目次 > 外交青書2011(HTML)目次 > 第4章 国民と共にある外交 第3節 国民への情報発信と地域・社会の国際化

第3節 国民への情報発信と地域・社会の国際化

総論

外交政策の遂行には、国民の理解と支持が不可欠であり、政策の具体的内容や政府の役割などについて、タイミング良く、分かりやすい説明を行うことが重要である。このため外務省は、新聞・雑誌・テレビ・インターネットなど、各種メディアを通じた情報発信や国民への直接の情報発信に努めている。

具体的には、外務大臣、外務副大臣、外務報道官のいずれかによる記者会見を原則毎日行っている他、外務大臣談話、外務報道官談話や外務省報道発表を随時発出している。また、それらの情報発信に加えて、政務三役がテレビなどに積極的に出演し、国民に対し外交政策を直接説明するよう努めている。

さらに、外務省ホームページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/)を充実させ、的確で迅速かつ分かりやすい情報の発信に取り組んでいる。2010年に日本で開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)では、インターネット上に専用ホームページを開設し、動画サイトにAPEC用の公式チャンネルを設置し動画を配信するなど、国民に分かりやすい形での情報発信に努めた。さらに、2010年12月から、外務省ホームページに「外務大臣コーナー」を設け、外務大臣の活動を動画や地図などを用いて分かりやすく紹介している。また、外務省ホームページでの英語による情報発信や在外公館ホームページでの現地語による情報発信など、多言語による情報発信も重視している。

「国民と対話する広報」として、外務大臣による講演会を国内各地で開催している他、外務省員が全国の大学や高校で講演や討論会を実施している。2010年9月には、外交に関する活発な議論を喚起するために外交専門誌「外交」を創刊した。さらに、外務省ホームページの「ご意見・ご感想コーナー」や世論調査などの広聴活動を通じて、国民との双方向コミュニケーションの向上にも努めている。

外務省は、更に国民に対する説明責任を果たすため、他国との信頼関係などに配慮しつつ、情報公開を行っている。2010年6月には、有識者の参加を得て「外交記録公開推進委員会」を発足させ、作成から30年以上が経過した外交文書の円滑かつ迅速な公開に努めている。

また、幅広い分野で良好な国際関係を育てていく上で、地方・地域の役割は大きい。近年、地方自治体や地方の団体、市民による取組は幅広くかつ活発に行われ、国際社会で高い評価を得ている。国際的相互理解、信頼関係の構築、日本のブランド力強化などの観点から、地方・地域は、極めて重要な外交プレーヤーとしての役割を果たしている。

この現状を踏まえ外務省は、地方・地域を外交を推進していく上での重要なパートナーであると位置付け、オールジャパンでの総合的外交力の強化を目指しており、そのために、①情報共有と意思疎通の強化、②重要外交政策の地方と共同での推進、③地方による国際的取組との連携に重点を置きつつ、地方自治体などとの様々な連携策を実施している。これにより、地方の活性化や地域社会の問題の解決にも貢献することを目指している。

一方で、日本に入国・滞在する外国人の増加のための取組も重要である。日本に入国する外国人は、2010年には年間約944万人に上り、2000年(約527万人)に比べ約2倍近くとなった。また、日本に長期滞在する外国人(外国人登録者)の数も、2009年末で約219万人に上り、2000年(約169万人)の約1.3倍と増加している。

査証(ビザ)は、入国管理上問題ないと見られる外国人に対し、在外公館において発給するものである。査証を発給された外国人は、入国に際し、原則有効な旅券及び査証を提示し、日本の出入国港において入国審査を受ける必要がある。外務省は、上述の来日外国人の増加を踏まえ、入国管理上問題ないと見られる外国人観光客や商用客などを対象に、査証発給の迅速化に努めている。一方で、外国人の不法就労や人権侵害が疑われる場合は、厳格な審査を行っている。なお、中国に対しては、団体観光査証に加え、2009年7月から個人査証の発給を開始しており、政府による観光立国への取組を踏まえて、2010年7月から個人査証の発給要件を緩和している。こうした政府の取組などにより、2010年7月から12月の査証発給数は、約3.6万人(速報値)と、2009年の同時期と比較して約4.6倍増加した。

2010年6月に閣議決定された「新成長戦略」に基づき、2011年1月からは、新たに創設した「医療滞在ビザ」の運用を開始し、治療などの目的で外国人が日本に入国しやすくするための措置を講じている。

また、日本に長期滞在する外国人の増加に伴い、国内では教育、雇用、住居などの分野において様々な問題が生じている。外務省は、このような外国人問題に取り組むため、2005年から地方自治体、国際移住機関(IOM)などと共同で、国際シンポジウムや国際ワークショップを開催している。

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