各論

1 海外における日本人への支援

(1)海外における危険と日本人の安全

海外における日本人の活動分野が広がりを見せ、その活動地域も拡大している一方で、日本人が海外において遭遇する危険もまた多様化している。近年では、紛争や暴動による政情や治安の悪化、テロや誘拐の他、地震や洪水を始めとする大規模自然災害など突発的に起きる緊急事態、山・海あるいは交通機関での事故、麻薬犯罪や国際詐欺、更には文化や宗教などの違いから、知らぬ間に現地の法令や慣習に反して犯罪や事件に巻き込まれてしまう事案などが多く発生している。

外務省及び在外公館は、多くの日本人が海外で安心して生活・活動できるよう、海外の様々な脅威や危険を分析し、平素の心構えと安全対策に役立つ情報を発信するとともに、邦人援護などの支援体制を強化している。また、事件の予防及び発生後の的確な対応をより効果的に実施するために、諸外国や関係省庁、民間企業・団体との連携や協力の下、日本人の安全対策及び援護態勢の構築に努めている。

ア 2010年における海外の脅威の動向

2010年は、海外におけるテロや誘拐の多発、自然災害の広域化が顕著であった。テロについては、中東や南アジアを中心に、治安当局やその他の政府の施設を狙った襲撃や、公共交通機関、宗教施設、市場など人が集まる場所で一般市民を狙った無差別爆弾テロが引き続き発生した。また、5月に米国・ニューヨークで爆弾テロ未遂事件が発生したことや、10月にイエメン発米国行き航空貨物から爆発物が発見されたことなどを受け、欧米に対するテロ攻撃への懸念から各国が警戒を強めたり、航空保安措置が強化されるなどの措置がとられた。こうした中、12月には、スウェーデンの首都ストックホルム中心部で自爆テロに関連すると見られる爆発事件が発生した。誘拐については、3月にコロンビアで日本人永住者が誘拐され、約5か月間にわたって拘束された事件が起きた他、4月にアフガニスタンで日本人ジャーナリストが誘拐され、約5か月後に解放された事件などが発生した。

また、引き続き海賊行為による船舶への被害が多発している。日本関係船舶への被害については、4月に、ソマリア沖のアデン湾近くで、日本企業が運航するコンテナ船が、海賊と見られる不審船の銃撃を受け被弾するなど、2010年には少なくとも15件1の被害が発生した。5月には、アデン湾において、多数の日本人が乗船する民間旅客船が海賊と見られる2隻の不審船に接近される事案も発生した。また、海賊行為は、近年被害が多発しているソマリア・アデン湾周辺海域のみならず、アラビア海、インド洋へも拡大しており、ケニア沖、セーシェル沖、マダガスカル沖を含む広大な海域が脅威にさらされている。10月10日には、ケニアのモンバサ沖において、日本の海運会社が運航する船舶が海賊に乗っ取られる事件が発生した。

感染症については、2009年に発生した新型インフルエンザ(A/H1N1)の世界的流行に関し、世界保健機構(WHO)が2010年8月に収束を発表した。しかし、デング熱やマラリアなど蚊が媒介する感染症、コレラなどの汚染された水・食品などを介する感染症などが引き続き世界各地で流行している。

自然災害については、1月にハイチでマグニチュード7.0の地震が起きた他、2月にはチリでマグニチュード8.8の巨大地震が発生し、大規模かつ深刻な被害が生じた。さらに、インド洋・太平洋地域を中心にマグニチュード7を超える大規模地震が年間を通して発生した。また、2011年2月に発生したニュージーランド南島地震では、日本人留学生が多く利用していた語学学校が倒壊するなど、多数の日本人が被災した。外務省は、地震発生直後から現地対策本部及び外務省内に緊急対策本部を立ち上げるとともに、被災された方に対する支援はもとより、ご家族に対しても、現地及び外務省内に家族支援チームを設置し、支援や情報提供を実施した。さらに、ハリケーンなどによる集中豪雨は大規模かつ長期化し、例年被害が発生する中米・カリブ地域諸国の他、パキスタン、インド、中国や東南アジア各国、オーストラリアなどでも深刻な被害をもたらした。上記に加え、4月に発生したアイスランドの火山活動による噴煙が欧州の上空広範囲に拡散したため、欧州発着の航空便の多くが運休し、日本人を含む多くの旅客の移動に混乱を来した。11月にはインドネシアでの火山活動により、多数の死傷者が出た他、ジャカルタを含む航空便発着に影響が及んだ。このように自然災害は2010年にも近年と同様猛威を振るい、発生地域及び被害規模が更に拡大する傾向が見られた。

政情不安による治安悪化については、2008年以降続いてきたタイの政情不安が2010年にはピークに達し、バンコクにおける反政府行動が4月から5月にかけての市内中心部の占拠と治安部隊との衝突を通じて反政府グループが敗走する形で結末を迎えた。その過程で取材中の日本人カメラマンが死亡した。また、9月から10月にかけては、尖閣(せんかく)諸島周辺領域内での中国漁船による日本の巡視船に対する衝突事件を受け、中国各地で日本に対する抗議デモが多く発生し、日系企業や日本食レストランなどに向け、投石などの被害が発生した。12月にはコートジボワールにおいて行われた大統領選挙の後も前大統領と新大統領との対立が激化し、在留邦人の安全確保のため、同月20日、同国に対する危険情報を「退避を勧告します。」に引き上げた。

さらに、2011年1月にはチュニジア、エジプトにおいて、長期政権に不満を持つ民衆による自由化、民主化を求める大規模抗議デモが発生し、チュニジアでは政権の崩壊に発展した他、治安維持のための夜間外出禁止令などの措置や空港における商用便の一部停止などに伴い、多くの日本人旅行者の出国に影響を及ぼす結果となった。このため、両国に対する危険情報を「渡航の延期をお勧めします。」に引き上げるとともに、早期の出国を呼び掛けた。なお、エジプトにおいては空港に足止めされた日本人旅行者約500人に対し、政府チャーター機による退避及び民間航空機での出国支援を行った。また、リビア及びイエメンにおいても、情報の変化に応じて順次危険情報を引き上げ(最終的に「退避を勧告します。渡航を延期してください。」を発出)、早期出国を促すとともに、出国支援を行った。

海外において、麻薬密輸・取引などへの関与や麻薬所持の容疑で、日本人が逮捕・拘留される事案が増加しており、その数は2010年1月現在で未決・既決を問わず89人に上っている。このうち中国においては、2010年4月、麻薬密輸により死刑が確定していた日本人4人の死刑が執行された以降にも、多くの日本人が麻薬関連容疑で逮捕された。また、10月にはイタリアにおいて多量の違法薬物を所持・販売した容疑により、日本人2人が逮捕された。このため、違法薬物に係る注意喚起などによる、日本人の海外旅行者などに遅滞する啓発が急務となっている。

近年の傾向として海外出国者が減少する中、60歳以上の世代の海外出国者数は増加しているが、同時に海外で山岳・海難事故に遭ったり、旅行中の疾病などにより、入院・治療を必要とする高年齢者に対する援護事例も多く報告されており、こうした高年齢者に向けた細やかな安全対策情報の提供に努めている。なお、海外での病気や事故などの被害に対しては治療に高額な医療費が求められる中、海外旅行保険に加入していない海外渡航者は、適切な医療へのアクセス及び医療費などの支払に困難を来す場合も多い。そのため、海外渡航の際には健康管理と共に、海外旅行保険への加入が非常に重要となっている。

こうした自然災害その他の緊急事態は世界中の様々な地域で発生しており、日本人が海外に渡航・滞在する際には、①現地の安全情報を確認すること、②緊急時に備え、安全対策を充実させるとともに、危険を回避する行動をとること、③緊急事態が発生した場合に、留守家族や最寄りの大使館・総領事館などに連絡を取ることなどが重要である。

邦人援護件数の事件別・地域別内訳(2009年)
邦人援護件数の事件別・地域別内訳(2009年)

イ 海外における日本人の安全対策

海外に永住・長期滞在する日本人は、2009年に約113万人に達しており、また、同年の海外出国者数は、前年比で約3.4%減少しつつも、約1,545万人に達した。このような中、日本の在外公館及び交流協会が取り扱った海外邦人総援護件数は1万6,963件と前年比で約3.7%、総援護人数は1万8,843人と同じく約4.1%増加している2。このような状況の中で、海外における安全確保には、在外公館などの邦人援護体制の強化とともに、海外への渡航者一人ひとりが危機管理の意識を持って、渡航・滞在先の危険の傾向と対策を把握して行動することが重要である。

このため、外務省は、海外における日本人の安全のための情報を提供する海外安全ホームページの充実を図るとともに、利便性を向上させ、より多くの国民に海外安全ホームページの有用性を理解してもらうことに努めている。例えば、海外安全ホームページの携帯版サイトの機能を拡充し、日本から携行する携帯電話の国際ローミングによるデータ通信を利用して、海外からも手軽に外務省が発出する渡航情報を参照できるようにした。また、海外渡航中にいつでも緊急情報や最新の渡航情報及び渡航先の緊急連絡先を検索可能にするなど、海外安全ホームページの利便性を向上させている。

また、外務省の領事サービスセンターにおいては、海外での安全対策についての国民からの相談に直接応じている他、海外での活動内容に応じてきめ細かに対応できるよう、総合的な安全対策を取りまとめた「海外安全虎の巻」やテロ、脅迫事件、誘拐など各種の想定される事案ごとに対策を記したパンフレットを作成している(これらは、海外安全ホームページからもダウンロード可能)。

外務省は、安全対策のためのこうした取組及び海外安全対策の必要性について集中的に広報するために、毎年「海外安全・旅券管理促進キャンペーン」を展開している。2010年度は、12月1日から2011年3月20日までをキャンペーン期間とし、幅広い世代を対象に、シンプルかつ目を引くポスター、楽しみながら安全対策の知識が得られるキャンペーン特設ウェブサイト、旅行直前のチェックリストにもなり得る海外安全リーフレットなどを通じて、海外安全ホームページを活用した安全対策の有用性及び海外において唯一の身分証明書となる旅券の重要性について広報している。

2010年12月に内閣府が実施した「外交に関する世論調査」において、海外旅行経験を有する回答者のうち、約93%が少なくとも危険があることを認識しており、また、約80%が危険が存在する意識をもって何らかの対策を講ずる必要性があると感じている。一方、危険が存在するとの意識は持ちつつも、具体的な安全対策についてはよく分からないと回答した割合はその6割を占めている。また、海外での事件件数を減らすための方策については、本人や家族などの個人的な取組が重要と考える割合は2009年の調査より約26%減少し、逆に組織的な取組が重要と考える割合は約74%増加している。

外務省は、組織的な取組に対する国民の要請にこたえ、的確な支援を行うため、在外公館の支援体制の整備・強化を図っている。具体的には、在外公館の閉館時にも24時間緊急連絡が可能となる態勢の構築を始め、外部専門家を含む人員・資機材などを海外の大規模災害に機動的に派遣できるようにするための態勢整備、全米・カナダ地域における邦人安否確認システム3の効果的運用、緊急情報通報システムの構築などを進めている。

また、民間との連携・協力の下にセーフティ・ネットワークの構築を進めることで、より効果的かつ機動的に日本人への支援を行うために、外務省は、官民の連絡協議会などを定期的に開催している。在外公館では、現地日本人組織や民間代表者との間で安全対策連絡協議会を定期的に開催し、安全対策に関する意見交換や情報共有を通じた連携を強化している他、海外に滞在している日本人を対象に、安全対策に資するテーマで講演会などを行っている。さらに、近年、日本人が被害者となるテロ、誘拐事件が複数発生していることを踏まえ、2月に東京で「第3回NGO海外安全セミナー」を開催した他、3月には欧州及び南アフリカ、10月から11月にかけては、タイ、イラン及びサウジアラビアで「在外危機管理セミナー」を、また、3月に大阪、7月に高松、2011年1月に福岡で「海外進出のための危機管理セミナー」をそれぞれ開催した。

携帯版外務省渡航情報(http://www.anzen.mofa.go.jp/i/
携帯版外務省渡航情報
海外安全ホームページ(http://www.anzen.mofa.go.jp/
海外安全ホームページ
「渡航情報」の体系及び概要
「渡航情報」の体系及び概要
2010年度海外安全・パスポート管理促進キャンペーン
2010年度海外安全・パスポート管理促進キャンペーン

(2)領事サービスと日本人の生活・活動支援

ア 領事サービスの向上

外務省は、海外在住の日本人の声を領事サービスの向上・改善に反映させるため、在外公館の領事サービス利用者に対するアンケート調査を毎年実施している。2010年には、145在外公館を対象に調査を行い、約1万6,100人の回答を得た。その結果、領事窓口や電話での対応については、75%以上から肯定的な回答を得られた一方で、比較的少数ながら否定的な回答もあり、在外公館ホームページが充実しているとの評価も56%にとどまるなど、改善すべき点があることも明らかになった。外務省としては、引き続きアンケート調査を実施し、領事サービスの向上・改善に努める考えである。

また、海外に滞在する日本人にきめ細かく丁寧なサービスを提供するため、領事業務量の多い一部の在外公館を対象に、民間企業などで海外勤務経験のあるシニア世代の人材を、「領事シニアボランティア(領事相談員)」として、15の在外公館に派遣しており、この制度は利用者から好評を得ている。

領事サービス利用者へのアンケート調査結果(2010年)
領事サービス利用者へのアンケート調査結果(2010年)

イ 旅券(パスポート)に関する施策(IC旅券の発行と今後の課題)

2010年は、新型インフルエンザやテロといった海外旅行を控えるような大きな事案がなかったことや、2010年中に期間が満了する旅券(有効期限が10年のもの)の数が2008年に次いで多かったことなどから、2010年の旅券発行数が微増し、日本国内では1年間に約420万冊の旅券が発行された。

日本では、2006年3月から、旅券の偽変造や第三者による不正使用を防止するため、生体情報である顔画像を電磁的に記録したICチップを搭載した旅券(IC旅券)を発行している。IC旅券は、2010年12月までに累計約2,000 万冊が発行され、有効な日本旅券の約67%を占めている。

IC旅券の発行により、発行済み旅券の写真の差し替えなどの偽変造による旅券の不正使用は困難となったが、その一方で、他人になりすまして旅券を不正に申請・取得する事案が多発している(2006年67冊、2007年112冊、2008年112冊、2009年87冊、2010年86冊)。日本人・外国人犯罪者がそのような手段で不正取得した別人名義の旅券を使って国内外を行き来し、あるいは国外逃亡する例が見られる他、名義人の知らないところでの消費者金融からの借金、犯罪収益の受皿として使用する銀行口座の開設、あるいは携帯電話の契約が行われた事例などが報告されている。こうした犯罪を未然に防ぐためには、旅券の申請・交付時に本人確認を更に徹底する必要がある。そのため、2月に各都道府県にある申請窓口において、なりすましによる不正取得防止のための審査強化期間を実施するなど、旅券の発給審査の強化に力を入れている。

一方、諸外国では、出入国審査の迅速化や旅券の信頼性向上を目的とした国際民間航空機関(ICAO)の勧告に従い、世界中のほとんどの国で発給される旅券が機械読取式(MRP)となっており、セキュリティ性を向上させたIC搭載型旅券の普及も進んでいる。ICAO及び国際標準化機構(ISO)では、ICチップ機能のより効果的な利用が検討されている。これを受け、日本は10月に外務本省においてICAO機械読取専門家会合・新技術作業部会会合及びICAO公開鍵ディレクトリ理事会会合の開催場所を提供し、国際的な渡航の安全性や渡航者の利便性の向上及び日本国旅券の国際的信頼性維持のため、国際標準策定活動に積極的に参画し、自国の旅券に反映可能な技術の採用に努めている。

日本国内における旅券発行数の推移
日本国内における旅券発行数の推移

ウ 在外選挙

在外選挙制度は1998年に創設され、当初は対象が衆議院と参議院それぞれの比例代表選挙に限定されていたが、2006年の公職選挙法の一部改正により、2007年6月以降の選挙から、衆議院小選挙区選挙及び参議院選挙区選挙(これらの補欠選挙及び再選挙を含む)も対象となった。2010年7月には、参議院議員通常選挙の在外投票が実施され、また、10月には、衆議院議員補欠選挙(北海道5区)が実施された。

在外選挙で投票するためには、事前に在外選挙人名簿への登録を申請して在外選挙人証を入手する必要があり、在外公館投票、郵便など投票又は日本国内における投票のいずれかを自ら選択することができる。在外公館では、管轄地域在住の日本人を対象とした在外選挙制度の広報や公館所在地以外の地域への登録受付出張サービスを行うなど、制度の普及と登録者数の増加に努めている。また、2010年5月には憲法改正に係る国民投票についても在外選挙同様に投票できるようにするための憲法改正国民投票法が施行された。

在外選挙

エ 海外での日本人の生活・活動に対する支援

(ア)日本人学校

海外で生活する日本人にとって、子供の教育は大きな関心事の一つである。外務省では、海外でも義務教育相当年齢の子供が、日本と同程度の教育を受けられるよう、文部科学省と連携して日本人学校への支援(校舎借料、現地採用教員謝金、安全対策費などの一部援助など)を行っている。また、主に日本人学校が存在しない地域に設置されている補習授業校(国語などの学力維持のために設置されている教育施設)に対しても、支援(校舎借料、現地採用講師謝金の一部援助など)を行っている。近年、海外在住の日本人の子供の数は増加傾向にあり、今後もこうした支援を継続・強化していく方針である。

(イ)医療・保健対策

外務省は、医療事情の悪い国に滞在する日本人に対する健康相談を実施するため、国内医療機関の協力を得て巡回医師団を派遣しており、2010年には27か国40都市に派遣した。また、海外で流行している感染症などの情報を収集し、海外安全ホームページや在外公館ホームページなどを通じ、広く提供している。

(ウ)その他のニーズへの対応

原子爆弾被害者に対する援護に関する法律施行令及び厚生労働省令の一部が改正され、2010年4月に施行された。これを受け、日本国外に居住する被爆者も、在外公館を経由して原爆症認定及び健康診断受診者証の交付を申請できるようになった。

また、海外在住日本人の滞在国での各種手続(滞在・労働許可、運転免許証の切替えなど)の煩雑さを解消し、より円滑に生活できるようにするための滞在国の当局に対する働きかけを継続している。具体的には、欧州連合(EU)諸国に対しては、滞在・労働許可や運転免許切替えに関する手続の迅速化・簡素化などを、また、米国に対しては、米国査証の米国内における更新手続の再開や各州運転免許制度の改善を働きかけている。

外務省作成パンフレット「海外で困ったら」
外務省作成パンフレット「海外で困ったら」

(3)海外移住者や日系人との協力

日本人の海外移住の歴史は142年を数え、北米・中南米を中心として、全世界に約285万人(推定)以上とも言われる海外移住者及び日系人が居住している。移住者及び日系人は、政治、経済、教育、文化を始めとする各分野において各国の発展に寄与するとともに、日本と各居住国との「架け橋」として各国との関係緊密化に大きく貢献している。外務省としては、今後も両者に対する支援を行うとともに、若い世代の日系人とも協力を図り、それらの人々と日本の間の絆(きずな)を強めていく方針である。10月、24か国から約170人の移住者及び日系人の代表者が集まり、(財)海外日系人協会の主催による第51回海外日系人大会が盛大に開催され、歓迎交流会には、常陸宮同妃両殿下が御臨席になった。

約170万人の移住者及び日系人が居住している中南米諸国では、外務省は、国際協力機構(JICA)と共に、移住者の高齢化に対応する福祉支援、日系人を対象とした日本国内への研修員受入れ、現地日系人社会へのボランティア派遣などを通じた協力を行っている。また、北米においては、米国及びカナダから日系人リーダーを日本に招へいするプログラムの実施や、日系人リーダーとの間で定期的に会合を開催することを通じて、北米に居住する日系人との関係強化を図っている。

移住者・日系人代表者と親睦を深められる常陸宮(ひたちのみや)同妃両殿下(10月20日、東京・憲政記念館 写真提供:海外日本人協会)
移住者・日系人代表者と親睦を深められる常陸宮(ひたちのみや)同妃両殿下(10月20日、東京・憲政記念館 写真提供:海外日本人協会)

1 この件数は、人的被害、金品の被害及び船体の被害などの実害が発生した事案の他に、単に船舶に乗り込まれた事案も含めたもの。船舶に対して直接的な接触がなかった未遂事案は、この件数に含まれていない。なお、この件数は、2010年12月15日までに外航海運事業者などが任意に提出した事案のみを計上したもの。

2 2009年海外邦人援護統計(http://www.anzen.mofa.go.jp/anzen_info/spt2009.html)による。海外邦人援護統計は、日本の在外公館及び交流協会が、海外において事件・事故、犯罪加害、犯罪被害あるいは災害など何らかのトラブルに遭遇した日本人に対し行った援護の件数及び人数を年ごとに取りまとめたもので、1986年に集計を開始した。

3 具体的には、海外版災害伝言サービスを、2006年9月に米国(ハワイ、グアム、サイパン、プエルトリコ、米国領バージン諸島を含む)及びカナダを対象に運用を開始。米国・カナダ地域における大規模災害発生時に、専用電話番号へ音声メッセージを登録することによって、日本人被災者とその家族などとの間で安否確認ができるシステム。年末年始に合わせ、2010年12月15日から約1か月間、期間限定のテスト運用を行い、利用の拡大にも努めている。

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