外交青書・白書
第4章 国民と共にある外交

第1節 世界とのつながりを深める日本社会と日本人

総論
〈外国人の活力を日本の成長へ〉

日本と外国との間で人の往来を増やすことは、経済の活性化や異文化間の相互理解につながる。このような考えから、外務省は、外国人の日本への入国や円滑な滞在のための利便性の向上を図っている。

政府は「観光は、真に我が国の成長戦略と地方創生の大きな柱である」との認識の下、観光立国推進を重視しており、その一環として外務省は戦略的にビザ(査証)の緩和を進めている。日本の多様な魅力の発信を含めた観光客誘致の取組などの様々な要因もあいまって、2016年の訪日外国人数は約2,400万人に達し、初めて年間2,000万人を突破した。外務省は「世界一安全な日本」を維持しつつ訪日外国人を増やすとともに、富裕層、リピーター及び若年層の誘致等、質量両面で観光立国に貢献できるよう取り組んでいる。

日本経済の更なる活性化を図り、競争力を高めていくためには、国内外の有能な人材の確保が重要である。「『日本再興戦略』改訂2016」では、外国人材の活用が掲げられており、外務省は、その実現のため、外国人材の人権にも配慮した効果的な制度・施策となるよう、関係省庁と協力している。また、外国人の受入れや社会統合に伴う具体的課題や取組について、国民的議論の活性化に努めている。

〈国際機関と日本人〉

国際機関には、様々な国籍の職員が集まり、それぞれの能力や特性を生かして、地球規模課題を解決するために活動している。

日本は、財政的・知的貢献に加え、人的貢献も行ってきている。より多くの日本人が国際機関で活躍すれば、国際社会における日本のプレゼンス強化につながることが期待され、日本の人的資源も豊かになる。

外務省は、国際機関で活躍・貢献できる人材の発掘・育成・支援・情報提供などを実施しており、優秀な日本人が世界で活躍できる環境作りに一層積極的に取り組んでいく。

〈NGOとボランティア〉

近年、政府以外の主体の力を生かし、オールジャパンでの外交を展開する観点から、開発途上国などに対する支援活動の担い手や政策提言を行うチャンネルとして、非政府組織(NGO)の重要性がますます高まっている。保健、水・衛生、教育、防災、環境・気候変動や難民・被災民に対する緊急人道支援など、日本が得意とし、国際社会に貢献できる分野において日本のNGOが果たす役割は大きい。外務省は、NGOを開発協力における重要なパートナーと位置付け、資金協力、活動環境整備支援、対話などを通じて、連携強化に努めている。

青年海外協力隊(JOCV)やシニア海外ボランティア(SV)などの国際協力機構(JICA)ボランティア事業の参加者は、派遣された国・地域で、現地の人々と同じ目線で開発課題の解決に向け一緒に汗を流して取り組んでおり、国際協力の重要な担い手である。こうした事業は、日本の「顔の見える開発協力」を代表する取組として、各国政府関係者を始め現地の人々から高い評価と感謝が寄せられており、現地の経済・社会の発展のみならず、日本とこれらの国・地域との間の相互理解や友好親善の促進にも大きな役割を果たしている。また、帰国したボランティア事業参加者は、その経験を生かしながら国内外で活躍しており、ボランティア経験の社会還元の観点からもこれら事業の意義は大きい。

〈地方自治体などとの連携〉

地方創生は内閣の最重要課題の1つであり、外務省としても「地方を世界へ」をスローガンに、地方の魅力を世界に発信するとともに、多くの観光客や投資を呼び込むべく、省を挙げて取り組んでいる。国内では、地方自治体と連携して日本の地方の魅力を駐日外交団等に発信する「地域の魅力発信セミナー」や「地方視察ツアー」、外務省の施設である飯倉公館を活用した地方創生支援プロジェクト等を実施したほか、外務大臣が駐日外交団と共に地方を訪れるプロジェクトを開始した。海外では、日本の地方自治体が観光分野を含む地方の魅力を発信し、地場産業や地域経済の発展を図るための支援策として、在外公館施設を活用した「地方の魅力発信プロジェクト」を実施した。また、引き続き「風評被害対策海外発信支援事業」により、東日本大震災後の風評被害の払拭を目的に複数の自治体と連携してPR事業等を実施した。このほか、各地の日本産酒類を在外公館を通じて積極的にアピールする取組や、ODAを活用した地方自治体・地方の中小企業の海外展開支援を行っている。

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