日本の安全保障と国際社会の平和と安定

平成26年8月12日

1.通常兵器とは

 核兵器、生物・化学兵器といった大量破壊兵器を除く兵器全般を指します。

2.我が国の取り組み

 通常兵器の非合法な取引の取り締まり、過度に傷害を与える又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器(地雷、クラスター弾等)の生産や使用を禁止するための国際社会におけるルール作り、軍備の透明性の向上や信頼醸成などに積極的に参画しています。

(1)武器貿易条約(ATT:Arms Trade Treaty

 武器貿易条約は,通常兵器の国際的な輸出、輸入等の移譲を管理するための共通基準を定める条約で,2013年4月に国連総会において採択されました。我が国は、2014年5月9日に国連事務総長に受諾書を寄託し、アジア太平洋において最初の締約国となりました。我が国は,従来から,実効的で幅広い国の参加が得られる武器貿易条約の作成の必要性を主張し,武器貿易条約の交渉においても,原共同提案国及び副議長として積極的かつ建設的な役割を果たしてきました。今後も,引き続き,条約の早期発効及び効果的な実施のため、主導的な役割を果たしていく考えです。

(具体的取り組み)

  • 2006年に,日本,アルゼンチン,英国,ケニア,オーストラリア,コスタリカ,フィンランドが共同で提出した国連総会決議に基づいて,国連でATTを作成されるためのプロセスが開始された。
  • 2008年政府専門家会合及び2009年作業部会において,我が国は副議長を務めた。
  • 2012年7月の国連会議と2013年3月の最終国連会議が行われた際に,原共同提案国及び,副議長として積極的に交渉に参加し,条約の作成に主導的な役割を果たした。
  • ATTが早期に発効することを目指し,各国の署名・締結を促進させる政治的な機運を高めるため,2013年9月に,国連本部において,日本を含む原共同提案国でATTハイレベル会合を開催し,我が国からは岸田大臣が出席し,主要武器貿易国を含めた関係国に早期の署名及び締結を促すステートメントを行った。

(2)小型武器問題

 事実上の大量破壊兵器と言われており、紛争を長期化,激化するだけではなく,紛争終了後,人道援助や復興開発活動を阻害し,紛争の再発等を助長する要因になるため,我が国は小型武器の不正な取引の防止・撲滅を目指しています。

(具体的取り組み)

  • 国連小型武器行動計画(2001年)等の実施強化に貢献。
  • 国連総会において,毎年,小型武器決議を提案(南アフリカ,コロンビアとの共同提案)。
  • 被害国における現場プロジェクトの推進
    小型武器の回収や廃棄、備蓄管理、治安向上、開発事業等のプロジェクトを、アジア・アフリカの被害国で支援。我が国は2001年に小型武器問題に対処するための基金を国連内に設置しました。

(3)クラスター弾

 クラスター弾とは、一つの弾薬がいくつかの子弾を内蔵しており、子弾が空中で広範囲に散布される仕組みの爆弾です。不発弾化した子弾の中には、紛争終結後も不慮の爆発によって人を死傷させたり、避難民の帰還を遅らせ、土地の再利用を困難にし、復興・開発の妨げとなることが問題となっています。

(具体的取り組み)

  • クラスター弾に関する条約(CCM)
    2008年5月に採択され、12月3日に署名式が行われた。我が国は、署名式に於いて署名した後、2009年7月14日に締結。それ以降、アジア・大洋州地域の未締結国に加入を働きかけ。
  • 特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)
    米国、ロシア、中国等のCCMに参加しなかった主要国も参加の下、2008年から議定書交渉が行われましたが、2011年運用検討会議では合意に至りませんでした。

(4)対人地雷

 普遍的かつ実効的な対人地雷の禁止の実現と地雷対策を促進することが課題です。

(具体的取り組み)

  • 我が国が1998年に締結し,1999年3月に発効した対人地雷禁止条約(オタワ条約)の普遍化を推進。
    アジア・大洋州地域の未締結国に加入を働きかけ。
    2014年6月、モザンビークで開催された第3回検討会議において我が国の貢献をアピール。
  • 地雷対策(被害者支援、地雷除去等)の推進
    1998年以降の支援実績は約50か国に対し約582億円。

(5)特定通常兵器使用禁止制限条約

 過度に障害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用を規制する条約。手続等基本的事項について規定した枠組条約と個別の通常兵器について規定する5つの議定書から構成されている。

  • (1)検出不可能な破片を利用する兵器に関する議定書(議定書I)
  • (2)地雷,ブービートラップ等の使用の禁止又は制限に関する議定書(議定書II)
  • (3)焼夷兵器の使用の禁止または制限に関する議定書(議定書III)
  • (4)失明をもたらすレーザー兵器に関する議定書(議定書IV)
  • (5)爆発性戦争残存物(ERW)に関する議定書(議定書V)

 (注)自律型致死兵器システム(LAWS):近年のロボットの軍事利用の増加を背景にしたNGO及び市民社会の懸念に対応するため,2013年11月の締約国会合にて,2014年5月にLAWS非公式専門家会合の開催が決定された。上記非公式専門家会合においては,技術,倫理,人道法,軍事の観点から初期的な議論が行われ,2014年11月の締約国会合に提出される議長サマリーが採択された。我が国からは,一般討論の他,全てのセッションにおいて積極的に発言を行い,更に,和久田経済産業省航空機武器宇宙産業課企画官及び佐藤丙午拓殖大学国際学部教授が技術及び軍事のセッションにおいてプレゼンテーションを行う等の貢献を行った。

(6)軍備の透明性の向上・信頼醸成

(具体的取り組み)

  • 国連軍備登録制度
    軍備の透明性を高めるため、主要武器の輸出入に関する記録を国連に登録する信頼醸成措置。1991年に設立。我が国は、制度の運用や見直しなどを議論する政府専門家会合に積極的に参加。
  • 国連軍事支出報告制度
    軍事支出の報告による信頼醸成措置であり、1890年に設立。我が国は、制度の運用や見直しを議論する政府専門家会合に積極的に参加。
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