1 外国人の活力を日本の成長につなげる取組
(1)成長戦略とビザ(査証)緩和
2016年の訪日外国人は約2,400万人に達し、初めて年間2,000万人を突破した。訪日外国人数について、政府は、2016年3月末の「明日の日本を支える観光ビジョン」の中で、2020年に4,000万人、2030年に6,000万人という新たな目標を設定した。同ビジョンでは、訪日に際してビザが必要な国・地域のうち、観光客誘致の潜在的に大きな市場である中国、ロシア、インド、フィリピン及びベトナムの5か国に対し戦略的にビザ緩和を実施していくことが示され、その具体的な内容が5月の観光立国推進関係閣僚会議の「観光ビジョン実現プログラム2016」において発表された。これらを踏まえ、外務省は2016年にこの5か国を中心に、また、それ以外の国についても、人的交流の促進や二国間関係の強化等の観点から戦略的にビザ緩和を検討・実施した。具体的には、1月11日からインド向け数次ビザの緩和、2月15日からベトナム及びインド向け商用数次ビザの緩和、10月3日からカタール向け数次ビザの導入、10月17日から中国向け商用数次ビザの緩和及び学生等に対するビザ申請手続の簡素化を実施した。また、11月のモディ・インド首相の訪日に際し、インドの学生等に対するビザ申請手続の簡素化及びビザ申請窓口の拡大を発表し、2017年2月から実施している。さらに、12月のプーチン・ロシア大統領訪日に際しては、ロシア向けに観光目的等のための数次ビザの導入等につき、2016年12月16日に発表し、1月1日から開始した。
このように人的交流の促進や日本経済の成長に一定の効果が見込まれるビザ緩和は、その一層の拡大が期待されている。その一方で、犯罪者や不法就労を目的とする者、又は人身取引の被害者となり得る者等の入国を未然に防止するため、水際対策の一環としてビザ審査の厳格化も行っている。外務省としては、「世界一安全な日本」を維持しつつ訪日外国人を増やすとともに、富裕層、リピーター及び若年層の誘致等、質量両面で観光立国に貢献していくことを目指し、二国間関係、外交上の意義などを総合的に勘案し、今後もビザの緩和に積極的に取り組んでいくこととしている。
(2)外国人受入れ・社会統合をめぐる取組
2008年のリーマン・ショックを契機に、日本に長期滞在する外国人の数は減少傾向にあったが、2012年を境に増加傾向に転じている。少子高齢化や人口減少が進行しつつある中、日本経済の更なる活性化を図り、競争力を高めていくためには、有能な人材を国内外問わず確保することが重要である。「『日本再興戦略』改訂2016」では外国人材の活用が掲げられており、今後、日本に滞在する有能な外国人がますます増えていくことが期待される。
外務省は、こうした一連の施策が外国人の人権面にも配慮した効果的なものとなるよう、関係省庁と協力している。また、外務省は、「外国人の受入れと社会統合に関する国際ワークショップ」を開催し、具体的課題や取組について国民参加型の議論の活性化に努めている。2月に開催した同ワークショップ(外務省、品川区及び国際移住機関(IOM)共催)では、「外国人と企業のダイバーシティ経営~住み心地よいですか、ニッポンの企業」をテーマに、日本企業における外国人の受入れ環境や日本人と外国人の協働の在り方について議論を行った。

6月には、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催などを視野において、災害時における外国人観光客の安全・安心をテーマに据え、東京都との共催で「在京大使館等向け防災施策説明会」を実施した。