国際社会の中で日本が国益を確保し、様々な課題に的確に対応するためには、政府として外交活動に必要な体制を整備・強化するとともに、国際社会で活躍する様々な組織と十分連携し、オールジャパンで機動的な外交を進めることが重要である。
これを実現するためには、外交活動に必要な予算・人員を十分に確保するとともに、限られた人的・物的資源を効果的かつ効率的に活用する必要がある。また、近年、中国に加えて、インド、ブラジル、南アフリカなどの新興国が国際社会での影響力を増加させる、戦略環境が変化していることに適切に対応し、日本にとって望ましい国際秩序を維持・構築するためには、日本の外交実施体制を不断に見直していく必要がある。
こうした観点から、事業仕分け、行政事業レビューの結果なども踏まえ、外務省は一層の合理化と効率化に取り組みつつ、外交実施体制を最適なものとするため、6月以降、「在外公館タスクフォース」を開催し、在外公館の在り方を検討してきた。その結果、引き続き既設公館の見直しや経費縮減策を講じる一方で、他の主要国並みの体制構築を目標とし、在外公館の新設に取り組むとともに、より効果的かつ効率的な人員配置のため、体制強化が必要な新興国、資源国、新設公館所在国などへの在外公館職員の再配置を行うこととした。
オールジャパンでの外交を展開する一環として、例えば、国際協力に対する市民の関心の高まりを背景に、開発途上国などに対する支援活動の担い手としての重要性が近年ますます高まっているNGOを国際協力における重要なパートナーと位置付け、連携強化に努めている。日本のNGOは、アジアを中心にアフリカ、中東など世界各地において、貧困削減や人道支援のために地域住民に密着したきめの細かい支援活動を実施している。また、現地での支援活動のみならず、開発途上国の現状などに関する専門的知見を持ち、人権、教育、保健、環境といった様々な分野でNGO間のネットワークを形成し政策提言活動を行うなど、その活動範囲は幅広い。
また、国際協力機構(JICA)ボランティア事業参加者である青年海外協力隊(JOCV)・シニア海外ボランティア(SV)参加者も現地の人々と同じ目線で、その国が抱える問題の解決に一緒に汗を流して取り組んでおり、国際協力の重要な担い手である。日本の「顔の見える援助」の代表として各国から高い評価を得ており、その国の経済・社会の発展のみならず、日本と各開発途上国の間の相互理解や友好親善の促進にも大きな役割を果たしている。また、帰国したボランティア参加者の知識や経験の日本社会への還元でも成果が上がっている。さらに、より良いJICAボランティア事業の実現に向け、制度的見直しにも取り組んでいる。