレーシアが議長を務め、「共有された繁栄の強靱な未来に向けた、人間の潜在能力の最適化:方向修正・優先付け・進歩」という全体テーマ、及び①貿易・投資の意義の説明(ナラティブ)の改善、②デジタル経済と技術を通じた包摂的な経済参画、③革新的な持続可能性の推進という三つの優先課題の下、3月以降は全てテレビ会議形式となったものの、年間を通じて様々な会合で議論が進められた。

初のテレビ会議形式で開催された11月20日の第27回APEC首脳会議では、3年ぶりに首脳宣言が採択されたことに加え、「ボゴール目標」3後のAPECの方向性を表す「APECプトラジャヤ・ビジョン2040」が採択され、アジア太平洋地域におけるAPECの存在感を示した。このビジョンは、貿易・投資、イノベーションとデジタル化、そして、力強く、均衡ある、安全で、持続可能かつ包摂的な成長という経済的推進力により、「全ての人々と未来の世代の繁栄のために、2040年までに、開かれた、ダイナミックで強靱かつ平和なアジア太平洋共同体」を目指すものである。

首脳会議に出席した菅総理大臣は、ウィズコロナ・ポストコロナの経済成長に向け、デジタル化と脱炭素社会の実現、自由貿易の推進と連結性の強化、包摂的な経済成長を強調した。特に、デジタル庁の設立や、2050年までの「カーボンニュートラル」実現に向けた「環境と成長の好循環」の加速を表明したほか、WTO改革、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)実現に向けた地域経済統合の更なる推進、サプライチェーンの強靱化及び質の高いインフラの普及・実践の牽引(けんいん)による連結性の強化、並びに人間の安全保障の概念に立脚する取組を強化する日本の考え方を発信した。2021年は、ニュージーランドが議長を務めることとなっている。

第27回APEC首脳会議の成果
APEC首脳会議で発言する菅総理大臣(11月20日、東京 写真提供:内閣広報室)
APEC首脳会議で発言する菅総理大臣
(11月20日、東京 写真提供:内閣広報室)
第27回APEC首脳会議の成果

1 APEC:Asia Pacific Economic Cooperation

2 APEC用語では国・地域を「エコノミー」と呼んでいる。

3 先進エコノミーは遅くとも2010年までに、途上エコノミーは遅くとも2020年までに、自由で開かれた貿易及び投資を達成するとの目標。1994年のAPEC首脳会議において採択された。

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