G7/G8
G7外務・開発大臣会合



5月3日から5日にかけて、ロンドンにおいてG7外務・開発大臣会合が開催されたところ、概要以下のとおり。会合には、茂木外務大臣を含むG7各国外相及びEU外務・安全保障上級代表が出席し、一部セッションにはアウトリーチ国として豪州、インド、韓国、南アフリカ及びブルネイ(ASEAN議長国)の外相が参加した。また、開発関連セッションには、G7の一部の国の開発担当大臣もオンライン参加した。
会合終了後、以下の文書が発出された。
1 地域情勢
(1)北朝鮮
茂木大臣から、北朝鮮は、制裁に加え、新型コロナにより厳しい経済状況に直面しているとの指摘があるが、そのような中でも、核・ミサイル開発を進めており、3月の弾道ミサイル発射からも明らかなとおり、核・ミサイル能力を向上させている旨指摘し、G7での緊密な連携を呼びかけた。また、茂木大臣から、拉致問題の即時解決に向けたG7の引き続きの全面的な理解と協力を要請し、G7各国から賛同を得た。
ブリンケン米国務長官から米国の対北朝鮮政策レビューについて説明があり、G7として、全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルのCVIDという目標を堅持すること、安保理決議の完全な履行が不可欠であることで一致した。
(2)中国
自由で公正な経済システムを損なう慣行について一致して懸念を表明。恣意的で強制的な経済政策及び慣行に直面する中で、世界経済の強じん性を促進するためにG7で協力することを確認した。
新疆の人権状況への深い懸念、香港情勢への重大な懸念を共有。中国に人権及び基本的自由の尊重を求めることで一致した。
台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促すことで一致した。また、WHO総会を始めとする国際機関への台湾の意義ある参加を支持することで一致した。
茂木大臣から、中国海警法を含め、東シナ海・南シナ海における中国による一方的な現状変更の試みの継続・強化について深刻に懸念している旨発言した。また、新疆や香港情勢について、G7を中心に国際社会が一致したメッセージを出すことが重要であることを指摘し、王毅国務委員との電話会談を含め、中国に対して深刻な懸念を直接伝達していることを紹介した。
(3)ミャンマー
G7として、改めて軍事クーデターを強く非難し、国軍に対して緊急事態を解除し、民主的に選出された政府の権力を回復し、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問やウィン・ミン大統領を始めとする恣意的に拘束された人々を解放するよう求めるとともに、国軍や警察による暴力を非難した。
また、包摂的な民主主義の実現に向け取り組む人々との結束を強調し、4月24日のASEANリーダーズ・ミーティングを含め、事態の解決に向けたASEANの取組を歓迎した。
茂木大臣から、リーダーズ・ミーティングの前後にASEAN諸国の外相と電話会談を行い、連携を確認したことを紹介しつつ、G7としてASEANによる取組を支持し、緊密に連携して取り組むべきである旨強調し、G7としてこの点で一致した。
(4)ロシア、ウクライナ
G7として、ウクライナ国境沿いやクリミアにおける軍備増強を含め、ロシアによる、無責任かつ情勢を不安定化させる行動の負のパターンが継続していることについて深い懸念を共有した。また、G7として、ロシアとの関係が、安定的で予見可能なものとなることに関心を有するとした。
G7として、国際的に認められた国境内におけるウクライナの主権、独立及び領土の一体性への支持を改めて確認。また、政治的解決に向けた外交的道筋であるミンスク合意の完全な履行のための取組に対する支持を強調することで一致した。
茂木大臣から、地域の戦略環境が大きく変化する中で、国際場裡におけるロシアの様々な行動を踏まえつつ、G7として連携して対応することの重要性について指摘した。
(5)インド太平洋
G7に加え、豪州、インド、韓国、南アフリカ及び本年のASEAN議長国であるブルネイの外相が参加した夕食会で、インド太平洋について議論した。
夕食会では、世界経済の回復においてインド太平洋地域が果たす役割や、同地域が直面する安全保障面の課題等について幅広く議論した。各国から、自由貿易の推進、科学技術やデジタル技術が果たし得る役割、インフラ整備や連結性の取組等に関する見解の共有や施策の紹介があったほか、地域の諸課題、海洋安全保障等についても取り上げられた。
茂木大臣から、G7各国がインド太平洋地域の平和と安定の要であるASEANへの関与を強化していくことは重要である、ASEANの中心性と一体性、そして「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」への支持をG7として明確に打ち出したい旨発言した。
2 開かれた社会
「開かれた社会」というテーマの下、(1)メディアの自由、(2)サイバー・ガバナンス、(3)信教及び信条の自由、(4)「即応メカニズム(RRM)」、(5)恣意的拘束といった議題が取り上げられた。
G7として、(1)メディアの自由を擁護することにコミットし、またジャーナリストに対する脅迫、ハラスメント、暴力を非難すること、(2)既存の国際法がサイバー空間にどのように適用されるかについての共通理解の増進のために協力すること、(3)信教及び信条の自由を促進することにコミットし、全ての国に対して、全ての個人を、信教や信条に関係なく法の下で平等に扱うよう強く促すこと、(4)外国からの悪意ある活動から民主主義を守るためのG7共通の取組である「即応メカニズム」の意義を再確認するとともに、引き続き様々な形で「即応メカニズム」の取組を進めていくこと、(5)恣意的拘束は国際人権法に反することを確認し、恣意的拘束を行う主体に対抗するために協力すること、で一致した。
3 持続可能な回復
(1)ワクチン・保健
新型コロナによる危機を乗り越えるためには、G7として、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の考えの下、途上国も含めた世界全体において、ワクチン・治療・診断への公平なアクセスを実現することが不可欠であることで一致した。
茂木大臣からは、6月に日本がGaviと共催するCOVAXワクチン・サミットへの参加及び追加プレッジを各国に呼びかけるとともに、日本として、世界の一人ひとりにワクチンを届ける「ラスト・ワン・マイル支援」のために約8,000万ドル(約87億円)の支援を決定したことを紹介した。また、新型コロナの影響を受けた途上国の経済を下支えし、医療保健分野を含む財政ニーズに対処するため、これまでに約30億ドル(3,275億円)の緊急支援円借款を供与しているが、さらに、同円借款の枠を約64億ドル(7,000億円)にまで拡充することを表明した。
茂木大臣から、クルーズ船を含む国際交通における感染症対策における関係国・国際機関の役割を明確化するため、G7として国際機関でのガイドライン作りを働きかけていくことを呼びかけ、各国の賛同を得た。
(2)女子教育・ジェンダー、気候変動、飢饉防止及び人道危機
新型コロナにより特に影響を受けた女子教育を支えるため、数値目標を含む「女子教育に関する宣言」を発出した。また、気候変動に関し、G7として、先進国による年間1,000億ドル気候資金動員目標の2025年までの継続、また、緩和と適応の均衡達成を目指すことを再確認した。さらに、コロナ禍の影響で一層深刻化している飢饉などの人道危機への対応について、G7としてのコミットメントを示す「飢饉防止及び人道危機に関するG7コンパクト」を承認した。