G20 大阪サミット
2019年6月28日から29日に開催されたG20大阪サミットは、日本外交の歴史上最大規模の首脳会議となりました。本特集では、大阪サミットの成果や取組を紹介します。(231ページ 第3章第3節2(3)参照)
G20とは?
G20(Group of Twenty)は、2008年9月のリーマン・ショック後の経済・金融危機に対処するため、主要先進国・新興国の首脳が一堂に会するフォーラムとして発足しました。G20各国のGDPが世界経済全体に占める割合は8割以上にも上ります。「国際経済協調の第一のフォーラム」としてのG20の重要性はますます高まっており、世界経済や貿易のみならず、開発、気候変動・エネルギー、保健などの地球規模課題について、原則として毎年、輪番制の議長国の下で議論が行われています。
日本が初めて議長国に
2019年、日本は初めてG20議長国を務め、大阪サミットのほか、各地で8つの関係閣僚会議を主催しました。中でも、安倍総理大臣が主催した大阪サミットでは、国際貿易や地球環境問題、デジタル経済など、各国の利害が複雑に入り組んだテーマについて首脳間で活発な議論が行われ、成果文書として「大阪首脳宣言」が採択されました。
大阪サミットの主要な成果
大阪サミットでは、多くの成果が得られました。例えば、各国の首脳は、貿易紛争が相次ぎ、国際的な自由貿易の在り方が大きく問われている現状を踏まえ、自由貿易の諸原則を確認するとともに、WTO改革に合意しました。加えて、データ活用の基盤となる「信頼性のある自由なデータ流通(Data Free Flow with Trust: DFFT)」の考え方を共有したほか、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」や、海洋プラスチックごみ削減に向けた「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」など、多くの分野でG20としての力強い意思を世界に発信しました。さらに、データ・ガバナンスに関する国際的なルール作りを進めるための「大阪トラック」も立ち上げました。
6月28日、大阪市(写真提供:内閣広報室)
(左下の白米は福島産)6月28日、大阪市
日本の魅力を世界に
大阪サミットは、参加する首脳陣に対するおもてなしや、日本食材・文化の紹介を通じ、日本の魅力を世界に発信する重要な機会ともなりました。
首脳夕食会やワーキング・ランチでは、辻調グループ(調理師学校などを運営)代表の辻芳樹氏の総合監修の下、「サステイナビリティとガストロノミー*の融合」をテーマに、多様な文化的背景を持つ賓客に楽しんでいただける「世界基準の日本料理」を提供しました。地元関西産の食材をふんだんに活用しつつ、東日本大震災からの復興途上にある被災地産食材を取り入れることにより、日本産食品の魅力や安全性の広報にも努めました。
また、各国首脳夫妻一人ひとりのニーズに応えたきめ細かいおもてなしを行いました。嗜好(しこう)やアレルギー、宗教などを調査し、イスラム教にのっとったハラール食を始めとする多様なメニューを提供したほか、卓上のメニュー表記を全首脳夫妻の母国語に翻訳し、ゆっくりと食事を楽しんでいただけるよう努めました。また、日本各地から集まった選(よ)りすぐりのバトラー(給仕)による精緻を極めたサービスも、参加者から好評を得ました。
夕食会に先立って開催された文化行事では、各国首脳夫妻は、野村萬斎氏、辻井伸行氏、中丸三千繪(みちえ)氏による「日本の伝統と多様性」をテーマとした演目を鑑賞しました。中でも、辻井氏によるピアノ演奏「花は咲く」では、背景画像の中で東日本大震災の惨禍とこれまでの復興の歩み、そしてG20参加国から差し伸べられた支援に対する感謝のメッセージを示しました。
* 持続可能性と食文化
6月28日、大阪市
ピアニスト・辻井伸行氏(上)、狂言師・野村萬斎氏(中)、オペラ歌手・中丸三千繪氏(下)
国際メディアセンターでの取組
大阪サミット会場内の国際メディアセンターでは、政府広報展示ブースを設置し、日本の革新的技術を紹介しました。
また、各国記者の目の前で調理を行うライブキッチンでは、たこ焼きや串かつなどの大阪名物の試食や日本酒の試飲を提供しました。
こうした体感型の広報を通じて、外国メディアに日本の魅力をよりよく理解してもらうことができました。
G20愛知・名古屋外務大臣会合を経て
大阪サミットを受け、11月には、日本のG20議長年の集大成としてG20愛知・名古屋外務大臣会合を開催。大阪サミットの成果を再確認し、2020年以降の具体的な取組につなげるための「跳躍台」とすることができました。今後は、大阪サミットの成果を具体的な行動に移していくための実行力が求められます。日本は、2020年のG20議長国のサウジアラビアと共に、引き続きG20でリーダーシップを発揮していきます。
11月22日、名古屋市
11月23日、名古屋市