軍縮・不拡散

国際原子力機関(IAEA)第55回総会の結果概要

平成23年9月23日

 9月19日から23日までウィーンにおいて開催された国際原子力機関(IAEA)第55回総会の概要は,以下のとおり。

1.細野内閣府特命担当大臣の出席

  1. (1)我が国政府代表として,細野内閣府特命担当大臣が出席。細野大臣は,総会初日に一般演説(演説順序は2番目)を行ったほか,天野IAEA事務局長,チュー米国エネルギー省長官,ヤツコ米国原子力規制委員会委員長,ベッソン・フランス産業・エネルギー・デジタル経済大臣,キリエンコ・ロシアロスアトム社社長との会談,我が国がIAEA総会の機会に主催した「東京電力福島原発事故に関する報告会」における冒頭挨拶を行った。
  2. (2)細野大臣の一般演説(和文英文)のポイントは以下のとおり。
    • 東京電力福島第一原発事故後にIAEA及び加盟国から受けた支援に謝意。原子力安全行動計画の実施に全力を注ぐ。
    • 事故に関する情報と教訓を迅速かつ正確に国際社会に提供していくことが重要との考えの下,IAEAに追加報告書を提出。
    • 冷温停止状態を,予定を早めて年内を目途に達成すべく,全力を挙げる。来年4月を目途に「原子力安全庁」を発足させ,規制体制の一元化,安全文化の徹底,危機管理の整備を進めるとともに,原子力安全規制自体を根本的に強化するべく更なる規制を進める。
    • 本年10月中にIAEA除染チームを受入れる予定。2012年にIAEAと共催でハイレベル会合を開催。
    • 北朝鮮,イラン等の地域の核問題,核軍縮,原子力の平和利用についても我が国の立場を説明。
    • 国際原子力機関(IAEA)第55回総会への細野内閣府特命担当大臣の出席(概要)及び演説(和文英文

2.事務局長演説

 総会初日冒頭の演説において,天野IAEA事務局長が演説。原子力エネルギーについては,福島第一原発事故後も,そのペースは当初の見通しより遅くなるものの,原子力発電の使用の増加は今後20年で継続することが見込まれ,2030年までに,稼働している原子炉は,現在の計432機から,低く見積もって約90機,高く見積もれば約350機増加すると考えられる,原子力発電を未導入の国においても,引き続き関心は高く,その多くの原子力発電導入計画をIAEAは支援している旨言及。

3.主要な議題 

(1)原子力安全

 原子力安全に関する行動計画(PDF)PDFをエンドースし,これらの行動を最も重要な優先事項として履行するよう要請する原子力安全決議をコンセンサスで採択。同決議は,また,2012年に我が国とIAEAが共催する原子力安全に関する国際会議に対する期待を表明。東日本大震災の被害に関し,日本への同情と連帯を表明し,日本を支援する決意を強調しているほか,福島における事故の包括的かつ完全に透明性のある評価の重要性を改めて表明。

(2)核セキュリティ

 核物質及び原子力施設の高いレベルのセキュリティ並びに防護の維持,不法移転に対する措置の重要性等を謳い,すべての国に核物質の不法取引の防止・探知・抑止のための能力向上を奨励する決議が,コンセンサスで採択された。同決議はまた,核セキュリティ強化のための国際的な取組への支援提供を検討することを求め,核物質防護条約の普遍化に向けた取組を要請。

(3)北朝鮮

 「IAEAと北朝鮮との間のNPT保障措置協定の実施」に関するIAEA総会決議が,(昨年は投票となりアラブ諸国の多くが棄権したが,)コンセンサスで採択された。同決議では,北朝鮮のウラン濃縮計画及び軽水炉建設に懸念を表明し,北朝鮮に,すべての核兵器及び既存の核計画の放棄並びにすべての関連する活動の即時停止を含め,関連の安保理決議下の義務の完全な遵守及び六者会合共同声明のコミットメントの実施を強く要請。

(4)中東におけるIAEA保障措置の適用

 すべての域内国にIAEA保障措置に関連する国際的な義務の遵守を求め,すべての関係国に域内の非核地帯設立に向けた取組を求める決議が,賛成多数で採択された(決議全体は賛成113(我が国他),反対0,棄権8。すべての域内国に対してNPTへの加入を求めるパラ2は分割投票にかけられ,賛成111,反対1(イスラエル),棄権10。)。

(5)イスラエルの核能力

 イスラエルの核能力に関し,例年,アラブ諸国が,イスラエルに対しNPTへの加入を求めるとともに,全ての核施設をIAEA保障措置の下に置くことを呼びかける内容の決議案を提出。一昨年は僅差で可決,昨年は僅差で否決されるなど,加盟国を二分する決議であったが,本年は,アラブ諸国は,本件決議案の提出を見合わせた。但し,議題は維持し,その下で各国が発言。

(6)保障措置の強化・効率化

 包括的保障措置協定及び追加議定書の可及的速やかな締結等の奨励,それらの未締結国に対するIAEAの支援への協力などを盛り込んだ本年の保障措置決議案は,コンセンサスによる採択を目指して審議が行われたが,核軍縮におけるIAEAの役割等,新たな要素を含む一部諸国の提案に関し,加盟国間の意見の一致を得られず,採択には至らなかった。総会は,事務局長に対し明年の総会に2010年の保障措置決議の実施に関する報告を行うよう要請することを決定。

(7)技術協力

 IAEA技術協力活動を強化する必要性を強調し,すべての加盟国に対して技術協力基金に完全かつ遅滞なく拠出するよう求めるとともに,後発開発途上国に対する協力の重要性等を謳う内容の決議が,コンセンサスで採択された。

(なお,ドミニカ,ラオス,トンガの新規加盟が承認された。今後,同国が批准書又は受諾書を米国(寄託国政府)に寄託し,受領された時に加盟国となる。)

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