第143代外務大臣に就任してから、1年3か月余がたちました。この間、外交の現場で奮闘する中で強く実感したのは、自由、民主主義、基本的人権、法の支配を重視し、世界全体の平和と繁栄の実現のためひたむきに努力するという日本の姿勢に対して、国際社会の支持が着実に広がっているということです。2020年オリンピック・パラリンピック東京開催の決定という大きな喜びを国民の皆様と共に手にすることができたのは、そのことの証左でもあります。日本経済の回復と併せ、2013年は、日本が世界の中で存在感と自信を取り戻してきた1年であったと感じています。
これまで、日米同盟の強化、近隣諸国との協力関係の重視、日本経済の再生に資する経済外交の強化という三本柱に基づき国益の増進を図り、着実な進展を得ることができました。また、地球規模の課題においても、核軍縮・不拡散の分野を始めとして、「女性が輝く社会」の実現や国際開発課題、シリア情勢の改善やイラン核問題の解決など、多岐にわたる分野で日本ならではの貢献を行い、多くの成果を上げることができました。
我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増していますが、国家安全保障戦略に示されたとおり、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、世界の平和と安定、そして繁栄にこれまで以上に積極的に貢献してまいります。来年は戦後70周年、国際的にも開発課題、気候変動、軍縮、防災等、様々な分野で重要な節目の年となります。国益と世界全体の利益を増進し、国際社会における日本外交の存在感を一層力強く示していくことが、引き続き外務大臣としての使命であると考えています。
平成26年版外交青書(外交青書2014)は、第1章で2013年の国際情勢と日本外交の戦略的展開を振り返り、第2章では、地球儀を俯瞰(ふかん)する外交、第3章では、国益と世界全体の利益を増進する外交について、それぞれ2013年の重要な出来事を記述しました。また、第4章の国民と共にある外交では、世界とのつながりを深める日本社会や日本人とそれを支援する外務省の取組、日本の立場や考え方に関する機動的かつ効果的な情報発信の体制強化や外交実施体制の強化について説明しています。
この外交青書が、皆様にとって最新の国際情勢と日本外交について理解を深める一助となるとともに、世界の平和と繁栄にこれまで以上に積極的に貢献する日本の姿を広く発信する機会となることを心から期待します。
岸田文雄