1 外国人の活力を日本の成長につなげる取組
(1)成長戦略とビザ(査証)緩和
2015年の訪日外国人は約1,974万人に達し、2年前に1,000万人を初めて超えてから更に2倍近く伸び、2020年までの2,000万人の目標を大幅に前倒しして達成する可能性も視野に入ってきた。こうした中、外務省は2015年も、観光立国推進や地方創生の取組に加え、人的交流の促進に貢献すべく、2013年、2014年の東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国に対するビザ緩和に引き続き、訪日客が多く見込まれる国などに対し、ビザ発給要件の緩和などを実施した。具体的には、1月19日から中国向け数次ビザ発給要件の緩和、6月15日からブラジル向け数次ビザの導入及び8月10日からモンゴル向け数次ビザの導入を実施した。また、12月の安倍総理大臣のインド訪問の際に、前年導入したインド向け数次ビザ発給要件の大幅緩和を2016年1月11日から実施することを発表した。
このように人的交流の促進や日本経済の成長に一定の効果が見込まれるビザ緩和は、その一層の拡大が期待されている。一方で、犯罪者や不法就労を目的とするなど好ましからざる外国人又は人身取引の被害者となり得る者の入国を未然に防止するため、水際対策の一環としてビザ審査の厳格化も行っている。外務省としては、「世界一安全な日本」を維持しつつ訪日外国人を増やし、富裕層、リピーター及び青年層の誘致など質量両面で観光立国に貢献していくことを目指し、二国間関係、外交上の意義などを総合的に勘案し、今後もビザの緩和に取り組んでいくこととしている。
(2)外国人受入れ・社会統合をめぐる取組
2008年のリーマン・ショックを契機に、日本に長期滞在する外国人の数は減少傾向にあったが、2012年を境に増加傾向に転じている。少子高齢化や人口減少が進行しつつある中、日本経済の更なる活性化を図り、競争力を高めていくためには、有能な人材を国内外を問わず確保することが重要である。「『日本再興戦略』改訂2015」では外国人材の活躍促進が掲げられており、今後、日本に滞在する有能な外国人がますます増えていくことが期待される。
外務省は、こうした一連の施策が外国人の人権面にも配慮した効果的なものとなるよう、関係省庁と協力している。また、外国人の受入れと社会統合に関する国際ワークショップを開催し、具体的課題や取組について国民参加型の議論の活性化に努めている。2月に開催したワークショップ(外務省、葛飾区、国際移住機関(IOM)共催)では、「医療分野における外国人と外国人材~コトバと文化の壁を越えて~」をテーマに、医療通訳や外国医療人材活用の方向性などについてグローバルな時代における医療の在り方を中心に議論を行った。
9月の防災週間には、東日本大震災の教訓を踏まえ、「在京外交団向け防災セミナー」を実施した。総務省、観光庁のほか、自治体関係機関や民間機関などの参加を得て、情報技術(IT)を活用した在留外国人の災害時安否確認と情報提供のためのスマートフォン・アプリの開発など関係機関の取組を紹介した。