宇宙
「宇宙活動に関する国際行動規範」多国間交渉会合
平成27年9月8日
- 1 7月27~31日,ニューヨークの国連本部内において,EUの欧州対外活動庁(EEAS)主催により「宇宙活動に関する国際行動規範」多国間交渉会合が開催され,我が国を含む109か国,2国際機関,6NGOが参加しました(議長は,マルキージョ(Sergio Marchisio)ラサピエンツァ大学教授(イタリア)。我が国からは,山上信吾政策企画・国際安全保障担当大使(総合外交政策局審議官)他が出席。)。
- 2 今次会合では,2012年以来4回にわたって開催されてきた多国間協議を踏まえ,行動規範の内容や今後の協議の取り進め方について議論されました。(議長サマリー(英文(PDF)
/仮訳(PDF)
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- (1)行動規範の内容に関する議論
- 主に,次の諸点について議論され,参加者間で一定の理解が深まりました。
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- (ア)行動規範の目的・対象とする宇宙活動の範囲(スコープ)・一般原則については,主に,対象を民生利用の活動のみとするのか,民生・軍事双方を含めた活動を対象とするのか,また,宇宙において自衛権がどのように適用されるのか等について議論されました。
- (イ)また,関係国間の信頼と相互理解を増進し,宇宙活動の透明性を強化するための協力の仕組みについても議論されました。
- (2)今後の取り進め方に関する議論
- 多くの参加者から,規範の交渉は開放的,包摂的(inclusive),透明かつ非差別的な方法で行われるべきとの意見が表明されました。今後の交渉を行う具体的な場として,ジュネーブ軍縮会議(CD),国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS),国連総会第一委員会,同第四委員会,国連総会といった様々なフォーラムが提案された他,従来進められてきたアドホックな外交プロセスを支持する意見も表明されました。今後,どの枠組みで交渉を進めていくか,関係国間で調整が行われます。
- (3)我が国の立場
- 我が国は,宇宙空間の持続的かつ安全な利用を確保するための本件行動規範を早期に策定すべく,積極的・建設的に議論に参加しました。引き続き,関係各国と緊密に協力し,行動規範の早期策定を目指します。
- 【参考】宇宙活動に関する国際行動規範
- (1)宇宙活動に関する法的拘束力を有する国際的なルールは,1960年代から70年代にかけて策定された宇宙条約等以来新たに策定されていません。
- (2)他方,宇宙空間においては近年,各国の宇宙活動の活発化に伴うスペース・デブリ(宇宙ごみ)の増加や2007年の中国による衛星破壊(ASAT)実験のような,国際社会として共同して対処すべき新たな課題が生じています。
- (3)宇宙活動国の増加等により,法的拘束力を有する新たな条約の策定が困難な中,2008年,EUは,スペース・デブリの発生を防止し,安全な宇宙環境を実現することを目的として,法的拘束力を有しない(いわゆる「ソフトロー」)行動規範案を提唱しました。日本は,2012年1月に,EUが主導してきたイニシアティブを歓迎し,本行動規範策定に関する議論に本格的に参加していくことを表明しています。
- (4)本行動規範は,宇宙物体同士の事故等の干渉可能性を最小化すること,宇宙物体の破壊を差し控えること,宇宙物体への危険な接近をもたらす可能性のある運用予定・軌道変更・再突入等のリスクを通報すること,他国による違反の可能性がある場合に協議を要請すること等に言及しています。
- (5)本行動規範については,これまでキエフ(2013年5月),バンコク(2013年11月)及びルクセンブルク(2014年5月)において,すべての国に開かれたオープンエンド協議が開催され,第3回協議では,多くの国から,「協議」の段階から「交渉」の段階に迅速に移行すべきとの意向が表明されていました。