日本と欧州は、地理的にはユーラシア大陸の両端に位置しているが、民主主義、人権、法の支配などの基本的価値を共有し、国際社会の安定と繁栄に向けて共に主導的な役割を果たすパートナーである。また、欧州は、世界の国内総生産(GDP)の約30%を占めている。このような欧州との関係強化は、経済・金融の諸問題のみならず、気候変動、テロ、大量破壊兵器の拡散などの地球規模課題に効果的に対応していく上で極めて重要である。特に、G8メンバーであり、国連安保理常任理事国でもある英国及びフランスに加えG8メンバーであるドイツ及びイタリアは国際政治・経済上大きな影響力を有しており、これらの諸国との緊密な連携は、日本の外交政策を推進する上で不可欠と言える。伝統的に良好な北欧・南欧諸国との関係、さらに、近年の欧州連合(EU)やユーロへの加盟によって安定的な経済成長を目指す東欧バルト諸国との関係を含め、日本は欧州諸国と多面的な友好協力関係を築いてきた。
現在27加盟国となったEUは、2009年12月に基本条約の改正条約であるリスボン条約が発効したことにより、政治統合を一段と深め、域内・域外の新たな課題に迅速に対応する体制を整えた。さらに、2010年12月にはEUの対外関係を一元的に担当する欧州対外活動庁が始動し、国際社会における発言力の更なる増大が見込まれている。このように国際社会での存在感を高めるEUとの連携は今後更に重要となってきたことから、日本はEUと様々なレベルで政治対話を進めている。また、日本経済の成長の観点からも、米国を上回る規模の単一市場を持つEUは重要なパートナーであり、日・EU経済連携協定(EPA)締結交渉開始に向けた調整を含め、一層の経済連携を進めていく方針である。
欧州・北米の28か国が加盟する北大西洋条約機構(NATO)は、冷戦終結以来、その役割を模索してきたが、域外における展開、とりわけアフガニスタンにおける国際治安支援部隊(ISAF)や地方復興チーム(PRT)などの活動を通じて、テロとの闘い、治安支援に加え復興・開発分野にも活動領域を広げてきた。こうした流れの中で、21世紀の安全保障環境における新たな課題に効果的に対処するために、2010年11月に11年ぶりとなる新戦略概念を採択し、その役割を再定義した。日本とNATOは基本的価値を共有するパートナーとして、国際社会の平和と安定のために協力を進めており、特に、PRTが実施する人道活動における連携など、アフガニスタン復興支援における具体的協力を進展させている。